うた)” の例文
ゆかより引下しこぶしを上てすでうたんとなす此時近邊きんぺんの者先刻よりの聲高こゑだかを聞付何ことやらんと來りしが此體このていを見て周章あわて捕押とりおさへ種々靱負を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
悲しいとか情ないとかいうよりもっと強い混乱した感情にうたれます。不朽でない人間の運命に対するはげしい反抗をも覚えます。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何うしやがると云う様な具合に手ンンに奪い返す所から一人と大勢との入乱れと為り踏れるやらうたれるやら何時いつの間にかしんで仕舞ッたんだ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
先ず大概はわれわれ骨人が憧憬どうけいしてやまないところの、充分な腕を並べていて、その陽気のために、うらやましくも悩ましい気にうたれるのである。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
若者わかものおもはずはしました。るがうち波間なみまはなれ、大空おほぞら海原うなばらたへなるひかり滿ち、老人らうじん若者わかもの恍惚くわうこつとして此景色このけしきうたれてました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
自分の少年の頃の無智に対する腹立たしさでもあり、また支那の現状に対する大きい忿懣ふんまんでもある。三年霜にうたれた甘蔗、原配の蟋蟀、敗鼓皮丸、そんなものはなんだ。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「何新聞か知らんけれど、それは間の間違ぢやが。おれならそんな場合に出会うたて、唯々おめおめうたれちやをりやせん。何の先は二人でないかい、五人までは敵手あひてにしてくれるが」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
微妙いみじ姫神ひめがみ、余りの事の霊威にうたれて、一座皆ひざまずいて、東の空を拝みました。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「御老人」と篠田もソゾろ懐旧の感にうたれやしけん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
つまり外形容貌の美にうたれると共に、直ちに何の理由もなく其の人の思想知識、凡ての人格に對して深い敬慕の念にめられるのである。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
たゞおい益々ます/\其教育事業そのけういくじげふたのしみ、その單純たんじゆん質素しつそ生活せいくわつたのしんでらるゝのをてはぼく今更いまさら崇高すうかうねんうたれたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
見て清三郎にたのみし事手筈てはずちがひたりと思ひ又々玄柳方げんりうかたへ行きて相談さうだんすべしと其翌日そのよくじつ三人玄柳方へぞいたりけるかくて又清三郎は四日市にて長助に十分したゝかうたかほきず
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われわれの連中はただぼんやりとその深酷しんこくな感じにうたれて静かに眺めているのであった。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
微妙いみじ姫神ひめがみあまりのこと靈威れいゐうたれて、一座いちざみなひざまづいて、ひがしそらをがみました。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長吉はこの夕陽の光をば何という事なく悲しく感じながら、折々おりおり吹込む外の風が大きな波をうたせる引幕の上を眺めた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うた敏速さそくの寶澤は空泣そらなきしてさても私しの親父おや養子やうしにて母は私しが二ツの年病死びやうしし夫より祖母ばば養育やういく成長ひとゝなりしが十一歳の年に親父ちち故郷こきやうの熊本へ行とて祖母ばばに私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
長吉ちやうきちはこの夕陽ゆふひの光をばなんふ事なく悲しく感じながら、折々をり/\吹込ふきこむ外のかぜが大きな波をうたせる引幕ひきまくの上をながめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
要するに甚だ人間らしきワシントンやユウゴウの傳記にうたれたる結果に御座候。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「然し、先生。さう一概に斷定してしまふ事は出來ますまい。更に新しい何物かにうたれるまでは、いつでも最終らしく感じられるのが戀の常でせう。先生もさう云はれたぢやないですか。」
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)