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咆哮
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ほうこう
ふりがな文庫
“
咆哮
(
ほうこう
)” の例文
しかし喧騒、
咆哮
(
ほうこう
)
は、よく反響する絶壁に当って、何倍にもされながら、たかまりひろがり、
眩惑
(
げんわく
)
的な狂気にまでふくれあがった。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
風雨の
咆哮
(
ほうこう
)
をうち消すように、ぶきみな地鳴りが起こり、非常な圧力をもった黒い山のようなものが、二人のうしろへ
轟々
(
ごうごう
)
と押し寄せた。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さも
精悍
(
せいかん
)
な一匹の虎が、狭い鉄棒のあいだを、ノソリノソリ、往ったり来たりしながら、時々「ウオー」とすさまじい
咆哮
(
ほうこう
)
を発している。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ふかい春眠の霞をぬいで、山も水も鮮やかに明け放れてはいるが、夜来の
殲滅戦
(
せんめつせん
)
は、まだ河むこうに、大量な人物を
撒
(
ま
)
いて
咆哮
(
ほうこう
)
していた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一声高く
咆哮
(
ほうこう
)
しておどり上がりおどり上がると、だだっ子の
兵児帯
(
へこおび
)
がほどけるように大蛇の巻き線がゆるみほぐれてしまう。
映画「マルガ」に現われた動物の闘争
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
自己の劃したる
檻内
(
かんない
)
に
咆哮
(
ほうこう
)
して、互に
噛
(
か
)
み合う術は心得ている。一歩でも檻外に向って社会的に同類全体の地位を高めようとは考えていない。
文芸委員は何をするか
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声
咆哮
(
ほうこう
)
したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
かくの如く長崎の港門は、むしろ外舶に対して
狭窄
(
きょうさく
)
となりたるに
係
(
かかわ
)
らず、我が辺海の波濤は、
頻年
(
ひんねん
)
何となく
咆哮
(
ほうこう
)
して、我が
四境
(
しきょう
)
の内に
轟
(
とどろ
)
けり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
かの
巌
(
いはほ
)
の頭上に
聳
(
そび
)
ゆる
辺
(
あたり
)
に到れば、
谿
(
たに
)
急に激折して、水これが為に
鼓怒
(
こど
)
し、
咆哮
(
ほうこう
)
し、噴薄
激盪
(
げきとう
)
して、
奔馬
(
ほんば
)
の乱れ
競
(
きそ
)
ふが如し。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
猛獣は、ものすごい声をあげて
咆哮
(
ほうこう
)
する。どれもこれも、腹がへっているらしい。この咆哮につれて、檣の下には刻々と猛獣の数が
殖
(
ふ
)
えてゆく。
幽霊船の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と、同時に封生の体は跳りあがって、
咆哮
(
ほうこう
)
する声が四辺の空気を
顫
(
ふる
)
わした。杜陽は後ろへひっくりかえった。獣の咆哮するような声がまた起った。
陳宝祠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
機械が空気を
喝散
(
かっさん
)
する音、野性が自然に向って
咆哮
(
ほうこう
)
する声を聞くことは二人の心身を軽くした。プラトニックな愛。葛岡はこういう言葉も覚えて。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
象軍は、耳を
聾
(
ろう
)
する様な
咆哮
(
ほうこう
)
を立てて、長い鼻を巻き上げながら、肉の厚い赤く湿った口をくわっと開くのであった。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その上、強大な武力は明らかに示され、大砲は
咆哮
(
ほうこう
)
し始めていた。それで軍隊は一挙に防寨におどりかかった。今は憤激もかえって妙手段であった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
千の雪崩の音、魔神の
咆哮
(
ほうこう
)
と——僕が報告に書いたがね。それは、この開口をのぼった間近で合している二つの氷河の、右側のを吹きおろす大烈風だ。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
咆哮
(
ほうこう
)
し終ってマットン博士は卓を打ち式場を
見廻
(
みまわ
)
しました。満場
森
(
しん
)
として声もなかったのです。博士は続けました。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
儞
(
なんじ
)
に筧の水の
幽韻
(
ゆういん
)
はない。雪氷を
融
(
と
)
かした山川の
清冽
(
せいれつ
)
は無い。
瀑布
(
ばくふ
)
の
咆哮
(
ほうこう
)
は無い。大河の
