悪者わるもの)” の例文
わたしは、悪者わるものが、あねおとうとをどんなめにあわせるだろうとおもうと、かわいそうになって、ついそれがたくて、あめりのあとについていきました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わしを殺そうとした悪者わるものの一派が、ここへやって来るのだ。あんたの姿を見れば、あんたにも危害きがいを加えるだろう。よくおぼえているがいい。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その二つがどうかしてぶつかり合うと、いつでもほんとうの親切のほうが悪者わるもの扱いにされたり、邪魔者に見られるんだからおもしろうござんすわ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
路傍にねむっている男の連尺へ片手を入れて、その荷物を自分の物だと、言いがかりをつける悪者わるものの話などもある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平人にても科人とがにんにても、悪者わるもの一人差止め、岡引と名付け、手引致させ、其者の罪を免じ、ほか科人とがにんを召捕候。
放免考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
しかし、おかみさんは、一週間しゅうかんのけいやくをむすんでしまったんだ。いまさら、あいつがどんな悪者わるものだったとしても、一週間のあいだは追いだすことはできないんだ。
「うん、悪者わるものは、よくこれを使うんだよ。あの中へ、かくれていれば、だれも気がつかないからね。きっと、ぼくらに尾行されていることを知って、かくれたんだよ」
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
悪者わるものに追かけられた者であろうか、それとも、親や良人おっとに大事なことでもあって、走っているものであろうか、聞いたうえで都合によっては、この船で送ってやってもいい
倩娘 (新字新仮名) / 陳玄祐(著)
食が少しもいきませんから、流石さすが悪者わるものでも子を思う心は同じ事で、心配して居ります所へ。
「おれは山城やましろでおかみのししをっているししかいだ」とその悪者わるものの老人は言いました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
おどろいてはいけません。わたしはけっしてあやしいものではありません。大ぜいの悪者わるものわれて、こんなにけがをしたのです。どうぞみずを一ぱいませてください。のどがかわいて、くるしくってたまりません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ひどい悪者わるもので通っているから——こんな時には」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
籠彦 ちえッ俺ばかり悪者わるものにするなよ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
むかしあるおひめさまが、悪者わるもののためにさらわれていって、おきしまで、一しょうひとりさびしくことだんじておくると、んでから、そのたましいがうそになったというのだよ。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、警部さん、こっちです、こっちです。悪者わるものは屋根のうえから逃げていきます」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぼくを悪者わるものとでも思ったのか、いきなりポチが走って来て、ほえながら飛びつこうとしたが、すぐぼくだと知れると、ぼくの前になったりあとになったりして、門の所まで追っかけて来た。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
祖五郎は前席ぜんせきに述べました通り、春部梅三郎を親のかたきと思い詰めた疑いが晴れたのみならず、悪者わるものの密書の意味で、ぼお家を押領おうりょうするものが有るに相違ないと分り、わたくしの遺恨どころでない
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ひろ世間せけんは、だれ一人ひとりとして、このおとこ悪者わるものだといってにくみ、おそれ、きらわないものがありません。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お年二十二の時に悪者わるもの斬殺きりころしてちっとも動ぜぬ剛気の胆力たんりょくでございましたれば、お年を取るにしたがい、益々ます/\智慧ちえが進みましたが、そののち御親父ごしんぷ様には亡くなられ、平太郎様には御家督ごかとくを御相続あそばし
つけています。私の姿、おそろしいです。君がにげようとしたこと、むりではありません。しかし、私、悪者わるものではありません。不幸にして、悪人のためにとらわれ、ここに永い間つながれているのです
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしこころで、これはきっと悪者わるものどもの巣窟そうくつであるとかんがえました。そして、このあいださなければならぬとおもいました。わたしは、よくそのときのことをおぼえています。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
右にも左にも山がそびえている。谷底に三人の異様な風をした男が一人の男をつれて来て、両手を縛って、荒莚あらむしろの上に坐らせて殺そうとしている。三人の悪者わるもの眼球めだまは光っていた。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、おじいさんがいっていときますと、あおい、あおい、海原うなばらえて、おそろしい姿すがたをした悪者わるものが、まつかげかくれて、かなたからあるいてくる二人ふたりのようすをうかがっていました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
光治こうじきゅうにも、やはり木島きじまとか梅沢うめざわとか小山こやまとかいう乱暴らんぼうのいじ悪者わるものがいて、いつもかれらはいっしょになって、自分じぶんらのいうことにしたがわないものをいじめたり、かせたりするのでありました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)