“坩堝:るつぼ” の例文
“坩堝:るつぼ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治15
野村胡堂14
ヴィクトル・ユゴー4
海野十三4
寺田寅彦3
“坩堝:るつぼ”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語15.4%
文学 > 文学 > 叢書 全集 選集9.5%
文学 > フランス文学 > 詩3.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
その炎の色を映して、幾条いくすじにも裂けている相模川の水は、あたかも坩堝るつぼの溶液が砂利の間を煮え流れているよう。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
犯人は云うまでもなく同一人であり、しかも坑殺された峯吉の燃えたぎ坩堝るつぼのような怨みを継いだ冷酷無比の復讐者だ。
坑鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
無職で性質たちの悪い紋日の虎が、金座の坩堝るつぼから出たばかりの、うぶな小判をこう持っているのは怪しいよりは怖ろしい。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはともかく、二年後の一八四四年には、フランクはもう一度パリの坩堝るつぼに飛び込んで、独力その運命の開拓に健闘していた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
東海道の四月、櫻は八重が眞つ盛り、菜の花畠の中を、二人の異樣な御詠歌が、江戸の坩堝るつぼを遠ざかつて行くのです。
彼は灼鉄しゃくてつ炎々えんえんと立ちのぼる坩堝るつぼの中に身を投じたように感じた——が、そのあとは、意識を失ってしまった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
——黒煙はいよいよ濃く、一ノ鳥居の陣地も危うしと聞え、柳営の内も外も、いまはまったく叫喚の坩堝るつぼだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梅干大の夜光の珠は、宇宙うちう創造の神秘を籠めた、プロメトイスが盜んだ坩堝るつぼの焔のやうに、全くメラメラと燃えて居るのです。
——そこよりもっと間近に一かたまりの焔が、坩堝るつぼの如く、うごいて見えるのは、出迎えの者が、村の口まで出ているものと思われる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真鍮しんちゅう屑金くずがねとして、もう一度製錬所せいれんじょへ帰って坩堝るつぼの中でお仲間と一緒に身体をかすのだよ。
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
山はまたもとの静寂しじまにかえって、坩堝るつぼをでたようなが、樹林じゅりんの上の秋の自然しぜんをかがやきらした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全欧米を熱狂と興奮の坩堝るつぼと化せしめ、世界学界に解けざる謎を与えて輿論よろん囂々ごうごうとして
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
とさわぎ出して、近臣は動揺し、魏帝も色を失って、沿道いたる処、恟々きょうきょうたる人心と、乱れとぶ風説の坩堝るつぼとなってしまった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坩堝るつぼの底に熔けた白金のような色をしてそして蜻蜓とんぼの眼のようにクルクルと廻るように見える。
窮理日記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
人の内心、そは空想と欲念と企画との混沌界こんとんかいであり、夢想の坩堝るつぼであり、恥ずべきもろもろの観念の巣窟そうくつである。
静かだった空気は、彼のすさまじい声も打消すほど、途端に、喧騒けんそう坩堝るつぼに落ちていた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを取って大なる坩堝るつぼに入るれば、人の豊かなる滋養が流れ出る。平野の養分は人間の養いとなる。
……のみならず、まだ私の知らない、意外な処に在るスキャンダルの坩堝るつぼまでも発見する事が出来た。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし、こういう侍もあれば、また、奥村助右衛門のような侍もいてこそ、武門も人間社会の外ではない種々相しゅじゅそう坩堝るつぼだと云い得よう。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の心はその瞬間、嫉妬と憤怒ふんぬ屈辱くつじょくとの煮え返っている坩堝るつぼであった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
坩堝るつぼたぎりだした」不図こんな言葉が何とはなしに脳裡のうりうかびました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
