椎茸しいたけ)” の例文
烏賊いか椎茸しいたけ牛蒡ごぼう、凍り豆腐ぐらいを煮〆にしめにしておひらに盛るぐらいのもの。別に山独活やまうどのぬた。それに山家らしい干瓢かんぴょう味噌汁みそしる
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鍋焼なべやきを一つ頼んだ。熱い土鍋を両手ではさんで、かまぼこだの、ほうれん草だの、椎茸しいたけだのを一つ一つたのしみに喰べた。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
虫のいるようなのは新しくってもいけません。それに笠が開いたのもいけません。やっぱり椎茸しいたけと同じように笠の開かない肉の厚いのがよいのです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ここからは見えないが、今は赤松か何かの腐木が横たわっている筈だ。いずれあれから椎茸しいたけが生えて来るだろう。
庭の眺め (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「その椎茸しいたけみたような頭が気に入らねえんだ、尾上岩藤の出来損できそこねえみたようなのが癪に触ってたまらねえんだ」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十一時十分にヒルバを出発して山毛欅ぶなの大闊葉樹林の中に通じている、岩魚釣りの通路を辿たどって行くことになる、県の事業として椎茸しいたけを培養している所がある
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
「なにこれほど御馳走があればたくさんだ。——湯葉ゆばに、椎茸しいたけに、いもに、豆腐、いろいろあるじゃないか」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
がんもどきッて、ほら、種々いろんなものが入った油揚あぶらあげがあらあ、銀杏ぎんなんだの、椎茸しいたけだの、あれだ、あの中へ、え、さかなを入れてぜッこにするてえことあ不可いけねえのかなあ。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで押し方のくふうも無論肝要だが、それと同時にこれが材料に注意して、米だのさかなだの椎茸しいたけだの玉子焼きだの酢や砂糖などをそれぞれ精選しなければならぬ。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
藤吉郎は、毎日、商人あきんどが納品する鰹節かつおぶしむしくいを調べたり、椎茸しいたけ干瓢かんぴょうの記入などを、黙々とやっていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分はこの車夫に椎茸しいたけと云う名をつけた。それは影法師の形がいくらか似ていると思ったからである。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
戸数は九百ばかりなり。とある家に入りて昼餉ひるげたべけるにあつものの内にきのこあり。椎茸しいたけに似てかおりなく色薄し。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その先は折れ曲っているので玄関はどのくらい先にあるか判らない金持の邸の並木の欅五六本目のところでカーキ色の古ズボンを穿いた老人が乾した椎茸しいたけを裏返している。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「そうでござんすね。」と、母親は椎茸しいたけを丼で湯にけていながら、思案ぶかい目色めいろをした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お竹さんもおいで、お松さんも椎茸しいたけさんもねえちゃんも寄っといで。といやらしく言って
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
膳の上を見わたすに、かゆと汁と芋と鮭の酪乾少しと。温き飯の外は粥を喰ふが例なり。汁は「すまし」にて椎茸しいたけ蕪菜かぶらなの上に卵を一つ落しあり。菜は好きなれどこの種の卵は好まず。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
はも河豚ふぐ赤魚あかお、つばす、牡蠣かき、生うに、比目魚ひらめの縁側、赤貝のわたくじらの赤身、等々を始め、椎茸しいたけ松茸まつたけたけのこかきなどに迄及んだが、まぐろは虐待して余り用いず、小鰭こはだ、はしら、青柳あおやぎ
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
キンタケは黄、ギンタケは白、椎茸しいたけくらいの大きさで、落葉にかくれて一個所に群生している。部落の人はこれを塩漬にしておいて正月の料理用にする。ギンタケのみそ汁は山の珍だ。
山の秋 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
それは、しなびて古びた椎茸しいたけの茎の列そっくりに眺められた。
蒐集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
その人は多吉の主人筋に当たり、東京にも横浜にも店を持ち、海外へ東海道辺の茶、椎茸しいたけ、それから生糸等を輸出する賢易商であった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
最初先ず三島から豆相鉄道ずそうてつどうへ乗かえて修善寺しゅぜんじの温泉へったが修善寺名物の椎茸しいたけを沢山買って来た。しかるに椎茸の産地へ行って初めて驚いた事がある。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
