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火屋
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ほや
ふりがな文庫
“
火屋
(
ほや
)” の例文
「蛞蝓が火ぶくれを拵へるものか。三河島の火葬場で、
火屋
(
ほや
)
の中に首でも突つ込んだのか。あそこで、時々燒場團子を盜まれるさうだぜ」
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
引窓の閉まる拍子に、物音もせず、五
分
(
ぶ
)
ばかりの丸い灯は、口金から根こそぎ
殺
(
そ
)
いで取ったように
火屋
(
ほや
)
の外へふッとなくなる。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
上框
(
あがりがまち
)
には妻の敏子が、垢着いた木綿物の上に女兒を負つて、頭にかゝるほつれ毛を氣にしながら、ランプの
火屋
(
ほや
)
を研いてゐた。
足跡
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
十刹
(
じつせつ
)
の僧ども経を捧げ
諷経
(
ふうきん
)
をなせり。十五日には野辺の送りの御わざ始まり、
蓮台野
(
れんだいの
)
には
火屋
(
ほや
)
れいがん堂など
厳
(
いか
)
めしく作り、竹垣をゆへり。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夫人が戸を開けたとたんに、さっと吹きこんだ風でランプは消え、しぶきが横っ倒しに来ると、熱した
火屋
(
ほや
)
が破裂してその破片が
閾
(
しきい
)
に散った。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
そのうちに窓の外は眩しいくらいに冴えかえって、薄い霧ごしに日の照るのが、電灯の
火屋
(
ほや
)
でも見つめるような気がする。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
その前に緑色の
火屋
(
ほや
)
の小さいランプに明りが附けて供へてあつて、それから矢張その前に色々に染めたイイスタア祭の卵が供へてあるのであつた。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
二階は六畳敷ばかりの二間で、仕切を取払った真中の柱に、油壷のブリキでできた五分心のランプが一つ、
火屋
(
ほや
)
の
燻
(
くすぶ
)
ったままぼんやり
点
(
とぼ
)
っている。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
石油を
透
(
す
)
かした硝子の壺、動かない焔を守つた
火屋
(
ほや
)
、——さう云ふものの美しさに満ちた珍しいランプを眺めました。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
なるほど
火屋
(
ほや
)
が薄黒く
燻
(
くす
)
ぶっていた。
丸心
(
まるじん
)
の
切方
(
きりかた
)
が
平
(
たいら
)
に行かないところを、むやみに
灯
(
ひ
)
を高くすると、こんな変調を来すのがこの洋燈の特徴であった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
火屋
(
ほや
)
をめぐつて舞ひ狂ふものがあり、笠の内側にへばりついたまま、ぢつと動かぬものもあつた。
生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
天井から吊るされたランプの
火屋
(
ほや
)
に、さっきから、一羽の大きな蛾が、しきりと、戯れていた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
その出し過ぎた心の右の端が高くなっていて、
火屋
(
ほや
)
に黒い油煙をつけていた。その燃えている
様
(
さま
)
がちょうど狂人の濁ってしかも真紅な動乱した心をあらわしているようだった。
不幸
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
今度は暫く時間が立つて、
火屋
(
ほや
)
のないブリツキの小ランプを手に持つて帰つて来た。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
灯がその
火屋
(
ほや
)
の中にともるとキラキラと光るニッケル唐草の円いランプがあって、母は留守の父のテーブルの上にそのランプを明々とつけ、その上で雁皮紙を詠草のよう横に折った上へ
父の手紙
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
茶かすつもりであった
詞
(
ことば
)
の
端
(
はし
)
に何か神秘的なものがつながった。賢次は
洋燈
(
ランプ
)
へ眼をやった。
心
(
しん
)
の切りようでもわるいのか、洋燈は
火屋
(
ほや
)
の一方が黒く
鬼魅
(
きみ
)
わるく
煤
(
すす
)
けていた。広巳はその時
頷
(
うなず
)
いた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ランプの
火屋
(
ほや
)
の
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
上框
(
あがりがまち
)
には妻の敏子が、垢着いた木綿物の上に
女児
(
こども
)
を
負
(
おぶ
)
つて、顔にかゝるほつれ毛を気にしながら、ランプの
火屋
(
ほや
)
を
研
(
みが
)
いてゐた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
縁起の悪い灯籠ですよ、よっぽどすわりが悪いと見えて、三年に一度位ずつは大風か大雪で笠と
火屋
(
ほや
)
が転がり落ちますよ。
銭形平次捕物控:245 春宵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
促
(
せた
)
げても
頓着
(
とんじゃく
)
せず、何とか絶えず
独言
(
ひとりごち
)
つつ
鉄葉
(
ブリキ
)
の
洋燈
(
ランプ
)
に
火屋
(
ほや
)
無しの裸火、赤黒き光を放つと同時に
開眸
(
かいぼう
)
一見、三吉
慄然
(
りつぜん
)
として「
娑婆
(
しゃば
)
じゃねえ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