一瞬は、歓呼とどよめきの坩堝るつぼであった。彼らにとって、信長こそ、わが子以上のものであり、わが良人つま以上のものであり、恋人以上の恋人であった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無理もない、この海浜都市が、溌剌はつらつたる生気の坩堝るつぼの中に、放り込まれようという、今日きょうがその心もうきたつ海岸開きの日なのだから——。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
家の中は、さながらの坩堝るつぼでした。中からはほのおもよくは見えませんが、綿のやうな烟が渦を卷いて、クワツとしたものが引つ叩くやうに顏を打つのです。
坩堝るつぼの光明等々々が、無数の煙突から吐出す黄烟、黒烟に眼もくらむばかりに反映して、羅馬ローマの滅亡の名画も及ばぬ偉観、壮観を浮き出させている。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
醸造だる中の葡萄ぶどうの実のように、飽満せる魂は坩堝るつぼの中で沸きたつ。
(11)鉱物を溶解するときに炉床または坩堝るつぼの底に沈澱ちんでんするもの。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
運命があるいは賤夫をあるいは半神を得んと欲する時、人を投ずる坩堝るつぼである。
時は正徳三年八月の初め、七代将軍家継いえつぐの時代、江戸は驕者の坩堝るつぼとなって、何処どこの社会でも、金が慾しくて慾しくてたまらなかった頃のことでした。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
造られる爆弾はひとつずつ 黒い落下傘でぼくらの坩堝るつぼに吊りさげられる
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
これが現在、欧米人士を戦争に次ぐの熱狂と興奮の坩堝るつぼに陥れ、全世界を異常なる衝撃ショックとセンセーションとに包み込んでいる、世紀の事件の全貌なのであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
パリーと少年、一つは坩堝るつぼであり一つはあけぼのであるこの二つの観念をこね合わし、この二つの火花をうち合わしてみると、それから一つの小さな存在がほとばしり出る。
江戸の賑ひを集め盡したやうな淺草の雜沓ざつたふは、この意味もなく見えるさゝやかな事件を押し包んで、活きた坩堝るつぼのやうに、刻々新しいたぎりを卷き返すのです。
と、ひとつ城を坩堝るつぼとして、味方同士が相討ち相たおるるの惨を火炎の下に描き出したのである。いずれこうなる運命は予測されていたにせよ、余りに浅ましい刃と刃であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしすべては間もなくイタリーの坩堝るつぼの中に溶かされていた。
柳原土手の夜は白みかけて居りました。大晦日おほみそかの江戸の街は、一瞬轉毎しゆんてんごとに、幾百人かづつ最後の足掻きの坩堝るつぼの中に、眼をさまさして行くのでせう。
本堂前には大焚火おおたきびかれた。浄光明寺のうちも外もたちまち活気と人ざわめきの坩堝るつぼと変り、尊氏は、あらためて方丈へ呼びよせた上杉重房と須賀左衛門のふたりへ、
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
焔の色の薔薇ばらの花、強情がうじやうな肉をかす特製の坩堝るつぼほのほの色の薔薇ばらの花、老耄らうまうした黨員の用心、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
支那から学ばれた知識が日本人の生活の坩堝るつぼの中で熔解せられ、そこから日本人の思想として新なものが形成せられて来ることは勿論あるが、そうなれば、それはもはや支那思想ではない。
日本精神について (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
開票場である公会堂は、坩堝るつぼのたぎる喧噪に包まれている。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
桶狭間おけはざまの一戦の大捷たいしょうは、さすがに十日余りも、清洲きよすの城下を昂奮の坩堝るつぼと化して、盆も夏祭も一緒に来たような騒ぎだったが、それも常態にかえると
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまま街中は灯と踊りと酒と歌と音楽の坩堝るつぼになった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世阿弥よあみの家のあとを初め、二十七家の隠密組の屋敷は、あとかたもなく焼け落ちて、坩堝るつぼを砕いたような余燼よじんの焔は、二人をあざけるごとくメラメラと紫色に這っていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳴川留之丞はそれをうらんで、砧右三郎と鞍掛宇八郎が、役柄で預つてゐる藝州域の繪圖面を盜み出し、多年積んだ不義の富を拐帶かいたいして江戸の坩堝るつぼの中に深く隱れて了つたのです。
中には種々なものがはいっていた、弾丸の鋳型、弾薬莢だんやくきょうを作るに用いる木製の軸、狩猟用の火薬の粒がはいってるはち、内部には明らかに鉛をとかした跡が残ってる小さな坩堝るつぼ
愛は男女の融合が行なわれる崇高な坩堝るつぼである。
一瞬、寶屋の上下は、さわぎの坩堝るつぼに叩き込まれました。下女のお作の悲鳴に驚いて飛んで來た人達も、あまりのことに、何をどうして宜いかわからず、唯呆然ばうぜんとして顏を見合せるばかり。
