-
トップ
>
-
持添
>
-
もちそ
按摩は
其仰向いて
打傾いた、
耳の
痒いのを
掻きさうな
手つきで、
右手に
持添へた
杖の
尖を、
輕く、コト/\コト/\と
彈きながら
鼠のぐたりとした
帽子を
被つて、
片手に
其の
杖、
右の
手首に、
赤玉の
一連の
數珠を
輪にかけたのに、
一つの
鐸を
持添へて、チリリリチリリリと、
大な
手を
振つて
鳴らし
あん、と口を
開いた中へ、紫玉は
止む事を得ず、手に
持添へつつ、釵の
脚を
挿入れた。
と
云つた
時、
其の
洋傘を
花籠の
手に
持添へて、トあらためて、
眞白な
腕を
擧げた。
と
出しながら、ふと
猶予つたのは、
手が
一つ、
自分の
他に、
柔かく
持添へて
居るやうだつたからである。——
否、
其の
人の
袖のしのばるゝ
友染の
袋さへ、
汽車の
中に
預けて
来たのに——
武士の
這奴の帯の
結目を
掴んで
引釣ると、
斉しく、
金剛杖に
持添へた
鎧櫃は、とてもの事に、
狸が出て、
棺桶を下げると言ふ、
古槐の天辺へ掛け置いて、
大井、天竜、
琵琶湖も、
瀬多も
麦稈帽を
鷲掴みに
持添へて、
膝までの
靴足袋に、
革紐を
堅くかゞつて、
赤靴で、
少々抜衣紋に
背筋を
膨らまして——
別れとなればお
互に、
峠の
岐路に
悄乎と
立つたのには——
汽車から
溢れて
旅客は
眉を
壓する
山又山に
眉を
蔽はれた
状に、
俯目に
棚の
荷を
探り
取つたが、
笛の
鳴る
時、
角形の
革鞄に
洋傘を
持添へると、
決然とした
態度で、つか/\と
下りた。
下り
際に、
顧みて
彼に
會釋した。