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媚態
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びたい
ふりがな文庫
“
媚態
(
びたい
)” の例文
この歌は、額田王が皇太子大海人皇子にむかい、対詠的にいっているので、濃やかな情緒に伴う、甘美な
媚態
(
びたい
)
をも感じ得るのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
突襟
(
つきえり
)
のうしろ口になり、頸の附根を真っ白く富士山形に覗かせて誇張した
媚態
(
びたい
)
を示す物々しさに較べて、帯の下の腰つきから裾は
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
聊
(
いささ
)
か
怨
(
うら
)
めしそうな態度にも見えたが、しかし私はソレを彼女独特の無邪気な
媚態
(
びたい
)
の一種と解釈していたので格別不思議に思わなかった。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
わざとする
媚態
(
びたい
)
があるというが、それは、多くのものに、よろこばせたい優しみを、とる方がそうとりちがえたのではないか。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そうしてまだ粉飾や
媚態
(
びたい
)
によって自然を
隠蔽
(
いんぺい
)
しない
生地
(
きじ
)
の
相貌
(
そうぼう
)
の収集され展観されている場所にしくものはないようである。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
しかしこの
黄文炳
(
こうぶんぺい
)
の評判はすこぶるよくない。多少の学をはなにかけ、下の者にはふんぞり返り、上には
媚態
(
びたい
)
おくめんなしという型の男である。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
周囲は黒い女ばかりの所へ、マルガリットは白い中でも美人である。要求と
媚態
(
びたい
)
に、みな争って金を借すようになった。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
瑠璃子の処女の
如
(
ごと
)
く
慎
(
つつま
)
しく
娼婦
(
しょうふ
)
の如く大胆な
媚態
(
びたい
)
に、心を奪われてしまった勝平は、自分の答が
何
(
ど
)
う云うことを約束しているかも考えずに答えた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
媚態
(
びたい
)
もなく虚栄心もない善良な少女で、クリストフがやって来たころまでは、自分が醜いということに気づきもせず、それを気にしてもいなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「
媚態
(
びたい
)
」といい、「
意気地
(
いきじ
)
」といい、「
諦
(
あきら
)
め」といい、これらの概念は「いき」の部分ではなくて契機に過ぎない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
これなん
當時
(
たうじ
)
の
國色
(
こくしよく
)
、
大將軍梁冀
(
たいしやうぐんりやうき
)
が
妻
(
つま
)
、
孫壽夫人
(
そんじゆふじん
)
一流
(
いちりう
)
の
媚態
(
びたい
)
より
出
(
い
)
でて、
天下
(
てんか
)
に
洽
(
あまね
)
く、
狹土
(
けふど
)
邊鄙
(
へんぴ
)
に
及
(
およ
)
びたる
也
(
なり
)
。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
翌る朝の
辰刻半
(
いつつはん
)
(九時)頃、その時はもうお専は、すっかり元気を取戻し、日頃の
媚態
(
びたい
)
へ輪をかけたような表情で、事細かに昨夜の一
埒
(
らつ
)
を話してくれました。
銭形平次捕物控:244 凧の糸目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その容姿に
何処
(
どこ
)
ということなく妙になまめいた
媚態
(
びたい
)
のあったのを子供心に私は感づいていて、その人を自分の母だと思うことが何んとなく気恥しかったのであろう。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
可憐
(
かれん
)
でおおように見えながら
媚態
(
びたい
)
の備わったのが彼女である、宮のお相手には全く似合わしいものであるから、すべて今からお譲りしてしまいたい気も薫はしたが
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そういう場合の彼女の
媚態
(
びたい
)
が、常よりも一層神経的でもあり
煽情的
(
せんじょうてき
)
でもあって、嫉妬と混ざり合った憎悪と愛着の念が、彼を一種の不健康な慾情に駆り立てたからで
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
無思慮。ひとり合点。意識せぬ冷酷。無恥厚顔。
吝嗇
(
りんしょく
)
。打算。相手かまわぬ
媚態
(
びたい
)
。ばかな
自惚
(
うぬぼ
)
れ。その他、女性のあらゆる悪徳を心得ているつもりでいたのであります。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は涙ぐみて身をふるわせたり。その見上げたる
