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歴々
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ありあり
ふりがな文庫
“
歴々
(
ありあり
)” の例文
とは思ったが、
歴々
(
ありあり
)
彼処
(
かしこ
)
に、何の異状なく
彳
(
たたず
)
んだのが見えるから、
憂慮
(
きづかう
)
にも及ぶまい。念のために声を懸けて呼ぼうにも、この
真昼間
(
まっぴるま
)
。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……もちろんその詳細な内容は遠からず貴方の眼の前に、
歴々
(
ありあり
)
と展開致して来る事と存じますから、ここには説明致しませぬが……
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
八五郎は
唸
(
うな
)
りました。平次が指摘した死体の喉には、荒縄とは似も付かぬ、細くて深い溝が一と筋、
歴々
(
ありあり
)
と走っているではありませんか。
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すこしも早く本望を遂げた上は、兵馬に然るべき主取りをさせて、自分もその落着きを楽しみたい心が
歴々
(
ありあり
)
と見えることもある。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
瞳の色は、飽くまで冷たかったが、
微
(
かす
)
かにせまった眉や、顎のあたり、胸底の
懊悩
(
おうのう
)
をじっと押しこらえている感じが、
歴々
(
ありあり
)
と浮び上った。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
宗利は悲鳴をあげながら、両手で眼を押えて草地へ転げた、指のあいだから
溢
(
あふ
)
れ出る血が半面を染めた。いまでも宗利は
歴々
(
ありあり
)
と覚えている。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
田中は袴の
襞
(
ひだ
)
を正して、しゃんと坐ったまま、多く二尺先位の畳をのみ見ていた。服従という態度よりも反抗という態度が
歴々
(
ありあり
)
としていた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
其の長い手袋を
脱
(
はず
)
し爾して手首の所を
露出
(
むきだし
)
にして余に示した、示されて余は見ぬ訳に行かぬ、見たも見たも
歴々
(
ありあり
)
と見たのだが
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
が、腹の立ったありのままが少しも飾られないで表白されているだけに、二葉亭の面目が
歴々
(
ありあり
)
と最も能く現われていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
といえる有様の
歴々
(
ありあり
)
と目前に現われ、しかも妾は禹の位置に立ちて、禹の言葉を口に
誦
(
しょう
)
し、竜をして
遂
(
つい
)
に
辟易
(
へきえき
)
せしめぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
私はこう云っている中にも、向うの銅板画の一枚を見るように、その部屋の有様が
歴々
(
ありあり
)
と眼の前へ浮んで来ます。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一人の女の人が短刀をふり下すときの表情まで、実に
歴々
(
ありあり
)
と見えるのよ。たしかに鬼の顔よ。ヤキモチの鬼の顔
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
そうして自己の心の動きや、業の変化は反対に、相手に決して悟られません。貴殿のようすを見ていると、貴殿の心の動き方が、拙者にはいちいち
歴々
(
ありあり
)
と見えます。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その座敷は庭に面していたので、夕闇の中に広い裏庭と、例の土蔵のはげ落ちた白壁の一部がぼんやり見えたが、庭にはやっぱり、無残に掘返したあとが
歴々
(
ありあり
)
と残っていた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その「わたし宮ですよ。」という、何とも言うに言えない句調が、私の心を溶かして了うようで、それを聞いていると、少し細長い笑窪の出来た、物を言う口元が
歴々
(
ありあり
)
と眼に見える。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
凸凹の途に足が
傷
(
いた
)
んでたまらない。見ると、脚下に遙か遠く、人家が立並んでゐる。薄曇の空は上から覆ひかゝるやうにしてゐるが、鐵色した塔の頂、白壁の家などが、
歴々
(
ありあり
)
目に入る。
夢
(旧字旧仮名)
/
吉江喬松
、
吉江孤雁
(著)
黙って座ってる女が
居
(
い
)
る、
鼠地
(
ねずみじ
)
の
縞物
(
しまもの
)
のお
召縮緬
(
めしちりめん
)
の着物の色合摸様まで
歴々
(
ありあり
)
と見えるのだ、がしかし今時分、こんなところへ女の来る道理がないから、不思議に思ってよく見ようとするが、奇妙に
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
