深川ふかがは)” の例文
運河の眺望は深川ふかがは小名木川辺をなぎがはへんに限らず、いづこに於ても隅田川の両岸に対するよりも一体にまとまつた感興を起させる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なーるほど、にこやかでほゝふくれてゐるところなんぞは大黒天だいこくてんさうがあります、それに深川ふかがは福住町ふくずみちやう本宅ほんたく悉皆みな米倉こめぐら取囲とりまいてあり、米俵こめだはら積揚つみあげるからですか。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
深川ふかがは木場きば材木ざいもくしげつたら、夫婦いつしよになつてるツておつしやつたのね。うしたつて出來できさうもないことが出來できたのは、わたしねんとゞいたんですよ。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大きな金持のところへはいつては、百兩二百兩といふ金をふんだくる。中には鐵砲をかついではいる者もあるといふ風で、深川ふかがは木場きば淺草あさくさ藏前くらまへで、非常に恐れた。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
深川ふかがは小名木川をなぎがはより猿江裏さるえうらの如くあたりは全く工場地に変形し江戸名所の名残なごり容易たやすくは尋ねられぬ程になつた処を選ぶ。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一寸ちよつと話題わだいにはらうとおもふ、武生たけふから道程みちのりじつ二十七里にじふしちりである。——深川ふかがはくるま永代えいたいさないのを見得みえにする……とつたもので、上澄うはずみのいゝところつてかすゆづる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
本所ほんじよ深川ふかがは浅草辺あさくさへんの路地裏には今もつて三四十年まへ黙阿弥劇に見るまゝの陰惨不潔無智なる生活が残存ざんぞんして居る。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
どんなうらでもしほとほつてゐますから、深川ふかがは行留ゆきどまりといふのはありませんや。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
本所ほんじよ竪川たてかは深川ふかがは小名木川辺をなぎかはへん川筋かはすぢには荷足船にたりぶねで人を渡す小さな渡場わたしば幾個所いくかしよもある。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
深川ふかがは高橋たかばしひがし海邊うみべ大工町だいくちやうなるサイカチといふところより小名木川をなぎがはふねうけて……
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
銀座ぎんざ日本橋にほんばしをはじめ、深川ふかがは本所ほんじよ淺草あさくさなどの、一時いちじはつしよきうしよ十幾じふいくしよからあがつたのにくらべれば、やまなんでもないもののやうである、が、それはのちこと
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
深川ふかがはや低き家並やなみのさつき空
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いざ、金銀きんぎんあふぎつてふよとれば、圓髷まげをんな、なよやかにすらりときて、年下としした島田しまだびんのほつれを、透彫すかしぼりくしに、掻撫かいなでつ。心憎こゝろにくし。かねつたふらく、ふね深川ふかがは木場きばかへる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なが突通つきとほしのかうがいで、薄化粧うすげしやうだつた時分じぶんの、えゝ、なんにもかにも、ひつじこくかたむきて、——元服げんぷくをしたんですがね——富川町とみかはちやううまれの深川ふかがはだからでもありますまいが、ねんのあるうちから、ながして
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)