焼酎しょうちゅう)” の例文
旧字:燒酎
そう言ううちにも平次は、手っ取り早くお静の傷口を洗って、用意の焼酎しょうちゅうでしめした上、手拭を裂いてキリキリとゆわえてやりました。
それと同じように焼酎しょうちゅうをそのまま下戸に飲ませられませんが焼酎の中へお豆腐を一日漬けておくと誰にでもその焼酎が楽に飲めます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一枚戸を開きたる土間に、卓子テエブル椅子いすを置く。ビール、サイダアのびんを並べ、こもかぶり一樽ひとたる焼酎しょうちゅうかめ見ゆ。この店のわきすぐに田圃たんぼ
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といい、一人で、焼酎しょうちゅうをのんでいるのだが、今日は、誘われもしないのに、太った身体を、歩板に乗せて、のこのこ、岸にあがって来た。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
馬鈴薯から安価な焼酎しょうちゅうと、そのころ恐ろしく高価なウ※スキーとが造りだされる化学上の手続を素人しろうとわかりがするように話して聞かせた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そーめん六俵二十入りその代金六両一歩二朱、焼酎しょうちゅう入りの徳利二本その代金三歩也、しめて合計金二百九十一両三歩也、——
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
それもあったし、また、さいぜんから眺めていたところでは、二た桶の焼酎しょうちゅうにも、怪しまれる点はなかった。で、不承ふしょう不承な面色だったが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒は固く禁じてありましたけれども、それとても小使に頼めば薬を買うというなだいで、焼酎しょうちゅうなおしを買って来てくれます。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
じつは酒ではなく焼酎しょうちゅうなので、一合のそれを天鉄で二合に割ったうえかんをしてもらうのだが、あつらえるてんぷらも変っていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこでB君の友達はげて来た焼酎しょうちゅうを取出した。この草の上の酒盛の前を、時々若い女のつれが通った。草刈に行く人達だ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
焼酎しょうちゅうを飲みに、この近所の宿屋と料理屋とをかねた家へ御精勤で、三日にいちどは、私たちの衣類を売ったお金を持って東京方面へ御出張です。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
酒は呑みたし金はなしで、敷蒲団を一枚屑屋に一円五十銭で売って焼酎しょうちゅうを買うなり。お米が足りなかったのでうどんの玉を買ってみんなで食べた。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
いろんな奇抜な方法で雀やからすを捕る話も面白かった。一例を挙げると、庭へ一面に柿の葉を並べておいて、その上に焼酎しょうちゅうに浸した米粒をのせておく。
重兵衛さんの一家 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
黒いびんの肩の怒ったのに這入っている焼酎しょうちゅうである。直段ねだんが安いそうであったから、定めて下等な酒であったろう。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かねて招かれてた本陣のところへいって鳥鍋で焼酎しょうちゅうをのむ。本陣は少しばかりの焼酎に酔い猩猩しょうじょうみたいになって
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
「一万箱祝」を兼ねてやることになり、酒、焼酎しょうちゅう、するめ、にしめ、バット、キャラメルが皆の間に配られた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
折竹孫七が、ブラジル焼酎しょうちゅうの“Pingaピンガ”というのを引っさげて、私の家へ現われたのが大晦日みそかの午後。さては今日こそいよいよ折竹め秘蔵のものを出すな。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
手紙には新蔵しんぞう蜂蜜はちみつをくれたから、焼酎しょうちゅうを混ぜて、毎晩杯に一杯ずつ飲んでいるとある。新蔵は家の小作人で、毎年冬になると年貢米ねんぐまいを二十俵ずつ持ってくる。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
支那シナの旧書に見えるような、さかずきの話はあまり聴かないが、大抵は例の焼酎しょうちゅう入れ、または小さな酒徳利さかどっくりの携帯用のもの、時としては腰下こしさげの煙草たばこ入れなどもあって
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その夜蟹江は『すみれ』の一隅に腰をおろして、ひとりちびちびと焼酎しょうちゅうのコップを傾けていたのです。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「これは焼酎しょうちゅうかね」と聞けば「いや別製でなも、原料水は、へへん、ラインの水で」と扇を叩いた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
男はからになった焼酎しょうちゅうのコップを卓上にたたきつけ、たたきつけて、こなごなに割ってしまった。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その声は鈍く乱れしわがれ濁っていて、火酒ウォッカ焼酎しょうちゅうのどをつぶした老人のような声だった。
キチガイが焼酎しょうちゅうを飲んで火事見舞に来たようなアンバイなんで……暫くして女がスクリンを上げてから気が付いてみると、その馬車の走り方のスゴイのにチョット驚きましたよ。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
焼酎しょうちゅうをうんと飲んで死んだと、荒物屋佐野さんの十三人目の、色の黒い、あぶらぎった背虫のように背を丸くしたおかみさんがうちへ知らせに来た。佐野さんは時々面白い話をした。