目
(
まみ
)
には、人に
否
(
いな
)
とはいわせぬ
媚態
(
びたい
)
あり。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ぼくは、びっくり敗亡、飛ぶようにして自分の船室に逃げ帰りましたが、内田さんの小首を
傾
(
かし
)
げた横坐りの姿は、
可愛
(
かわい
)
い
猫
(
ねこ
)
のような
魅力
(
みりょく
)
と
媚態
(
びたい
)
に
溢
(
あふ
)
れていて、ながく心に残りました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
沼南の味も
率気
(
そっけ
)
もない
実
(
み
)
なし
汁
(
じる
)
のような政治論には余り感服しなかった上に、
其処此処
(
そこここ
)
で見掛けた夫人の顰蹙すべき娼婦的
媚態
(
びたい
)
が妨げをして、沼南に対してもまた余りイイ感じを持たないで
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
岡本の
媚態
(
びたい
)
のこと。どうしてこんな風になるのだろう。とても苦しい。
戯作者文学論:――平野謙へ・手紙に代えて――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
媚態
(
びたい
)
をせよとはいわぬが、好きなひとの前では、おのずから媚態をなし、声もやさしくなるものだ。料理においても、吸いもの一つ作っても、真心さえあれば水くさくともいいというものではない。
筆にも口にもつくす
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
もし慈悲と救いをあからさまに意識し、おまえ達をあわれみ導いてやるぞと云った思いが
微塵
(
みじん
)
でもあったならばどうか。表情は
忽
(
たちま
)
ち誇示的になるか教説的になるか、さもなくば
媚態
(
びたい
)
と化すであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
ゆれこぼれんばかりの
媚態
(
びたい
)
を作つてうなづくのであつた。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
貴族的な義務からくる
媚態
(
びたい
)
をおびて。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
命松丸がカユ
碗
(
わん
)
を下において
咳
(
せ
)
き込むと、雀は、彼の肩から兼好の肩へピラと移って、餌をネダるような
媚態
(
びたい
)
を作る。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女が彼女のサロンで多くの異性に取囲まれながら、あの悩ましき
媚態
(
びたい
)
を惜しげもなく、示しているかと思うと、自分の心は、夜の如く暗くなってしまう。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
菱屋が沒落してから三年、江戸を外にして放浪して歩いて、艱難と貧苦とが、この女から
大店
(
おほだな
)
の娘らしい上品さを奪つて、
媚態
(
びたい
)
と下品さだけを殘したのでせう。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
むしろ近付いたら却って興醒めのしそうな懸念もある遠見のよさそうな
媚態
(
びたい
)
がこの山には少しあった。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「旅ゆく」はいよいよ京へお帰りになることで、名残を惜しむのである。情緒が
纏綿
(
てんめん
)
としているのは、必ずしも職業的にのみこの
媚態
(
びたい
)
を示すのではなかったであろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
近松秋江
(
ちかまつしゅうこう
)
の『意気なこと』という短篇小説は「女を囲う」ことに関している。そうして異性間の尋常ならざる交渉は
媚態
(
びたい
)
の皆無を前提としては成立を想像することができない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
親戚
(
しんせき
)
の
恃
(
たの
)
むべきものもない媼は、
兼
(
かね
)
て棺材まで準備していたので、玄機は送葬の事を計らって遣った。その跡へ
緑翹
(
りょくぎょう
)
と云う十八歳の婢が来た。顔は美しくはないが、
聡慧
(
そうけい
)
で
媚態
(
びたい
)
があった。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして、その惧れも消えたので、近来はまたそろそろ、高氏へ
媚態
(
びたい
)
を呈して来ているものと、右馬介はにらんでいる。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女が彼女のサロンで多くの異性に取囲まれながら、あの悩ましき
媚態
(
びたい
)
を惜しげもなく、示しているかと思うと、自分の心は、夜の如く暗くなってしまう。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
フランクの音楽が地味で、知的で、無用の
媚態
(
びたい
)
を持たなかったために、一般人は言うまでもなく、当時の楽壇人も、これを理解するに至らなかったのであろう。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
