煩惱ぼんなう)” の例文
新字:煩悩
折角せつかく樂しい昨日きのふは夢、せつない今日けふうつつかと、つい煩惱ぼんなうしやうじるが、世の戀人の身の上をなんで雲めが思ふであらう。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
マーキュ いや、ついでいのしてよう。……(呪文の口眞似にて)ローミオーよ! 浮氣うはきよ! 狂人きゃうじんよ! 煩惱ぼんなうよ! 戀人こひびとよ! 溜息ためいき姿すがたにて出現しゅつげんめされ。
櫻町さくらまち殿との面影おもかげいまくまでむねうかべん、良人をつと所爲しよゐのをさなきもしひかくさじ、百八ひやくはち煩惱ぼんなうおのづからえばこそ、殊更ことさらなにかはさん、かばほのほえばもえよとて
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
謝斷せかれしが煩惱ぼんなうの犬におはなほこりずまに忍び通ひけるうち或夜あるよわかい者共の目にかゝ引捕ひつとらへられ桶伏をけふせにぞせられける是は据風呂桶すゑふろをけふせ其上へ大いなる石をあげ鐵砲を引拔ひきぬき其穴よりわづかに食物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
圭一郎は其後の三四年間を上京して傷いた心を宗教に持つて行かうとしたり慰めのための藝術にすがらうとしたり、咲子への執着、子供への煩惱ぼんなうを起して村へ歸つたり、又厭氣がさして上京したり
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ところが、わか御新造ごしんぞより、としとつた旦那だんな團右衞門だんゑもんはうが、いさゝ煩惱ぼんなうふくらゐ至極しごく猫好ねこずきで、ちつともかまはないで、おなじやうにくろよ、くろよ、と可愛かはいがるので何時いつともなしに飼猫かひねこ同樣どうやうつたとふ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
煩惱ぼんなう盡きし朝に遇ひて、今日を捨身しやしん首途かどいで
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
なし恩をせ置思ひを遂んと心の中に目算もくさんなし忽ちおこ煩惱ぼんなういぬよりもなほ眼尻めじりを下げお光殿にも可愛かあいさうにわかい身そらで後家になられ年増盛としまざかりををしい物と戯氣おどけながら御子息道之助殿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
入相いりあひかねこゑいんひゞきてねぐらにいそぐ友烏ともがらす今宵こよひ宿やどりのわびしげなるにうつせみのゆめ見初みはじめ、待合まちあひ奧二階おくにかい爪彈つめびきの三下さんさがすだれるゝわらごゑひくきこえておもはずとま行人ゆくひと足元あしもとくる煩惱ぼんなういぬ尻尾しつぽ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
煩惱ぼんなうの色こそ通へ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
たゆげのよる煩惱ぼんなう
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)