明後日あさって)” の例文
紺屋こうやじゃあねえから明後日あさってとはわせねえよ。うち妓衆おいらんたちから三ちょうばかり来てるはずだ、もうとっくに出来てるだろう、大急ぎだ。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明後日あさっては朝の五時からですが、四時には開けて置きますよ。裏から来て下さい。四時半になると、又、別な馴染が入りますからね」
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
いいえ、まだ一度もないの。それだから何だか可笑しいのよ。じゃあと、——じゃこうして下さらない? 大村は明後日あさって表慶館ひょうけいかんへ画を
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わが国にて「紺屋の明後日あさって」と唱えきたるがごとく、「チリのマニアナ(明日)主義」といいて、すべて明日明日と延期する風あり。
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
えゝお茶を上げな……あなたにも此の度々たび/\御贔屓で呼んでおくれなすった事も有りますが、明後日あさってから美代吉はうちにいませんよ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
明日も、明後日あさっても、また首輪をかけられて、同じような日を送るのだ。そして遅かれ早かれ貧しい犬のように死んでゆかねばなるまい。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
が、それにしてもそう決まったら、もう一日だけ遊んでって下さいというわけで、中一日おいた明後日あさっての朝早く帰ることに決めました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
また、家中の侍で、平常へいぜい、巌流に師事している人々も、入り代り立ち代り、ここに詰めて、明後日あさっての十三日を待っているのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「気の毒なことに、門前で喰い止められて、泣く泣く帰ったそうですが、いずれ明後日あさっては処刑になる小三郎の、助命願いでしょうが——」
これが明日あす明後日あさってと待っていられることではないのだから、今一刻をも争うというところだからね。だが、どうも仕方がない。さようなら
旗や電燈が、ひのきの枝ややどり木などと、上手に取り合せられて装飾そうしょくされ、まだ七八人の人が、せっせと明後日あさって仕度したくをして居りました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なおも飯時めしどきに取りに来て貰っては困るとか、色々と口喧くちやかましく云った揚句、今日はいかんから明後日あさって頃来てみてくれ、などという家もあった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
職工長「うん、そうなんだ。企画委員のローリンソンもそういっていたぜ。用意は出来ているんだから、明後日あさってから決行だ!」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「お父様よりお使いが参り、明後日あさっては吉例の菊花の宴、二人うち揃って参るようにとのこと、ねえ参ろうではございませんか」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしバターを取るにはモー一日位置いてからの方がよいので、今朝の乳なら明日の朝クリームに取り、明後日あさっての朝バターに取るとします。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
今日明日きょうあすとみっちり刈れば明後日あさっては早じまいの刈り上げになる。刈り上げの祝いは何がよかろ、省作お前は無論餅だなア」
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「明日帰らなければ、明後日あさっての朝はきっと帰って来てよ。不断着だの、いろんなもの持って行かなくっちゃならないから。」
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
出されて馬道の氷屋へ住込しが七月四日の朝母より「親指は今日午後五時の汽車で横浜へ行き明後日あさってまで確かに帰らぬからきッとおいでまって居る」
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
明日あしたになるか明後日あさってになるか、ことにったら一週間も掛るか、まかり間違えば無期限に延ばしても差支さしつかえないとたかくくっていたせいかも知れない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水沢さんの継子つぎこさんが、金曜日の晩にわたくしの宅へおいでになりまして、明後日あさっての日曜日に湯河原ゆがわらへ行かないかと誘つて下すつたのでございます。
「まいりましょう、私は碁と聞くとたまらない、明日も明後日あさっても、気が向いたら、毎日でも来てお対手をしましょう」
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
兎も角も明後日あさってからお秀は局に出ることに話を極めてお富に約束したものの、忽ち衣類きものの事に思い当って当惑した。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
翌日は発足したいと思ったけれども明後日あさってすなわち十三日でないとその便宜を得られないということであったからそこで休んで居ることになったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
明後日あさってのあさ、ここへ、ヘルムショルツ先生の高弟が来ます。どうぞ、あなたの眼をふたつ貸してちょうだい。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
眼がう。隣歩きで全然すっかり力が脱けた。それにこのおッそろしい臭気は! 随分と土気色になったなア! ……これで明日あす明後日あさってとなったら——ええ思遣られる。
