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悉皆
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しっかい
ふりがな文庫
“
悉皆
(
しっかい
)” の例文
しかるに
悉皆
(
しっかい
)
成就の暁、用人頭の為右衛門普請諸入用諸雑費一切しめくくり、
手脱
(
てぬか
)
ることなく決算したるになお大金の
剰
(
あま
)
れるあり。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
閨
(
ねや
)
むつみの頃をはかって室を襲い、家人をみな縛りあげた上、財宝はもちろん、男女の衣裳まで
悉皆
(
しっかい
)
、車につんで持ち去ってしまった。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そう思い到ると、わたくしはさらでだに「どうでもいゝや」という近頃の身の倦怠の残りの支えを
悉皆
(
しっかい
)
取り外ずしてしまいました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これを
錬
(
きた
)
え直して造った新しい鋭利なメスで、数千年来人間の脳の中にへばり付いていたいわゆる常識的な時空の観念を
悉皆
(
しっかい
)
削り取った。
アインシュタイン
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
このとおり調べは
悉皆
(
しっかい
)
つきました。たどるべき手がかりの道も二つござる。これなる判じ
文
(
ぶみ
)
を頼りに女の足取りをされてもよい。
右門捕物帖:30 闇男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
▼ もっと見る
民権論者とて
悉皆
(
しっかい
)
老成人に非ず。あるいは
白面
(
はくめん
)
の書生もあらん、あるいは血気の少年もあらん。その
成行
(
なりゆき
)
決して安心すべからず。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
悉皆
(
しっかい
)
焼印の御かめのごとく作り得たならばますます神の全能を表明し得るもので、同時に
今日
(
こんにち
)
のごとく勝手次第な顔を
天日
(
てんぴ
)
に
曝
(
さ
)
らさして
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「其はまた何といふわけでござらうの。」と
澄
(
すま
)
して、例の糸を
繰
(
く
)
る、五体は
悉皆
(
しっかい
)
、車の仕かけで、人形の動くやう、媼は
少頃
(
しばらく
)
も手を休めず。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ときどき唯フンフンと鼻で受け答えするばかりで、こちらのいうことが
悉皆
(
しっかい
)
頭に入ったかどうか、甚だ心もとない思いだった。
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
見れば
前
(
さき
)
の関白様(兼良男
教房
(
のりふさ
)
)をはじめ、御一統には
悉皆
(
しっかい
)
お身仕度を調えて、お
廂
(
ひさし
)
の間にお出ましになっておられます。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
その他すべて公衆に係れる事をも
悉皆
(
しっかい
)
人民に委托してけっして政府をしてこれらの事に関せしめざるを良善となす
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
人のために災難に
罹
(
かか
)
って、持ってた物を
悉皆
(
しっかい
)
取られても足りまへんので、この子にとうとうこんなところへ出てもらわんならんようになってしまいました
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そこを
藪睨
(
やぶにらみ
)
に睨んで、ブラントを諷刺だとさえ云ったものがある。実はイブセンは大真面目である。大真面目で向上の一路を示している。
悉皆
(
しっかい
)
か絶無か。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
木曽城中一切のことが、彼女の支配下にあって、人を活かそうと殺そうと
悉皆
(
しっかい
)
彼女の自由であった。しかし彼女は一思いに義明を殺そうとはしなかった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
数旬を
経
(
へ
)
て
病
(
やまい
)
癒
(
いえ
)
て
退院
(
たいいん
)
せんとする時、その諸費を
払
(
はら
)
わんとせしに
院吏
(
いんり
)
いう、君の
諸入費
(
しょにゅうひ
)
は
悉皆
(
しっかい
)
福沢氏より
払
(
はら
)
い
渡
(
わた
)
されたれば、もはやその事に及ばずとなり。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
一つ
吉原
(
よしわら
)
へ
這入
(
はい
)
って行って売って見ようと、非常門から京町へ這入ると、一丁目二丁目で五、六本売り、江戸町の方へ行くまでに
悉皆
(
しっかい
)
売り尽くしてしまいました。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
国民共同の力に依るに非ずんば為し能わぬのである。ところが多数の人を
悉皆
(
しっかい
)
賢者にする、悉皆物識りにするということは不可能である。ここに指導者が必要になる。
始業式に臨みて
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
こんな言い方は
胡麻化
(
ごまか
)
しであって
悉皆
(
しっかい
)
の表現がおよばないようだが、全くそれはすぐれた
綺倆
(
きりょう
)
をもった女の人に、その類似をもとめてみると楽に現わせるものに思えた
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その結果、明治以降の大学の俗学たちの日本芸術の血統上の意見の
悉皆
(
しっかい
)
を否定すべき見解にたどりつきつつあります。君はいつも筆の先を
