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手古摺
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てこず
ふりがな文庫
“
手古摺
(
てこず
)” の例文
初めは何といっても首を振って
諾
(
き
)
かなかったが、剛情我慢の二葉亭も病には勝てず、散々
手古摺
(
てこず
)
らした挙句が
拠
(
よんどこ
)
ろなく納得したので
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
流石
(
さすが
)
の名法医学者若林鏡太郎博士も、この事件には少々
手古摺
(
てこず
)
ったと見えて、その調査書類の中に、こんな歎息を洩している。
曰
(
いわ
)
く……
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
机竜之助の音無しの
太刀先
(
たちさき
)
に向っては、いずれの剣客も
手古摺
(
てこず
)
らぬはない、竜之助はこれによって負けたことは一度もないのであります。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どうかするとそんな相手に彼女もときどき
手古摺
(
てこず
)
らされた事のあったのを、彼女はその間何んという事もなしに思い出していた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
今道心
中馬
(
ちゆうま
)
甚斎が
先日
(
こなひだ
)
京都の武徳殿で大暴れに暴れて、居合せた巡査八人を
手古摺
(
てこず
)
らせた事は、八日の本紙夕刊に詳しく出て居た通りだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
「
止
(
よ
)
すがいい、八兄哥。その娘の口を開かせるよりは、
田圃
(
たんぼ
)
の地蔵様を
口説
(
くど
)
く方が楽だぜ。俺はもうさんざん
手古摺
(
てこず
)
ったんだ」
銭形平次捕物控:121 土への愛着
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いや、御苦労さま。君達も疲れたろうが、僕もこの事件には全く
手古摺
(
てこず
)
ったよ、というのは、弁護士の佐伯田博士の処へまた鳩が来たんだ」
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
あれが妖怪狐狸の類ならば、こんな
下手
(
へた
)
な化け方はしないでしょうが、そこが人間の情けなさから頗る深酷に
手古摺
(
てこず
)
っているのでありました。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
駱駝の荷を揚げ卸し谷を渡す間に眠ってやろうとの算段で、沙上に転び廻りて荷を
覆
(
くつがえ
)
しすこぶる人を
手古摺
(
てこず
)
らせたとある。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
武藤泰子さんから来信、妙に抱き込んだような調子で、段々私が好きになって来た、
手古摺
(
てこず
)
るほど行くかもしれない、などと云って来る。あわれ。
日記:09 一九二三年(大正十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
実に
手古摺
(
てこず
)
らされたということをブランデス自身が書いている。そんな事で色々面倒なことがあった末、ようよう連れて行ってチャンと坐らせた。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
相手が大物だし、つかみようのない幸村という人物なので、
手古摺
(
てこず
)
っているといううわさもかねがね聞くところだし
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうも気に食わぬ女を抱いたものだと思ったら、帰り途にさえこんなに
手古摺
(
てこず
)
るわいと彼は
愚痴
(
ぐち
)
るのだった。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
どうしてもこの富士をはっきり焼きつけて
呉
(
く
)
れとねじ込んで、開業した許りの写真屋を
手古摺
(
てこず
)
らせたりした。
初旅の大菩薩連嶺
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
いくら女の方が早く大人になるとはいえ、二ツ違いの兄さんなら粋なのだけれど、二ツ違いの生徒では、
手古摺
(
てこず
)
らされるのは当り前だったかも知れませんね。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
「ウム、いかに連れ去ろうとしても、あの、左膳の落ちた穴のまわりにへばりついておって、どうしても離れようとせんのだ。だいぶ
手古摺
(
てこず
)
っておったようだが」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
少し気に向かなければ、なかなか
気随者
(
きずいもの
)
で、いい張ったとなると、誰が何んといっても我意を張り通すような有様で随分
手古摺
(
てこず
)
らされたような
塩梅
(
あんばい
)
でありました。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
