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矢絣
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やがすり
ふりがな文庫
“
矢絣
(
やがすり
)” の例文
横手からそう遠くない
千屋
(
せんや
)
村あたりの
蓑
(
みの
)
や
深沓
(
ふかぐつ
)
で大変細工のよいのを見かけます。蓑はここでも襟飾りに
矢絣
(
やがすり
)
などを入れて
凝
(
こ
)
ります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
高島田が初々しく、紫
矢絣
(
やがすり
)
、立やの字の帯、
白粉
(
おしろい
)
が濃くて、小さい唇が玉虫色に光るのも、楷書で書いてルビを振った美しさです。
奇談クラブ〔戦後版〕:02 左京の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
銘仙
矢絣
(
やがすり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
に、白茶の
繻珍
(
しゆちん
)
の帯も
配色
(
うつり
)
がよく、
生際
(
はえぎは
)
の美しい髪を油気なしのエス巻に結つて、幅広の
鼠
(
ねず
)
のリボンを生温かい風が煽る。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「エエ、一度訪ねました。併し、新しい発見は何もないと云っていました。その筋でも、やっぱり例の
矢絣
(
やがすり
)
の女を問題にしている様ですね」
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
妹は二十歳前後の小柄な
痩
(
や
)
せた女で、
矢絣
(
やがすり
)
模様の
銘仙
(
めいせん
)
を好んで着ていた。あんな家庭を、つつましやかと呼ぶのであろう。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
少女はやゝ黄味がかつた銘仙の
矢絣
(
やがすり
)
の着物を着てゐた。襟も袖口も帯も
鴾色
(
ときいろ
)
をつけて、同じく鴾色の覗く八つ口へ白い両手を突込んで
佇
(
た
)
つてゐた。
小町の芍薬
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「まあお母さん、此の
矢絣
(
やがすり
)
のきれが出て来たぢやないの……。」と彼女はぼろきれの
裡
(
うち
)
からさもなつかしいものを見附けたやうに母親にかう云つた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
ふと、そこに
廂髪
(
ひさしがみ
)
に
結
(
ゆ
)
って、紫色の
銘仙
(
めいせん
)
の
矢絣
(
やがすり
)
を着て、白足袋をはいた十六ぐらいの美しい色の白い娘が出て来た。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
膝
(
ひざ
)
ぎりの水兵の服を着て、編み上げ靴をはきたり。一人の曲者は五つか、六つなるべし、紫
矢絣
(
やがすり
)
の
単衣
(
ひとえ
)
に
紅
(
くれない
)
の帯して、髪ははらりと目の上まで散らせり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「東京はえらい
矢絣
(
やがすり
)
が
流行
(
はや
)
るねんなあ。今ジャアマンベーカリーを出てから日劇の前へ来る迄に七人も着てたわ」
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
少年はそつと眼をあげて、大柄な
矢絣
(
やがすり
)
の胸もとを盗み見た。息をはずませてゐるのか、大きく波を打つてゐる。
地獄
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
厠
(
かわや
)
を
覗
(
のぞ
)
く尼も出れば、
藪
(
やぶ
)
に
蹲
(
しゃが
)
む癖の下女も出た。米屋の
縄暖簾
(
なわのれん
)
を擦れ擦れに消える
蒼
(
あお
)
い女房、
矢絣
(
やがすり
)
の膝ばかりで
掻巻
(
かいまき
)
の上から
圧
(
お
)
す、顔の見えない番町のお嬢さん。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それはさておき、私の上野音楽学校への通学ですが、私は前髪を赤いリボンで結んで、紫の
矢絣
(
やがすり
)
の着物に海老茶の袴、靴をはいて自転車で芝から上野に通いました。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
少女だちは同じように紫の
矢絣
(
やがすり
)
の
袖
(
そで
)
の長い
衣服
(
きもの
)
を
被
(
き
)
ていた。広巳は知らない女の児のことであるから、他の人を呼んでいるのだろうと思ってそのまま往こうとした。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
三十年も過ぎると
流行
(
はやり
)
というものは再び戻って来るものでしょう。私の目に残っている智恵子はよく藤色
矢絣
(
やがすり
)
のお召の着物を着ていました。それがまたよく似合いました。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
矢絣
(
やがすり
)
らしい着物に
扱帯
(
しごきおび
)
を巻いた端を後ろに垂らしている、その帯だけを赤鉛筆で塗ってある。
海水浴
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それでは、
篁村翁
(
こうそんおう
)
にでも言わせれば、余りに「紫の
矢絣
(
やがすり
)
過ぎている」それであの人のいつも作るような、殆ど暴露的な歌が作られようか。今の十六の娘にそんなのがあろうか。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お
召
(
めし
)
のコートと、羽織と、
瓦斯
(
ガス
)
の
矢絣
(
やがすり
)
の
単衣物
(
ひとえもの
)
と、女持のプラチナの腕時計の四点を、合計十八円也で、
昨日
(
きのう
)
と、
一昨日
(
おととい
)
の二日にわけて、筥崎
馬出
(
まいだし
)
の
三桝
(
みます
)
質店に入れたものである。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いつもよく例の
小豆
(
あずき
)
色の
矢絣