これはいかなこと! 昨日きのう登山第一の元気はどこへやら、焼酎しょうちゅうは頭へのぼって、胸のあしき事はなはだしく、十二、三町走るか走らぬに、とてたまらず、煙草たばこ畑の中へ首を突込んで嘔吐へどく。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
鶴見は平生へいぜいの飲物としては焼酎しょうちゅうを用い、焼酎よりもこの泡盛が何よりの好物こうぶつである。
それに、彼は獲物嚢えものぶくろのカクシの中に、焼酎しょうちゅうびんをもっている。それを、ごくりごくり、彼ひとりで、あらまし飲んでしまう。ルピック氏は、猟に夢中で、請求せいきゅうするのを忘れているからだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
太「とても助かりますまいとは存じますが、此の辺に生憎あいにく療治を致す者もござらぬ、手前少々は傷を縫う事も心得て居りましたが、つい歎きに紛れて……何しろ焼酎しょうちゅうで傷口を洗いましょう」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも一升飲めばいい気持になったのだが、そのうち、焼酎しょうちゅう一升飲んでもケロリとしているので、酒と一緒に催眠剤を飲むようになる。また、そのほうが安上りというサモシイ気持もあったのだ。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
まっしろな肉をそのまま焼いて食うらしいし、焼酎しょうちゅうにもつける。マムシの生きたのを町に持ってゆけば一匹幾百円かで売れるという。花巻駅の駅前広場にはいつでもマムシの黒焼を屋台で売っている。
山の秋 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
傘売りがそこで焼酎しょうちゅうを飲みながら待機しているだけに
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
これがとまりに着くと、大形の浴衣ゆかたに変って、帯広解おびひろげ焼酎しょうちゅうをちびりちびりりながら、旅籠屋はたごやの女のふとったひざすねを上げようというやからじゃ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幸い傷は浅かったので、用意の焼酎しょうちゅうで洗って、さらしでグルグル巻くと、寝呆ねぼけたお駒を叩き起して、町内の外科を呼ばせました。
じつは酒ではなく焼酎しょうちゅうなので、一合のそれを天鉄で二合に割ったうえかんをしてもらうのだが、あつらえるてんぷらも変っていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その時の別当の言い草がいい——御召御馬おめしおうまと言え、それからこの御召御馬は焼酎しょうちゅうを一升飲むから、そう心得ろですとさ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
炬燵こたつにもぐり込んで配給の焼酎しょうちゅうでも飲みながら、絵本の説明文に仔細しさいらしく赤鉛筆でしるしをつけたりなんかして、ああ、そのさまが見えるようだ。
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
『それと、片口注かたくち焼酎しょうちゅうをなみなみいで、晒布さらしと一緒に、鷹小屋の前へ持って行ってやれ。——外へ置いてくればいいのだぞ、中へは這入るなよ』
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この「男」を入れると納豆がよくできるというのは実験であろう(越後三条南郷談)。薩摩の黒島でも焼酎しょうちゅう醸造の際に、笹を結んで麹の上に刺すのをムスビという。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
給仕のおとこ小盞こさかずき焼酎しょうちゅうのたぐいいくつかついだるを持てく。あるじのほかにはたれも取らず、ただ大隊長のみは、「われ一個人にとりては『シャルトリョオズ』をこそ」
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彦太郎は油でよごれた手を洗濯石鹸で洗って、柱に腰を下すと、昨夜残しておいた焼酎しょうちゅうのあったのを思い出し、細目の金網の張ったみずやの中から一升徳利を取り出した。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
直しや、焼酎しょうちゅうよりも、生一本がいいということは、道庵も日頃から感じておりましたことです。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっとも焼酎しょうちゅうとベルモット、ビールと白酒しろざけでは同じ経験とも申されませんが、同種、同類、同価の酒を店で吐いて、家で飲んだとすれば、吐くと飲むとの相違があるだけで
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それはちょうど蝮蛇まむしをアルコールや焼酎しょうちゅうへ漬けて人が飲むのと同じ事で猪の毒質が蛇や蝮蛇より生ずるとすれば猪の肉をブランデーへ漬けるのも自然と配合法が似ております。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
川のほとりに打ちたおれていたことも、発見されてかつぎこまれたいきさつも彼は知らないのだ。焼酎しょうちゅうで洗われた傷口のいたみなどもいつかの夢のように遠いかすかな記憶であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
速水はよごれたエプロンの男ボーイに、焼酎しょうちゅうと日本酒を持ってくるように命じた。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「実はあたしゃねえ、ビールよりは焼酎しょうちゅうの方がいいんだ」
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
(一八)焼酎しょうちゅうの御馳走
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
場所は蒸気河岸の浦粕亭で、私は三十六号船の留さんとビールを飲んでい、その若者たち三人は隣りのテーブルで、焼酎しょうちゅうすすりながら話していたのだ。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ゆうべこの宿に着いた時、お前の親爺は、これ勝太郎、足の豆には焼酎しょうちゅうでも吹いて置け、と言ったのをおれは聞いたぞ。おれには、あんな事は言わない。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)