電燈会社は、此杉林を
横断
(
おうだん
)
して更に電線を引きたがって居るが、松友の財産家が一万円出すと云う会社の
提議
(
ていぎ
)
を
刎
(
は
)
ねつけて応ぜぬので、
手古摺
(
てこず
)
って居るそうである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お大は姉と違つて、
幼
(
ちひさ
)
い時分から苦勞性の女であつたが、
糸道
(
いとみち
)
にかけては餘程鈍い方で、姉も毎日
手古摺
(
てこず
)
つて居た。其癖負けぬ氣の
氣象
(
きしやう
)
で、
加之
(
おまけに
)
喧嘩が
好
(
すき
)
と來て居る。
絶望
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
今でも時々あるようですが、むかしも寺々の捫著はたびたびで、寺社奉行を
手古摺
(
てこず
)
らせたものですよ
半七捕物帳:25 狐と僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
行田も酒井も「あれでは困る。」と云つて、その古い芝居に馴らされてしまつたそうして頭腦のない録子に
手古摺
(
てこず
)
つてゐたけれ共、録子はそんな事には平氣であつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
「学問があって大豪で、それで海賊というのだから、随分ととらえるには
手古摺
(
てこず
)
ったものだ」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それが黒田刑事にとって一つの難関だったのだ。刑事もこれには大分
手古摺
(
てこず
)
ったと
云
(
い
)
っているがね。が、マア苦心よろしくあった後、発見したのが、
皺
(
しわ
)
になった数枚の反故紙。
一枚の切符
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
祖父を
手古摺
(
てこず
)
らせた私の内気も、三年生になって級長を勤めるようになってからはそれほどでもなくなって、
凧揚
(
たこあ
)
げやとんぼ採りの仲間入りも一人前に出来るようになるばかりか
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
おれは小さい時には顏に青筋が出てゝ、
酷
(
ひど
)
い疳性で皆んなを
手古摺
(
てこず
)
らせたさうだよ。
炒粉
(
いりこ
)
が思ふやうに
茹
(
ゆだ
)
らないと云つて泣き入つたまゝ氣絶して、一時は助らないと思はれたさうだ。
母と子
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
さんざん
手古摺
(
てこず
)
った挙げ句にようやく眼をさまさせて、表のドアの鍵をかけさせた。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
越後の上杉景勝の国替のあとへ四十五万石(或は七十万石)の
大封
(
たいほう
)
を受けて入ったが、上杉に陰で糸を
牽
(
ひ
)
かれて起った
一揆
(
いっき
)
の為に大に
手古摺
(
てこず
)
らされて困った不成績を示した男である。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
殊
(
こと
)
に、暴れ者で、代々の守備隊長を
手古摺
(
てこず
)
らせていた黄中尉を、伍長の彼が、まるで犬かなんぞのように射殺したという話は、孫伍長を有名にすると同時に、新任の隊長を恐れさせた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
S島がナポレオンの存在に困るからとて、T島にやったのでは、同じような無気力者の寄合に違いないT島でもやはりこの少年に
手古摺
(
てこず
)
るに違いない。もっと他に何か方法は無いものか。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかるに後継内閣の組織は、前内閣の倒れた際における議会の多数的勢力というものが明瞭に纏まって居れば、容易に出来るが、しからずんば少なくとも一時は中々
手古摺
(
てこず
)
るものである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
毎日留守宅の妙子や女中達を
手古摺
(
てこず
)
らせる始末であったが、悦子の帰宅後は、彼女が学校から戻るのを待ちかねるようにして、残る
僅
(
わず
)
かな日数を、一日も欠かさず一緒に遊び暮していた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
俗にいわゆる色気である。これが
亢進
(
こうしん
)
して、心眼の
玲瓏
(
れいろう
)
を
蔽
(
おお
)
い、ために幾多の聖賢哲人をも、政治家立法者をも
手古摺
(
てこず
)
らせ、その判断を誤らせて、大切なる人生をも解釈し得ざらしめたのである。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
最初のうちしどろもどろな陳述で係官を
手古摺
(
てこず
)
らしたが、それでも段々落つくに従って、赤沢脳病院の現状からあのいまわしい雰囲気、院長の
荒
(
すさ
)
んだ日常、そして又三人の狂人の特長性癖等に就いて
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