尖
(
と
)
がらせてものかくでしょう。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そうしてついに用意した紙や、銅版等
悉皆
(
しっかい
)
戦災をうけて
灰燼
(
かいじん
)
に帰したのでついに昭和二十六年に一旦中止するに至った。しかし一、二年のうちに再起したい念願である。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
悉皆
(
しっかい
)
電気の在るありて各自孤陰〈(ネガチブ)〉、独陽〈(ポシチブ)〉の別なきことなし。
化学改革の大略
(新字新仮名)
/
清水卯三郎
(著)
かくて妾は爆発物の原料たる薬品
悉皆
(
しっかい
)
を磯山の手より受け取り、
支那鞄
(
しなかばん
)
に入れて普通の手荷物の如くに装い、始終
傍
(
かたわ
)
らに置きて、ある時はこれを枕に、
仮寝
(
うたたね
)
の夢を
貪
(
むさぼ
)
りたりしが
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
末の松山浪越さじとの
誓文
(
せいもん
)
も
悉皆
(
しっかい
)
鼻の端の嘘言一時の戯ならんとせんに、末に至って外に仔細もなけれども、只親仁の不承知より手に手を執って淵川に身を沈むるという段に至り
小説総論
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
われらが闇を闇として安んずることができると
誣
(
し
)
うるのはきっとみずから欺いているのである。われらはその本性上光を愛するものである。
悉皆
(
しっかい
)
のものみな仏性を帯びているのに相違ない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
たとえそこに一銭の金でも蓄えてありましたならば、私は
生命
(
いのち
)
を取られても苦しいとは申しませぬ……こう言いまして、私は琵琶を下へ置いて、上なる
衣
(
ころも
)
から
悉皆
(
しっかい
)
脱ぎ去って、裸になって
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
然り余は今は自己の善行に
憑
(
よ
)
らずして十字架上に現われたる神の小羊の贖罪に頼めり、この信仰こそ余が神の子供たるの証拠な
り
(
ママ
)
、キリストを十字に附けしものは
悉皆
(
しっかい
)
悪人無神論者なりしか
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
鳶口
(
とびぐち
)
、大釘など、役にたつものがいろいろあったので、それも
悉皆
(
しっかい
)
取りおさめ、船板は釘からはずして、入江の岸に
井桁
(
いげた
)
に積みあげておいたが、急に高波が来て、跡形もなく
浚
(
さら
)
って行ってしまった。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
当区内の
鵞口瘡
(
がこうそう
)
は
此
(
この
)
六日を
以
(
もっ
)
て
悉皆
(
しっかい
)
主治したとの話をした
牛舎の日記
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「ブレーキを
悉皆
(
しっかい
)
かけてくれ。」
月世界競争探検
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
(一切隠匿。
悉皆
(
しっかい
)
審明。)
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
二人が言は
悉皆
(
しっかい
)
信ずべきか
何様
(
どう
)
かは疑わしかったろう。然し氏郷は証拠とすべきところの物を取って、且二人を収容して生証拠とした。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
悉皆
(
しっかい
)
、護送車に押し込まれ、あるいは馬の背にひっくくられ、暗い夜道を、やがてまっ赤な
松明
(
たいまつ
)
が洛中へむかって連れて行った。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三重吉はどこで買ったか、
七子
(
ななこ
)
の
三
(
み
)
つ
折
(
おれ
)
の紙入を懐中していて、人の金でも自分の金でも
悉皆
(
しっかい
)
この紙入の中に入れる癖がある。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
もとこの国の人民、主客の二様に分かれ、主人たる者は千人の智者にて、よきように国を支配し、その余の者は
悉皆
(
しっかい
)
何も知らざる客分なり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
逸作は身体を揺り上げながら笑っている間に画家らしく、雛妓の顔かたちを
悉皆
(
しっかい
)
観察して取ったらしく、わたくしに向って
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
見れば
前
(
さき
)
の関白様(兼良男
教房
(
のりふさ
)
)をはじめ、御一統には
悉皆
(
しっかい
)
お身仕度を調へて、お
廂
(
ひさし
)
の間にお出ましになつてをられます。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
「むっつり右門の生地を見せてやらあ。ちっと伝法でいくぜ。ネタは
悉皆
(
しっかい
)
あがったんだ。すっぱりどろを吐きなよ!」
右門捕物帖:29 開運女人地蔵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
世界の人口
悉皆
(
しっかい
)
でもわずかに二十億に足らずだから、先ず同じ人はないと見てよかろう。今に指形を印に親子の再会などという新聞種が出来るかも知れぬ。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
得三
様
(
さん
)
、あんまりでございます。「下枝
様
(
さん
)
、
貴嬢
(
あなた
)
も余り強情でございます。それが
嫌否
(
いや
)
なら
悉皆
(
しっかい
)
財産を
我
(
おれ
)
に渡して、そうして⦅得三
様
(
さん
)
、
貴下
(
あなた
)
は可愛いねえ。 ...