朝飯には椎茸しいたけと卵を多く食べさせられ、正午ひる近い時分、浴室へ行って見ると、こんどは閑として人が無い。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ええ実はある所で椎茸しいたけを食いましてね」「何を食ったって?」「その、少し椎茸を食ったんで。椎茸のかさを前歯で噛み切ろうとしたらぼろりと歯が欠けましたよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の乗っていた車の車夫が檜笠ひのきがさを冠っていて、その影が地上に印しながら走って行くのを椎茸しいたけのようだと感じたと見えてその車夫を椎茸と命名したという話を書いた。
明治三十二年頃 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
まだ健在かと思うような老人だの、紅葉山もみじやまへご奉公して四十年にもなるという椎茸しいたけたぼの叔母だの、子供のえためいだの、世帯やつれした妹夫婦だの、なんだの、一家に集まって
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余の郷里にては饂飩うどん椎茸しいたけせり胡蘿蔔にんじん、焼あなご、くずし(蒲鉾かまぼこ)など入れたるをシツポクといふ。これも支那伝来の意であらう。めん類は総て支那から来たものと見えて皆漢音を用ゐて居る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
母の、手拭を巻いた小指の先きが、椎茸しいたけのように黒くなった。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
小豆を買い、お頭附きを買い、その他、椎茸しいたけ干瓢かんぴょうの類を買い込んで行ったことは間違いなくわかりましたけれども、どこの何者かどうしても分らないのです。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その中から出た汁で牛蒡人参糸蒟蒻椎茸しいたけ竹の子簾麩すだれぶなんぞの野菜を極く細かに刻んでよく煮ます。今度はその汁へ水を足して酒と醤油で味をつけて御飯を炊きます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「御話は違いますが——この御正月に椎茸しいたけを食べて前歯を二枚折ったそうじゃございませんか」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして、いつかどこかでごちそうになったときに出された吸い物の椎茸しいたけをかみ切った拍子にその前歯の一本が椎茸の茎の抵抗に負けてまん中からぽっきり折れてしまった。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
小芋こいも椎茸しいたけはすの根などのうま煮の付け合わせも客の膳に上った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なんでもかでもみんな癪に触るんだ、そのあかっちゃけた着物はそりゃ何だ、その椎茸しいたけみたような頭はそりゃ何だ、そんなものが第一、癪に触ってたまらねえや」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
別に椎茸しいたけ簾麩すだれぶとを極く細かく切って糸蒟蒻いとごんにゃくと一緒にお味淋やお醤油したじ美味おいしく煮ておきます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
わたくし早速さっそく先生のうちへ金を返しに行った。例の椎茸しいたけもついでに持って行った。ただ出すのは少し変だから、母がこれを差し上げてくれといいましたとわざわざ断って奥さんの前へ置いた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第十五 椎茸しいたけ飯 は味の良いもので、一つには椎茸の上等を使わなければいけません。伊豆の山で秋から寒中に出来る蝶花形ちょうはながたなら無類ですがしたものなら水へ漬けて軟かにします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ちゃんと世間並みの鳥目ちょうもくを払って、小豆と、お頭附きと、椎茸しいたけ干瓢かんぴょうの類を買って行かれた清らかなあまじゃげな——払ったお鳥目も、あとで木の葉にもなんにもなりゃせなんだがな
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「こんど東京へ行くときには椎茸しいたけでも持って行ってお上げ」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
椎茸しいたけ(乾燥) 一四・四九 一一・八五 一・六九 六七・五一 四・三七
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そこに今朝魚屋が章魚たこを持って来ましたから買っておきました。乾物かんぶつでは干瓢かんぴょう椎茸しいたけもあります。お豆腐は直ぐ近所で買えますし、そんなもののうちで何かとつお料理を教えて下さいませんか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
椎茸しいたけ飯 秋付録 米料理百種「日本料理の部」の「第十五 椎茸しいたけ飯」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)