そこは、二十七か国語が話されるという、人種の坩堝るつぼ。極貧、小犯罪、失業者の巣。いかに、救世軍声をらせどイースト・リヴァの澄まぬかぎり、ここのどん詰りデッド・エンドは救われそうもないのだ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ただ他の場合と少しちがうことは、この場合においては作者自身が被試験物質ないしは動物となって、試験管なり坩堝るつぼなりおりなりの中に飛び込んで焼かれいじめられてその経験を歌い叫び記録するのである。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大乱世の坩堝るつぼであった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然れどもこれ等の信仰は、盲目なる狂熱の独断にあらず、皆冷静の理路を辿たどり、若しくは、精練、微を穿うがてる懐疑の坩堝るつぼを経たるものにして「監督ブルウグラムの護法論」「フェリシュタアの念想」等これを証す。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
高等小学校の理科の時間にTK先生という先生が坩堝るつぼの底に入れた塩酸カリの粉に赤燐せきりんをちょっぴり振りかけたのをむちの先でちょっとつつくとぱっと発火するという実験をやって見せてくれたことを思い出す。
追憶の冬夜 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
吾妻屋の手代佐太郎は、あの日から行方不明で、主人永左衛門の葬いが済んでも帰って来ず、平次は精一杯手を伸して居たにも係らず、そのまま江戸の坩堝るつぼの中に溶け込んでしまったかと思われてから四日目、橋場の渡しの近くに
アルコオル・ランプ、乳鉢、坩堝るつぼ、試験管、——うすあおい蛍石、橄攬石かんらんせき、白い半透明の重晶石や方解石、端正な等軸結晶を見せた柘榴石ざくろいし、結晶面をギラギラ光らせている黄銅鉱……余り明るくない部屋で
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
吾妻屋の手代佐太郎は、あの日から行方不明、主人永左衞門のとむらひが濟んでも歸つて來ず、平次は精一杯手を伸ばしてゐたにも拘らず、そのまゝ江戸の坩堝るつぼの中に溶け込んでしまつたかと思はれてから四日目、橋場の渡しの近くに
発病者は矢張り過労者及び幼小児に多いがしかし原因治療法ともに全く不明のため防疫は消極的にしかも困難を極めており、この爆発的発病数が続けば、ここ数旬にして帝都は挙げて睡魔の坩堝るつぼと化し、黒死病の蔓延によって死都と化した史話の如く
睡魔 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
日枝神社の山王祭と共に、御用祭又は天下祭と言われ、隔年に行われたこの威儀は、氏子中の町々を興奮の坩堝るつぼにし、名物の十一本の山車だしが、人波を掻きわけて、警固の金棒の音、木遣きやりの声、金屏風の反映する中をねり歩いたのです。
と、たったいま調印交換をすましたばかりの和睦わぼくなどは、頭のうちから消し飛ばして、陣々の諸士も、囂々ごうごう私議紛説しぎふんせつを放ちあい、天下一変の予想される昂奮の坩堝るつぼのなかに各〻その感情を極端に揺すぶられていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
事こころざしと違って、二年や三年食いはぐれて見ても、外国のようで日本のようで、金儲かねもうけで埋まっているようで、金をらせる坩堝るつぼのようで、得体のわからない貿易港から、ふしぎにもよく仕事のアナを探って来る彼は一種の天才だった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
杯盤はいばんを片附けた、柳橋の清川の大廣間、二十幾基の大燭臺に八方から照されて、男女十幾人の一座は、文句も不平も、大きな歡喜の坩堝るつぼの中にとかし込んで、唯もう、他愛もなく、無抵抗に、無自覺に歌と酒と遊びとに、この半宵を過せばよかつたのです。
日枝ひえ神社の山王祭と共に、御用祭又は天下祭と言はれ、かく年に行はれたこの威儀は、氏子うぢこ中の町々を興奮の坩堝るつぼにし、名物の十一本の山車だしが、人波を掻きわけて、警固の金棒の音、木遣きやりの聲、金屏風きんびやうぶの反映する中をねり歩いたのです。
童話みたいですが、昔、オーストリヤの王様が、世界最大のダイヤモンドを所有したいという欲望を持って、持っているだけのダイヤを全部坩堝るつぼに入れて融合させようと思ったところが、もともと炭素のかたまりであるダイヤは、たちまち一陣の炭酸瓦斯ガスと変じて、空中にき消えたという昔話があります。
科学が臍を曲げた話 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「……お通さん、おまえの今の姿は、平和そのものだよ。人間は誰でも、こうして、万華まんげ浄土じょうどに生を楽しんでいられるものを、好んで泣き、好んで悩み、愛慾と修羅しゅら坩堝るつぼへ、われからちて行って、八寒十熱の炎に身をかなければ気がすまない。……お通さんだけは、そうさせたくないものだな」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この科学というものを教えた昔の教師たちは、できないことを約束したが、何ひとつ完成していないのです。近代の教師たちはあまり約束をしないし、金属が変質せず不老不死の薬は妄想だということを知っています。しかし、手は泥をこねるためにだけ作られたように見え、眼は顕微鏡か坩堝るつぼをのぞくために作られたように見えるこの哲学者たちが、それこそ奇蹟を完成したのです。