御手おて)” の例文
「それですから、ふっと、その格子を覗きました時は、貴方の御手おての御薬の錫をば、あの、螢をおつかまえなすった、と見ましたんですよ。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしやう不運ふうんはゝそだつより繼母御まゝはゝごなり御手おてかけなりかなふたひとそだてゝもらふたら、すこしは父御てゝご可愛かわゆがつて後々のち/\あのためにもなりませう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おまへもならば、将軍様せうぐんさま御手おてにとまつて、むかしは、富士ふじ巻狩まきがりなぞしたものだが、いまぢやふくろう一所いつしよにこんなところへか※んでるのはつらいだろうの。
本尊の阿弥陀様の御顔おかほは暗くて拝め無い、たヾ招喚せうくわんかたち為給したまふ右の御手おてのみが金色こんじきうすひかりしめし給うて居る。貢さんは内陣を出て四畳半の自分の部屋にはいつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
それが静かな潮風しおかぜに、法衣ころもの裾を吹かせながら、浪打際なみうちぎわを独り御出でになる、——見れば御手おてには何と云うのか、笹の枝に貫いた、小さい魚を下げていらっしゃいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御手おてとらせ玉ひ御覽ごらん有るに全くの若君わかぎみには寶永三酉年三月十五日御誕生ごたんじやうにてすぐ御早世ごさうせい澤の井も其明方あけがたに同じく相果あひはて平澤村光照寺へはうむり右法名ほふみやう共にうつし有て且天一坊は原田嘉傳次が子にして幼名えうみやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御自分ごじぶん御手おて御養育ごよういくはできなかったともうすことでございました。
一 十七はちやうすひやけ御手おてにもぢをすやくまわしや御庭かゝやく
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
御手おてを、……」
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
すぢのなきわからずやをおほせいだされ、あしもとからとりつやうにおきたてなさるには大閉口おほへいこうに候、此中このぢうよりしきり貴君樣あなたさま御手おてもとへおせなさりたく、一日もはや家督相續かとくさうぞくあそばさせ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちしもの此文このふみにはなん文言もんごんどういふふうきてるにや表書おもてがきの常盤木ときわぎのきみまゐるとは無情つれなきひとへといふこと岩間いはま清水しみづ心細こゝろぼそげにはたまへどさても/\御手おてのうるはしさお姿すがたは申すもさらなり御心おこゝろだてとひお學問がくもんどころなき御方おかたさまにおもはれてやとはよもやおほせられまじ深山育みやまそだちのとしてくらものになるこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)