真
(
ほん
)
ものゝ植物以上に生々と浮き出てゐる草花が染付けられてゐる鉄
辰砂
(
しんしゃ
)
の水差や、
掌
(
てのひら
)
の中に握り隠せるほどの大きさの中に、恋も、嘆きも、男女の
媚態
(
びたい
)
も大まかに現はれてゐる
芥子
(
けし
)
人形や
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
この際、長く引いて発音した部分と、急に言い切った部分とに、言葉のリズムの上の二元的対立が存在し、かつ、この二元的対立が「いき」のうちの
媚態
(
びたい
)
の二元性の客観的表現と解される。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
野中にみえる一本の
喬木
(
きょうぼく
)
の根へ、百は、女のからだをしばりつけた。お稲は、
媚態
(
びたい
)
と狂態のかぎりをつくして、百に、命をたすけてくれと泣いてさけんだ。
野槌の百
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
菱屋が没落してから三年、江戸を外にして放浪して歩いて、
艱難
(
かんなん
)
と貧苦とが、この女から
大店
(
おおだな
)
の娘らしい上品さを奪って、
媚態
(
びたい
)
と下品さだけを残したのでしょう。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
六歳にして、すでに女らしい
媚態
(
びたい
)
を持つ、おませなモダンガールの美智子である。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
わたくしは得たり
賢
(
かしこ
)
しと、女の持つ
媚態
(
びたい
)
、女の持つ技巧を次々と繰り出させ
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
信長の逆境であった時代——これはいかんと早くも
見限
(
みき
)
りをつけて、羽振りのよい今川義元のほうへ
密
(
ひそ
)
かに
媚態
(
びたい
)
を送って、軍事的な盟約をむすんでおいた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この上品で淋しくさへある内儀に、こんな素晴らしい
媚態
(
びたい
)
のあることは、錢形平次にも豫想外でした。
銭形平次捕物控:204 美女罪あり
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫人としては、自分の
媚態
(
びたい
)
が、男性にどんな影響を及ぼしそのために男性の眼に、どんな熱情が浮び、どんな不安が浮び、どんな哀願が浮ぶかを見ることが、楽しい刺戟であるらしかった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
頸の附根を真っ白く富士形に覗かせて誇張した
媚態
(
びたい
)
を示す物々しさに較べて、帯の下の腰つきから裾は、一本花のように急に
削
(
そ
)
げていて味もそっけもない少女のままなのを異様に眺めながら
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
たまッたものではない、自分の女が、よその男の席へ出てかつて自分へしたような
媚態
(
びたい
)
をほかへ売っているのだ。夜も眠れない。昼も不安で外へ行く気も出ない。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その全裸體の半面はやゝ登つた十三夜の明月に、青々と照し出され、あとの半面には、六つ七つの灯りを明々と浴びて、それは實に
譬
(
たと
)
へやうもなく凄まじい
媚態
(
びたい
)
です。
銭形平次捕物控:225 女護の島異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
どうかしたらお近の
賤
(
いや
)
しい
媚態
(
びたい
)
と、その恥を知らない態度に、中年過ぎの女らしい激しい憎惡を感じてゐたのが、
憚
(
はゞか
)
る者がなくなつて、いつぺんに爆發したのでせう。
銭形平次捕物控:196 三つの死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
孟獲夫妻は善を尽し美を尽して三日間の饗宴を続け、あらゆる
媚態
(
びたい
)
と条件を附して、
木鹿
(
もくろく
)
の歓心を得るに努めた。大王のご機嫌は斜めならず、ようやく着城四日目に
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
王子のお滝という、名題の女
巾着切
(
きんちゃくきり
)
、二十四五の豊満な肉体と、
爛熟
(
らんじゅく
)
し切った
媚態
(
びたい
)
とで、重なる悪事をカムフラージュして行く、その道では知らぬ者のない
大姐御
(
おおあねご
)
です。
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
甲州の勢いも、はや落日の
褪色
(
たいしょく
)
をあらわして来たではないか。——われから求めもせぬ
質子
(
ちし
)
を、送りかえして来たことは、われに寄せる甲州の
媚態
(
びたい
)
でなくて何であろうぞ。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
媚
漢検1級
部首:⼥
12画
態
常用漢字
小5
部首:⼼
14画
“媚態”で始まる語句
媚態的