(
やがすり
)
のお召の着物に、濃い
藍鼠
(
あいねずみ
)
に薄く茶のしっぽうつなぎを織り出したお召の羽織を着てやって来たのだが、今日は藍色の地に細く白い雨絣の銘仙の羽織に
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そして、自分も縞メリンスのちょいちょい着に着かえて、よそいきの紫
矢絣
(
やがすり
)
の
負
(
お
)
ぶい
半纏
(
ばんてん
)
で克子を背負い、どんどん戸締りをした。健は、けっきょく追い出されるように、仕方なく縁側に出た。
大根の葉
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
女はしおしおしたような目をして、派手な
牡丹
(
ぼたん
)
の置型のある
浴衣
(
ゆかた
)
のうえに、
矢絣
(
やがすり
)
の糸織りの書生羽織などを引っかけて、
頽
(
くず
)
れた
姿形
(
なりかたち
)
をして自分がそこへ陥ちて行った径路や、初恋などを話した。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「それからお舟の書いたのは——姉樣人形、紫の
矢絣
(
やがすり
)
の着物をきてゐたと思ふ。もう一つは赤い袖無し、麻の葉絞り——とある」
銭形平次捕物控:175 子守唄
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
白地に濃い葡萄色の
矢絣
(
やがすり
)
の新しいセルの単衣に、帯は
平常
(
ふだん
)
のメリンス、その
整然
(
きちん
)
としたお太鼓が揺めく髪に隠れた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
縞目
(
しまめ
)
は、よく分らぬ、
矢絣
(
やがすり
)
ではあるまい、濃い藤色の腰に、赤い帯を
胸高
(
むなだか
)
にした、とばかりで袖を覚えぬ、筒袖だったか、振袖だったか、ものに隠れたのであろう。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
就中
(
なかんずく
)
「伊達げら」には編みに入念なのがあり、模様を出し色どりを加えたものに逢う。織物に近い感をさえ受ける。模様に色々の変化はあるが、一番多いのは
矢絣
(
やがすり
)
である。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
廂髪
(
ひさしがみ
)
に
結
(
ゆ
)
って、
矢絣
(
やがすり
)
の
紬
(
つむぎ
)
に
海老茶
(
えびちゃ
)
の
袴
(
はかま
)
をはいた女学生ふうの娘が、野菊や山菊など一束にしたのを持って、寺の
庫裡
(
くり
)
に手桶を借りに来て、手ずから前の水草の茂った井戸で水を汲んで
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
少女は紫の
矢絣
(
やがすり
)
の
袂
(
たもと
)
をひるがえして
前
(
さき
)
に立って往った。門の中には
禿
(
ち
)
びて枝の踊っているような松の老木があり、
椿
(
つばき
)
の木があり、
嫩葉
(
わかば
)
の間から実の
覗
(
のぞ
)
いている梅の木があって門の中を覆うていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
矢絣
(
やがすり
)
の
銘仙
(
めいせん
)
があったじゃないか。あれを着たら、どうだい?」
花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「それでは先づお銀のを讀まう。えーと、紫の
矢絣
(
やがすり
)
の着物を着た姉樣人形と、
麻
(
あさ
)
の葉を絞つた赤いおちやんちやん——かうだ」
銭形平次捕物控:175 子守唄
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
紫の
矢絣
(
やがすり
)
の、色の薄いが
鮮麗
(
あざやか
)
に、
朱緞子
(
しゅどんす
)
に銀と観世水のやや幅細な帯を胸高に、
緋鹿子
(
ひがのこ
)
の
背負上
(
しょいあ
)
げして、ほんのり桜色に上気しながら、こなたを見入ったのは、お妙である!
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
卒業式に
晴衣
(
はれぎ
)
を着飾ってくる女生徒の群れの中にもかれの好きな少女が三四人あった。紫の
矢絣
(
やがすり
)
の
衣服
(
きもの
)
に
海老茶
(
えびちゃ
)
の
袴
(
はかま
)
をはいてくる子が中でも一番眼に残っている。その子は
町
(
まち
)
はずれの町から来た。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「十七八でせうか、
矢絣
(
やがすり
)
に
竪
(
たて
)
やの字の帶で、素顏に近い島田髷の、良い娘でした——あ、それから左の頬に可愛らしい愛嬌ぼくろがあつて——」
銭形平次捕物控:226 名画紛失
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
紫の
矢絣
(
やがすり
)
に
箱迫
(
はこせこ
)
の銀のぴらぴらというなら知らず、
闇桜
(
やみざくら
)
とか聞く、暗いなかにフト忘れたように
薄紅
(
うすくれない
)
のちらちらする
凄
(
すご
)
い好みに、その高島田も似なければ、薄い駒下駄に
紺蛇目傘
(
こんじゃのめ
)
も
肖
(
そぐ
)
わない。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絞つたちやんちやんや、紫
矢絣
(
やがすり
)
の着物などと細かい事など覺えて居る筈はない
銭形平次捕物控:175 子守唄
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
香
(
かぐ
)
はしい唇の曲線と、
矢絣
(
やがすり
)
のお仕着せに包んだしなやかな
四肢
(
てあし
)
の線を見ただけで、平次は何やら秘密の一つの鍵がこの娘のすぐれた肉體の美しさに潜んでゐるやうな氣がしてならなかつたのです。
銭形平次捕物控:186 御宰籠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“矢絣”の解説
矢絣(やがすり)とは、矢羽根を図案化した模様のある絣のこと。また、この絣の柄の意匠のことも指す。
(出典:Wikipedia)
矢
常用漢字
小2
部首:⽮
5画
絣
漢検1級
部首:⽷
12画
“矢”で始まる語句
矢張
矢
矢鱈
矢庭
矢立
矢来
矢先
矢弾
矢筈
矢文