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そいつは少し変じゃないか。両国橋の小屋者なら、とうに
悉皆
(
しっかい
)
洗ってしまった筈だ」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「お兄さんの家と、
悉皆
(
しっかい
)
の家財道具を売り払ったお金ですよ。あなたは、近所の者で
頒
(
わ
)
けてくれと仰っしゃいましたけれど」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然りといえども、その賞罰と言い、恩威といい、万民といい、太平というも、
悉皆
(
しっかい
)
一国内の事なり、一人あるいは数人の意に成りたるものなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
民の迷惑も一方ならず、一条大宮裏向いの酒屋、土倉、小家、民屋はあまさず焼亡いたし、また村雲の橋の北と西とが
悉皆
(
しっかい
)
焼け滅んだとのことでございます。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
ちょっと例をあげてみると、教師からある種の質問を受けた時、
悉皆
(
しっかい
)
頭脳
(
あたま
)
に記憶してある事がらでも、どうもその質問に応じて、容易に返答ができぬ場合がある。
わが中学時代の勉強法
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
大連を立つとき、手荷物を
悉皆
(
しっかい
)
革鞄
(
かばん
)
の中へ詰め込んでしまって、さあ大丈夫だと立ち上った時、ふと気がついて見ると、化粧台の鏡の下に、細長い紙包があった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
四粒五粒と飲んで行くうちに、
悉皆
(
しっかい
)
我慢が出来なくなる。さて一袋飲んだとする、この世がかの世か、かの世がこの世か、見境いのないことになり、うっちゃって置けば鼻血が出る。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その言一句といえども
忽
(
ゆるがせ
)
にせず、一挙手一投足といえども謹んで、二十七歳の今日まで、
旭
(
あさひ
)
の昇るがごとくに博し得た名誉とを、
悉皆
(
しっかい
)
神月に捧げて、その妻となったのを、恩だというんなら
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「よし、それにて
悉皆
(
しっかい
)
謎は解けた。——者共ッ、もう遠慮は要らぬぞ。これなる眉間傷の接待所望の者は束になってかかって参れッ。——来ぬかッ。笑止よ
喃
(
のう
)
。独眼竜将軍政宗公がお手がけの城下じゃ。ひとり二人は人がましい奴があろう。早う参れッ」
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「先ごろ、
京都
(
みやこ
)
へのぼられた
真仏
(
しんぶつ
)
御房が、勅額をいただいて参られるころには、伽藍の
普請
(
ふしん
)
も、
悉皆
(
しっかい
)
、
成就
(
じょうじゅ
)
いたしましょう」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そもそも前にもいえる如く、余輩の所見とて必ずしも天下の父母をして
悉皆
(
しっかい
)
自らその子を教えしめんとするにあらず。
教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
“悉皆”の意味
《形容動詞》
悉皆(しっかい)
残すところ無く、すっかり、ことごとく。
(出典:Wiktionary)
悉
漢検準1級
部首:⼼
11画
皆
常用漢字
中学
部首:⽩
9画
“悉皆”で始まる語句
悉皆屋
悉皆成仏
悉皆浄尽