妾というのならばどうしても
嫌
(
いや
)
だと、口入れを散々
手古摺
(
てこず
)
らした。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
銭金や米穀なんぞは眼中に置かねえ、七生までも手向いをしやがる、慾に目のねえのも
怖
(
こわ
)
いが、慾のねえ奴にも
手古摺
(
てこず
)
るもんですなあ、親方
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何んの
變哲
(
へんてつ
)
もない事件なのですが、その底に妙に煮え切らないものがあつて、平次をすつかり
手古摺
(
てこず
)
らせてしまつたのです。
銭形平次捕物控:250 母娘巡礼
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
未来派と活動写真が合同した訳だから面白くて堪まらないのだ。私はこの近代的な興行に共鳴してなかなか動かず父を
手古摺
(
てこず
)
らせたものである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
そうして町なかにある仁丹の看板をみつけては一人でそれを
指
(
さ
)
して「お父うちゃん」と言ってばかりいるので、母たちも随分
手古摺
(
てこず
)
ったらしい。……
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
せんだっての晩
手古摺
(
てこず
)
らされた
酒場
(
バー
)
の光景を思い出さざるを得なくなった彼は、
眉
(
まゆ
)
をひそめると共に、相手を利用するのは今だという事に気がついた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そいつが四尺近くもあろうかと思われる長い髪を色々な日本髪に結うのじゃそうなが、髪結いの手にかけると
髪毛
(
かみのけ
)
が余って
手古摺
(
てこず
)
るのでヤハリ自分で結うらしい
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「それをガツガツと食べ終りますと、
手真似
(
てまね
)
をして、もっとくれいと
強請
(
せが
)
みましたから、いかん、と首を振ってみせたら、さまざまなあだをいたして、いやはや
手古摺
(
てこず
)
りました」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その後に甚五郎に会った時に、彼はお安に
手古摺
(
てこず
)
った話をすると、甚五郎は笑った。
恨みの蠑螺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お客様を前にしたコンサートでさえこういうわがままなのですから、お客様の居ないところ、プライベートの生活は大変なわがままでまわりの人はずいぶん
手古摺
(
てこず
)
らされたものです。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
褒
(
ほ
)
められて子路は変な気がした。親孝行どころか、
嘘
(
うそ
)
ばかりついているような気がして仕方が無いからである。
我儘
(
わがまま
)
を云って親を
手古摺
(
てこず
)
らせていた
頃
(
ころ
)
の方が、どう考えても正直だったのだ。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
同研究室は、普通の民間探偵とは違い、
其筋
(
そのすじ
)
でも
手古摺
(
てこず
)
るほどの難事件でなければ、決して手を染めようとはしなかった。
所謂
(
いわゆる
)
「迷宮入り」の事件こそ、同研究室の最も歓迎する研究題目であった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
各男装女装して事を行えばその犯罪夥しく社会動揺少なからず。仏国のデオンごとき男子女装して常に外交や国事探偵に預かり、
死尸
(
しかばね
)
を検するまで男女いずれと別らず、大いに諸邦を
手古摺
(
てこず
)
らせた。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
松本良順など
手古摺
(
てこず
)
って居た、と云った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「止すが宜い、八兄哥。その娘の口を開かせるよりは、田圃の地藏樣を
口説
(
くど
)
く方が樂だぜ。俺はもう散々
手古摺
(
てこず
)
つたんだ」
銭形平次捕物控:121 土への愛著
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
八百屋
(
やおや
)
の女房が自転車に乗って走ったらはでな仕事となるし、百号を
手古摺
(
てこず
)
ってナイフで破ったといえばはでな事をしたと感心してもいいのである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
けれどもこういう場合に、大丈夫だと思ってつい
笑談
(
じょうだん
)
に押すと、押したこっちがかえって
手古摺
(
てこず
)
らせられるくらいの事は、彼に困難な想像ではなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
古
常用漢字
小2
部首:⼝
5画
摺
漢検準1級
部首:⼿
14画
“手古”で始まる語句
手古
手古舞
手古奈
手古擦
手古林
手古盛
手古舞姿