重田さんの影が
消
(
き
)
ゆると、
安達君
(
あだちくん
)
の顔が
歴々
(
ありあり
)
と
主人
(
あるじ
)
の頭に現われた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その横に年の頃は十七八で君とか僕とか生意気な事をべらべら
喋舌
(
しゃべ
)
ってるのはこの近所の書生だろう。そのまた次に妙な
背中
(
せなか
)
が見える。尻の中から
寒竹
(
かんちく
)
を押し込んだように
背骨
(
せぼね
)
の節が
歴々
(
ありあり
)
と出ている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何も、
朦朧
(
もうろう
)
と
露
(
あらわ
)
れたって、
歴々
(
ありあり
)
と映ったって、高が
婦
(
おんな
)
じゃないか。婦の姿が見えたんだって言うじゃないか。何が、そんなに恐いものか。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒼
(
あお
)
いその顔には肉の
戦慄
(
せんりつ
)
が
歴々
(
ありあり
)
と見えた。
不図
(
ふと
)
、急に、辞儀をして、こうしてはいられぬという態度で、
此処
(
ここ
)
を出て行った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ことに今日は神尾主膳から仕掛けて行って、敵を引張り出そうとする形勢が
歴々
(
ありあり
)
と見えるから、能登守のために
密
(
ひそ
)
かに心配する者もありました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
マザ/\と見えている壱万円也と云う金額が、杉野や木下等の罪悪を、
歴々
(
ありあり
)
と語っているように、子爵には心苦しかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
突然、彼女の閉じた
瞼
(
まぶた
)
の裏へ、あの日の信之助の姿が
歴々
(
ありあり
)
と浮かんで来た。……別れた直ぐあとでも思い浮かべることの出来なかった信之助の姿が。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かつ隅から隅まで
万遍
(
まんべん
)
なく行渡った編輯上の努力の跡が
歴々
(
ありあり
)
として、一座の総帥たる貫録が自ずから現われていた。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
之が天の助と云う者か、此のお影で今迄蝋燭の光に見えなんだ深い深い塔の底の秘密が殆ど
歴々
(
ありあり
)
と余の目に見えた。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
私は今も
歴々
(
ありあり
)
と覚えてゐる。私は十二月六日まで水風呂へはいつた。もう東京の街にはサイパンからのB29が爆弾を落しはじめてゐたのである。寒い朝だつた。
わが戦争に対処せる工夫の数々
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
焼けて焦茶色になった秩父銘仙の綿入れを着て、堅く腕組みをしながら玄関を下りた時の心持は、吾れながら、自分の見下げ果てた
状態
(
ざま
)
が、
歴々
(
ありあり
)
と眼に映るようで、思い做しばかりではない
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
犯人がわからないばかりでなく、何の目的で選り抜きの美しい娘ばかり殺すのか、
皆暮
(
かいくれ
)
見当も付かないのです。そのうえ死体は、洗い落してはあるが、
歴々
(
ありあり
)
と全身に金箔を置いた跡があります。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
部屋は冷かな朝の空気に、残酷な位
歴々
(
ありあり
)
と、あらゆる物の輪廓を描いてゐた。古びた
卓
(
テエブル
)
、火の消えたランプ、それから一脚は床に倒れ、一脚は壁に向つてゐる椅子、——すべてが
昨夜
(
ゆうべ
)
の儘であつた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鰌
(
どじょう
)
か、
鯉
(
こい
)
か、
鮒
(
ふな
)
か、
鯰
(
なまず
)
か、と思うのが、二人とも立って不意に顔を見合わせた目に、
歴々
(
ありあり
)
と映ると思う、その隙もなかった。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よってこのたびの流鏑馬の催しに、功名をわが手に納めんとの下心より、一層、当家に対して、腹黒き計略が
歴々
(
ありあり
)
と見え透くようでござりまする。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
誰が呼ぶとなく、いつかしらそういう名が付いてしまったのだ……いまこの突傷を見ると、
歴々
(
ありあり
)
と彼の姿が見える。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
が、チラリと美奈子の顔を見た眼には美奈子の少女らしい優しい好意に対する感謝の情が、
歴々
(
ありあり
)
と動いていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
これを聞いた芳子の顔は
俄
(
にわ
)
かに
赧
(
あか
)
