甚麽どんな)” の例文
今度帰つて来て、毎日来る加藤と顔を合せるのも、兄は甚麽どんなに不愉快な思ひをするだらう、などとまで狭い女心に心配もしてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
父樣おとつさんいおかたで、それきりあとえるやうなわること爲置しおかれたかたではありませんから、わたくしどもは甚麽どんなあぶなこは出會であひましても、安心あんしんでございます。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うしたら甚麽どんな面白おもしろいでせう』とあいちやんはおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「戸数は幾何あるですか」と訊くと、「左様六千余に上つてるでせう」と其人が答へた。甚麽どんな人であつたかは、見る事が出来ずに了つた。
雪中行:小樽より釧路まで (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ふね大丈夫だいぢやうぶしんじたらつてる、うへでは甚麽どんな颶風はやてようが、ふねしづまうが、からだおぼれようが、なに、大丈夫だいぢやうぶだとおもつてござれば、ちつともおどろくことはない。こりやよしんでも生返いきかへる。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見す見す実家さとの零落して行くのを、奈何いかんともする事の出来ない母の心になつて見たら、叔父の道楽が甚麽どんなに辛く悲く思はれたか知れない。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其新聞には野口雨情君も行くのだと小国君が言ふ。「甚麽どんな人だい。」とくと、「一二度逢つたが、至極穏和おとなしい丁寧な人だ。」
『さうですか。天野はまた何處かへ行くと云つてましたか。アノ男も常に人生の裏路許り走つて居る男だが、甚麽どんな計畫をしてるのかネー。』
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『さうですか。天野はまた何処かへ行くと云つてましたか。アノ男も常に人生の裏路許り走つて居る男だが、甚麽どんな計画をしてるのかネー。』
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
至つて軽口の、さばけた、竹を割つた様な気象で、甚麽どんな人の前でも胡坐あぐらしかかいた事のない代り、又、甚麽人に対しても牆壁しやうへきを設ける事をしない。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
母、生みの母、上衝のぼせで眼を悪くしてる母が、アノ時甚麽どんなに恋しくなつかしく思はれたらう! 母の額に大きなきずがあつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
健が平生へいぜい人に魂消たまげられる程の喫煙家で、職員室に入つて来ると、甚麽どんな事があらうと先づ煙管キセルを取上げる男であることは、孝子もよく知つてゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『一體マア何の話だらう? 大層勿體をつけるぢやないか? 葢許り澤山あつて、中に甚麽どんな美味い饅頭が入つてるんか、一向アテが付かない。』
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
甘き夏の夜の風を、四人は甚麽どんなうれしんだらう! 久子の兄とアノ人との会話はなしが、解らぬ乍らに甚麽に面白かつたらう!
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
心配する事アえ、先生。齡ア四十一だべえが、村一番の醜婦みたくなし巨女おほをなごだア、加之それにハア、酒を飮めば一升も飮むし、甚麽どんな男も手餘てやましにするくれえ惡醉語堀ごんぼうほりだで。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
心配しんぺいする事アえ、先生。齢ア四十一だべえが、村一番の醜婦みたくなし巨女おほをなごだア、加之それにハア、酒を飲めば一升も飲むし、甚麽どんな男も手余てやましにするくれい悪酔語堀ごんぼうほりだで。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして甚麽どんな話の機會からか、智惠子を口説いてみた。彼は有らゆる美しい言葉を並べた。女はぢつ俯向うつむいてゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
嗚呼其時になつたら、お八重さんは甚麽どんなに美しく見えるだらうと思ふと、其お八重の、今日目を輝かして熱心に語つた美しい顏が、どうやらねたましくもなる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
嗚呼其時になつたら、お八重さんは甚麽どんなに美しく見えるだらうと思ふと、其お八重の、今日目を輝かして熱心に語つた美しい顔が、怎やら嫉ましくもなる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、明るい街を歩く時は、頭腦が紛糾こんがらかつて四邊あたり甚麽どんな人が行かうと氣にも止めなかつたに不拘かゝはらず、時として右側にれ、時として左側に寄つて歩いて居た。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、明るい街を歩く時は、頭脳あたま紛糾こんがらかつて四辺あたり甚麽どんな人が行かうと気にも止めなかつたに不拘、時として右側にれ、時として左側に寄つて歩いて居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『千早先生も又、甚麽どんな御事情だかも知れねえども、今急にお罷めアねえくとも宜うごあんすべアすか?』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『おや然う。まあ甚麽どんなにか宅ぢや御世話樣になりましたか、ほんに遠い所をよく入來いらつしやつた。まあ/\お二人共自分の家へ來た積りで、ゆつくり見物でもなさいましよ。』
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『おやう。まあ甚麽どんなにかうちぢや御世話様になりましたか。ほんとに遠い所をよく入来いらしつた。まあ/\お二人共自分の家へ来た積りで、ゆつくり見物でもなさいましよ。』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『然うです。美術學校で同級だつたんですが、……あゝ御存知ですか! 然うですか!』と鷹揚おうやううなづいて、『甚麽どんなで居るんでせう? まだ結婚しないでせうか?』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