「そういうことでございますならば、よんどころございませんから、明後日あさってということにいたしましょう、明後日なら、キットよろしうございましょうね」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昨日も、今日も、明日も、明後日あさっても。彼等は戈を振うだろう。けれども、よく瞳を定めて凝と御覧なさい。
無題 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
昨日は女優、今日はウエイトレス、明日あすは女学生、明後日あさっては交換嬢と、到る処に手を握り締め涙を流して
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それじゃ明後日あさって切る。そのかわりきみも帰りたいなんていうな。うんといじめてやるからしんぼうしろ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それこそ紺屋の明後日あさってです。私はそんなばかばかしいことは信じません。いつだって同じことですよ。」
何これと言って考えることもない。ただ甘い夢想にふけっている。今日も、明日も、明後日あさっても勤めに出なくていいのだ、とそんなことを身体ぜんたいで感じている。
富籤 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「どうも色々ご苦労様でした。これから東京へ帰りがてら、明後日あさっての夜の手順を、相談いたしましょう」
白痴の知恵 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
明後日あさっての昼飯は何にしようと、始終そんなことばかり考えていながら、さてその食事に取りかかる前には、まず用心に丸薬をんで、それから牡蠣だの、蟹だの
え、それは霊岸島の宿屋ですが……こうと、明日は午前ひるまえ何だから……阿母さん、明日あした夕方か、それとも明後日あさってのお午過ぎには私が向うへ行きますからね、何とか返事を
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
今日の午前ひるまえに目を落したって、葬式とむらい明後日あさってだもんだで……それも紋を染めていたじゃ間に合いもすまいけれど、婚礼というじゃなし石無地こくむじでも用は十分足りるでね。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もう明日あす明後日あさってになったかと思うと、心が落ち着かず忙がしく、どこにもひとところにじっとしておられず夫人がいらいらとしている所へ、外から守がはいって来て
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
幸吉こうきちは、そのけむりて、明日あすも、明後日あさってもまたこのようにのぼることであろうとおもったのです。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
明後日あさってになれば愈々この不思議な都上海にも、亦、それは可成り僕の心を悲しくさせたことなのだが、マドレエヌ——六ヶ月の間僕の親切な女房であったフランス女にも
象牙の牌 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
そうそうは方図が無いと思ッてどうしても遣らなかッたらネ、不承々々に五十銭取ッてしまッてネ、それからまた今度は、明後日あさってお友達同志寄ッて飛鳥山あすかやま饂飩会うどんかいとかを……
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「ところが伯父さん、僕ぁもうすっかり真相を掴んじゃったんです。また明後日あさっての晩までにはすっかり事件を解決して、松川博士殺害の犯人も捕縛して見せるつもりですよ!」
幽霊屋敷の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
明日あすといい、明後日あさってといい、又明日といい明後日と云い、何の手筈がまだ調わぬ、かにの用意がまだ成らぬと、企を起してより延び延びの月日、人々の智慧才覚はもあろうが
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
でも明後日あさっては早くからきてちょうだい。日が暮れると待ってるわ。ちょうど九時にね、よくって、ああ、ほんとにいやね、日が長いのは。ねえ、九時が打つと私は庭に出てるわ。
明後日あさってまでに何とかめて了わなければならぬ、と、言っていたから、二日ばかりは其様そんな取留めもないことばかりを思っていたが、丁度その日になって、日本橋の辺を彷徨うろうろしながら
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「あした、八時から練習があるんですよ。明後日あさって放送だもんだから……」
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
吾家うちのおとっさんに買ってもらった大事な木の太刀たちを貸す、きょうも——あしたも——ずっと明後日あさってもあれを貸す、そう次郎が言いましたら、蓬莱屋の子はよっぽど借りたかったと見えて、うん
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
や過ぎさせたまわん明日あす明後日あさってはと鉛筆にて地図の上をたどり居参らせ候 ああ男に生まれしならば水兵ともなりて始終おそば離れずおつき申さんをなどあらぬ事まで心に浮かびわれとわが身を
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
明日あしたは土曜、明後日あさっては日曜だ。行田には今週は帰らんつもりだから、雨は降ったッてかまいやしない。君も、明日あした一日遊んで行くサ。めったに三人こうしていっしょになることはありゃしない」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「それごらんよ、明後日あさって一杯きりじゃないの。」
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「さうね。——明後日あさってにしない。」
水と砂 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「そんなら、明後日あさって、———」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)