くなった。さも困ったという風が
歴々
(
ありあり
)
として顔と態度とに
顕
(
あら
)
われた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
炭の赤々と燃えてゐる大きな支那火鉢の模様も、飾り棚の花瓶の模様も、本箱の本の名も
歴々
(
ありあり
)
と頭に沁みて、恋の告白をするやうなとりのぼせた思ひがまつたくなかつた。
恋をしに行く(「女体」につゞく)
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
お浦が
夕衣
(
いぶにんぐどれす
)
を着けて居るとき余は其の草花の外囲いが
歴々
(
ありあり
)
と
存
(
のこ
)
って居るのを見た、殊に余のみではなく、お浦の知人中には折々之を見た人が有ろう、根西夫人なども確かに其の一人だ
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「その内是非一つ行って見てやろう。」という心が
歴々
(
ありあり
)
と見える。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
吻
(
ほっ
)
と吹く酒の香を、横
状
(
ざま
)
に
反
(
そ
)
らしたのは、
目前
(
めさき
)
に
歴々
(
ありあり
)
とするお京の
向合
(
むきあ
)
った面影に、心遣いをしたのである。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もしや他へ納い忘れはしなかったか、
箪笥
(
たんす
)
の中は? 手文庫は?——しかしどこからも金は出てこなかった。上り
框
(
がまち
)
へ来て、ふと気付く板敷に
歴々
(
ありあり
)
と残る草履の足跡
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「まあ、
酒場
(
バー
)
に、じゃ女給さんですか。」と、夫人の言葉には
歴々
(
ありあり
)
と、
嘲
(
あざけ
)
りと侮蔑とが強く響いた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
夏川が
宿酔
(
ふつかよい
)
の頭に先づ
歴々
(
ありあり
)
と思ひだしたのがその呟きで、もう十年若ければねえ……アヽ、もう遅い。女はさうつけたして呟いたやうな気がする。それは夏川の幻覚であらうか。
母の上京
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
遠く離れていても
歴々
(
ありあり
)
と読み取り得られるほどに鮮かに記されてあることです。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雲もない空に
歴々
(
ありあり
)
と眺めらるる、西洋館さえ、
青異人
(
あおいじん
)
、
赤異人
(
あかいじん
)
と呼んで色を鬼のように
称
(
とな
)
うるくらい、こんな
風
(
ふう
)
の男は
髯
(
ひげ
)
がなくても(
帽子被
(
シャッポかぶ
)
り)と言うと聞く。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると、私の眼の前の老女の姿は、
忽
(
たちま
)
ちに消えてしまって、
清長
(
きよなが
)
の美人画から抜け出して来たような、水もたるるような
妖艶
(
ようえん
)
な、町女房の姿が頭の中に
歴々
(
ありあり
)
と浮びました。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
十余年の御親友を失われた淋しさが
歴々
(
ありあり
)
と
窺
(
うかが
)
われまする、お側に仕えまする久之進、そのありさまをみるたびに苦しく、切なく、かようなとき出雲守様はいかが思召すか
粗忽評判記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ちやうど中村地平と真杉静枝が遊びにきて、そのとき真杉静枝が、蜘蛛が巣をかけたんぢやないかしら、と言つたので、私は
歴々
(
ありあり
)
と思ひだした。まさしく蜘蛛が巣をかけたのである。
いづこへ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
とお銀様が
慄
(
ふる
)
え上るその
頭髪
(
かみ
)
の上で、二つの蝶が食い合っていました。竜之助には、いよいよ
判然
(
はっきり
)
とその蝶が
透通
(
すきとお
)
るように見えるのであります。蝶の噛み合う歯の音まで
歴々
(
ありあり
)
と聞えるのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
真先
(
まっさき
)
に、布、紙を弁えず
飜
(
ひるがえ
)
した、旗の
面
(
おもて
)
に、何と、武州、
郡
(
こおり
)
の名、村の名、人の名——(ともに
憚
(
はばか
)
ると註してある)——
歴々
(
ありあり
)
と記したるが矢よりも早く飛過ぐる。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と美和子は、もう姉のために弁ずるよりも、いかにもけんだかな増上慢を、
歴々
(
ありあり
)
と顔に出している夫人に、突っかかって行く興奮に自ら酔うているように、止めどもなく、喰ってかかって行く。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
歴
常用漢字
小5
部首:⽌
14画
々
3画
“歴々”で始まる語句
歴々方
歴々銀鈎指下生