媚態もなく虚栄心もない善良な少女で、クリストフがやって来たころまでは、自分が醜いということに気づきもせず、それを気にしてもいなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
銭形平次捕物控:244 凧の糸目 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
岡本の媚態のこと。どうしてこんな風になるのだろう。とても苦しい。
戯作者文学論:――平野謙へ・手紙に代えて―― (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
媚態をせよとはいわぬが、好きなひとの前では、おのずから媚態をなし、声もやさしくなるものだ。料理においても、吸いもの一つ作っても、真心さえあれば水くさくともいいというものではない。
ゆれこぼれんばかりの媚態を作つてうなづくのであつた。
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
貴族的な義務からくる媚態をおびて。
ヴェニスに死す (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
そして、その惧れも消えたので、近来はまたそろそろ、高氏へ媚態を呈して来ているものと、右馬介はにらんでいる。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
フランクの音楽が地味で、知的で、無用の媚態を持たなかったために、一般人は言うまでもなく、当時の楽壇人も、これを理解するに至らなかったのであろう。
この際、長く引いて発音した部分と、急に言い切った部分とに、言葉のリズムの上の二元的対立が存在し、かつ、この二元的対立が「いき」のうちの媚態の二元性の客観的表現と解される。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この上品で淋しくさへある内儀に、こんな素晴らしい媚態のあることは、錢形平次にも豫想外でした。
銭形平次捕物控:204 美女罪あり (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
夫人としては、自分の媚態が、男性にどんな影響を及ぼしそのために男性の眼に、どんな熱情が浮び、どんな不安が浮び、どんな哀願が浮ぶかを見ることが、楽しい刺戟であるらしかった。
たまッたものではない、自分の女が、よその男の席へ出てかつて自分へしたような媚態をほかへ売っているのだ。夜も眠れない。昼も不安で外へ行く気も出ない。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銭形平次捕物控:225 女護の島異変 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
銭形平次捕物控:196 三つの死 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銭形平次捕物控:063 花見の仇討 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)