接客用の提げ煙草盆、見事な
蒔絵
(
まきえ
)
で、
青磁
(
せいじ
)
の
火屋
(
ほや
)
がはいっている。
煙管
(
きせる
)
をそえて、上の間と、下の間へさし出し
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「時に小夜の事だがね」と先生は
洋灯
(
ランプ
)
の
灯
(
ひ
)
を見ながら云う。
五分心
(
ごぶじん
)
を
蒲鉾形
(
かまぼこなり
)
に
点
(
とも
)
る
火屋
(
ほや
)
のなかは、
壺
(
つぼ
)
に
充
(
みつ
)
る油を、物言わず吸い上げて、穏かな
燄
(
ほのお
)
の舌が、暮れたばかりの春を、動かず守る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
芭蕉 おつと、この緑のランプの
火屋
(
ほや
)
を風に吹き折られる所だつた。
新緑の庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
貝殻を敷いた細い
穢
(
きたな
)
い横町で、貧民窟とでもいいそうな家並だ。山本屋の門には
火屋
(
ほや
)
なしのカンテラを
点
(
とぼ
)
して、三十五六の
棒手振
(
ぼてふり
)
らしい男が、荷籠を下ろして、売れ残りの野菜物に水を
与
(
く
)
れていた。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
無言で、金五郎は、それをおいしそうに吸い、蛾の戯れているランプの
火屋
(
ほや
)
を、じっと、見あげていたが、ふいに、その両眼から、ラムネ玉のような、大粒の涙が、タラタラタラと、あふれ落ちた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
今ほど
此室
(
ここ
)
に
翔
(
かけ
)
り来て、
赫々
(
かくかく
)
たる
洋燈
(
ランプ
)
の
周囲
(
めぐり
)
を、飛び
廻
(
めぐ
)
り、飛び狂い、火にあくがれていたりしが、ぱっと羽たたき
火屋
(
ほや
)
の中へ逆さまに飛び入りつ
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
薄暗く
火屋
(
ほや
)
の曇つた、紙笠の破れた三分心の吊洋燈の下で、物思はし氣に悄然と坐つて
裁縫
(
しごと
)
をしてゐたお利代は、『あ、お歸りで御座いますか。』と忙しく出迎へる。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と、わずかに、銀の
籠目
(
かごめ
)
の
火屋
(
ほや
)
を掛けた手炉の端をそっと
頒
(
わか
)
つぐらいなものだった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芭蕉
(
ばせう
)
おつと、この緑のランプの
火屋
(
ほや
)
を風に吹き折られる所だつた。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ぐるりとその両側、雨戸を開けて、
沓脱
(
くつぬぎ
)
のまわり、縁の下を
覗
(
のぞ
)
いて、念のため引返して、また
便所
(
はばかり
)
の中まで探したが、光るものは
火屋
(
ほや
)
の
欠
(
かけら
)
も落ちてはいません。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ガタビシする入口の戸を開けると、其処から
見透
(
すとほ
)
しの台所の
炉辺
(
ろばた
)
に、薄暗く
火屋
(
ほや
)
の曇つた、紙笠の破れた三分心の
吊洋燈
(
つりらんぷ
)
の
下
(
もと
)
で、物思はし気に
悄然
(
しよんぼり
)
と坐つて
裁縫
(
しごと
)
をしてゐたお利代は
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
燈火
(
ともしび
)
の赤黒い、
火屋
(
ほや
)
の
亀裂
(
ひび
)
に紙を貼った、笠の
煤
(
すす
)
けた
洋燈
(
ランプ
)
の
下
(
もと
)
に、膳を引いた跡を、直ぐ長火鉢の向うの
細工場
(
さいくば
)
に立ちもせず、
袖
(
そで
)
に
継
(
つぎ
)
のあたった、黒のごろの
半襟
(
はんえり
)
の破れた
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
釣
(
つり
)
ランプだが、
火屋
(
ほや
)
も笠も、
煤
(
すす
)
と一所に油煙で黒くなって正体が分らないのであった。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
持っていた
洋燈
(
ランプ
)
の
火屋
(
ほや
)
が、パチン
微塵
(
みじん
)
、
真暗
(
まっくら
)
になったから、様子を見ていた裏長屋のかみさんが、何ですぜ、殺すのか、取って食うのか、
生血
(
なまち
)
を吸うのかと思ったっていうんですぜ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
卓子
(
テイブル
)
の上に両方からつないで下げた電燈の
火屋
(
ほや
)
の
結目
(
むすびめ
)
を解いたが、
堆
(
うずたか
)
い
書籍
(
しょじゃく
)
を片手で
掻退
(
かいの
)
けると、
水指
(
みずさし
)
を取って、ひらりとその脊の高い体で、靴のまま卓子の上に
上
(
あが
)
って銅像のごとく
突立
(
つッた
)
った。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ドギドギする
小刀
(
ナイフ
)
を、
火屋
(
ほや
)
の中から縦に突刺してるじゃありませんか。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はい、」と潤んだ含声の優しいのが聞えると、
※
(
ぱッ
)
と
摺附木
(
マッチ
)
を
摺
(
す
)
る。小さな
松火
(
たいまつ
)
は
真暗
(
まっくら
)
な中に、火鉢の前に、壁の隅に、手拭の
懸
(
かか
)
った下に、中腰で
洋燈
(
ランプ
)
の
火屋
(
ほや
)
を持ったお雪の姿を
鮮麗
(
きれい
)
に
照
(
てら
)
し出した。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
火
常用漢字
小1
部首:⽕
4画
屋
常用漢字
小3
部首:⼫
9画
“火屋”で始まる語句
火屋霊堂