うです。美術学校で同級だつたんですが、……あゝ御存じですか! 然うですか!』と鷹揚に頷いて、『甚麽どんなで居るんでせう? まだ結婚しないでせうか?』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
誰が甚麽どんな人やらも知らぬのに、随分乱暴な話で、主筆氏の事も、野口君は以前まへから知つて居られたが、予に至つては初めて逢つて会議の際に多少議論しただけの事。
『千早先生も又、甚麽どんな御事情だかも知れねえども、今急にお罷めアねえくともうごあんべアすか?』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
尤も、靜子は譬へ甚麽どんな事があつても、自分で自分の境遇に反抗し得る樣な氣の強い女ではないのだが。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
で、忠太は先ず、二人が東京へ逃げたと知れた時に、村では兩親初め甚麽どんなに驚かされたかを語つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、手早く書きつけて、鐵筆ペンを擱いた。此後は甚麽どんな事を書けばよいのか、まだ考へて居ないのだ。で、渠は火鉢に向直つて、頭だけ捻つて、書いただけを讀返して見る。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
叔父の事にしては、家がうならうと、妻子が甚麽どんな服装なりをしようと、其麽そんな事は従頭てんで念頭にない。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
甚麽どんな気がしてアノ手巾を私の袂に入れただらうと考へて見たが、否、不図すると、アレは市子でなくて、名は忘れたが、ソレ、アノ何とか云つた、色の浅黒い貧相な奴が
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其中に自分だけが腕車の上に縛られてゆくのであつたが、甚麽どんな人が其腕車を曳いたのか解らぬ。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
甚麽どんな關係になつてるか知ら? 六頁になつて……釧路十勝二ケ國を……帶廣に支社を置いて、……田川が此方に居るとすると俺は要らなくなるし……田川が帶廣に行くと
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、手早く書きつけて、鉄筆ペンを擱いた。この後は甚麽どんな事を書けばよいのか、まだ考へて居ないのだ。で、渠は火鉢に向直つて、かしらだけ捻つて、書いただけを読返して見る。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
甚麽どんな氣がしてアノ手巾ハンカチを私の袂に入れたのだらうと考へて見たが、否、不圖すると、アレは市子でなくて、名は忘れたが、ソレ、アノ何とか云つた、色の淺黒い貧相な奴が
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『だハンテ若い人は困る。人が甚麽どんなに心配してるかも知らないで、氣ばかり早くてさ。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『だハンテ若い人は困る。人が甚麽どんなに心配してるかも知らないで、気ばかり早くてさ。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
洋風まがひの家屋うちの離れ/″\に列んだ——そして甚麽どんな大きい建物も見涯みはてのつかぬ大空に圧しつけられてゐる様な、石狩平原の中央ただなかの都の光景ありさまは、やゝもすると私の目に浮んで来て
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
木立の多い洋風まがひの家屋の離れ/″\に列んだ——そして甚麽どんな大きい建物も見涯のつかぬ大空に壓しつけられてゐる樣な石狩平原の中央ただなかの都の光景ありさまは、やゝもすると私の目に浮んで來て
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
モウ確然すつかり普通の女でなくなつた證據には、アレ浩さんも見たでせう、乞食をして居乍ら、何時でもアノ通りべにをつけて新らしい下駄を穿いて居ますよ。夜は甚麽どんな處に寢るんですかネー。——
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
モウ確然すつかり普通の女でなくなつた証拠には、アレ浩さんも見たでせう、乞食をして居乍ら、何時でもアノ通りべにをつけて新らしい下駄を穿いて居ますよ。夜は甚麽どんな処に寝るんですかネー。——
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
喜見きけんとか云ふ、土地で一番の料理屋にれて行かれて、「毎日」が例令たとへ甚麽どんな事で此方にほこを向けるにしても、自體てんで對手にせぬと云つた樣な態度で、唯君自身の思ふ通りに新聞を拵へて呉れれば可い。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
喜見きけんとか云ふ、土地ところで一番の料理屋に伴れて行かれて、「毎日」が仮令たとへ甚麽どんな事で此方に戈を向けるにしても、自頭てんで対手にせぬと云つた様な態度で、唯君自身の思ふ通りに新聞を拵へて呉れれば可い
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
氣羞しくて厭だと言つては甚麽どんなに作松に叱られたか知れない。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
気羞しくて厭だと言つては甚麽どんなに作松に叱られたか知れない。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は其時甚麽どんな気持がしたつたか、今になつては思出せない。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は其時甚麽どんな氣持がしたつたか、今になつては思出せない。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
またかれは、一体甚麽どんな人を見ても羨むといふことのない。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)