溶々
(
ようよう
)
は無い。大海の
汪洋
(
おうよう
)
は無い。儞は謙遜な農家の友である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
突然、彼は大声でサイレンのように
咆哮
(
ほうこう
)
した。立ち上ると、手足を突っぱるようにして奇妙な踊りをはじめた。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その凄まじい格闘の中で、さっきから檻の中を行ったり来たりして猛っていたマフチャズが、突然ウォーと烈しい
咆哮
(
ほうこう
)
を挙げて檻の鉄棒を掴んで揺すぶった。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
狼
(
おおかみ
)
であろうか。熊であろうか。しかし、ながい旅路の疲れから、私はかえって大胆になっていた。私はこういう
咆哮
(
ほうこう
)
をさえ気にかけず島をめぐり歩いたのである。
猿ヶ島
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その絶壁の
陰鬱
(
いんうつ
)
な感じは、永遠に
咆哮
(
ほうこう
)
し号叫しながら、それにぶつかって白いもの
凄
(
すご
)
い波頭を高くあげている
寄波
(
よせなみ
)
のために、いっそう強くされているばかりであった。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
政宗だとて何で一旦関白面前に出た上で、
復
(
また
)
今更に
牙
(
きば
)
をむき出し毛を逆立てて
咆哮
(
ほうこう
)
しようやである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
平次は思わず
呶鳴
(
どな
)
りました。かなたこなたに寝ていた下女どもは平次の声と、焔の
咆哮
(
ほうこう
)
に驚いて
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ものすごい
咆哮
(
ほうこう
)
は、かなたの森のやみの底からひろがってくる、
猟犬
(
りょうけん
)
フハンはむっくとおきて
憤怒
(
ふんぬ
)
のきばをならし、とびさろうとするのをゴルドンはやっとおさえつけた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
怒濤の
咆哮
(
ほうこう
)
。風の
号泣
(
ごうきゅう
)
。海鳥の叫声。火を噴く山。それから、岩に
獅噛
(
しが
)
みついたわずかばかりの羊歯と
腕足類
(
カマロフォリヤ
)
。そのほかに、何ひとつない、地底の海の、荒涼たる孤独の島。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
波浪が
舷側
(
げんそく
)
をどうっとばかり流れてゆき、まさに耳もとで
咆哮
(
ほうこう
)
するのを聞くと、あたかも死神がこの水に浮んでいる
牢獄
(
ろうごく
)
のまわりで怒り狂い、獲物をもとめているような気がした。
船旅
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
あるいはそれらのものの眠りを和らげ、また河波の響きのままにみずからもうとうとしてるかと思われる。あるいは
噛
(
か
)
みつこうとて狂い回ってる野獣のように、いらだち
咆哮
(
ほうこう
)
する。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その頃から空が曇り、浪が高く海岸に
咆哮
(
ほうこう
)
して、本当の
大暴風
(
おおあらし
)
となって来ました。
少年と海
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
その浮々した歓楽と、外の暗い冬の海の
咆哮
(
ほうこう
)
とを対照して、伸子は鋭く感じた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
河身を見れば濁水
巨巌
(
きょがん
)
に
咆哮
(
ほうこう
)
して
正
(
まさ
)
しく天に
漲
(
みな
)
ぎるの有様、
方等般若
(
ほうとうはんにゃ
)
の滝もあったものにあらず、濁り水が汚なく絶壁を落つるに過ぎない。中の茶屋で
昼食
(
ちゅうじき
)
。出かけるとまたもや烈風強雨。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
大変、いったいなんとした叫び声だろう! こんな不自然な物音や、こんな
咆哮
(
ほうこう
)
や、悲鳴や、歯がみや、
哀泣
(
あいきゅう
)
や、乱打や、
罵詈雑言
(
ばりぞうごん
)
は、いままでついぞ一度も聞いたことも、見たこともない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
人為では、とてもそんな真似は
覚束
(
おぼつか
)
ない、
平生
(
へいぜい
)
名利の
巷
(
ちまた
)
に
咆哮
(
ほうこう
)
している時は、かかる念慮は起らない、が一朝
塵界
(
じんかい
)
を脱して一万尺以上もある天上に来ると、吾人の精神状態は従って変ると見える。
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
ラジオの
拡声機
(
かくせいき
)
で聞く猛獣の
咆哮
(
ほうこう
)
のようだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
いやここばかりでなく、乱闘乱戦、さながら野獣群の
咆哮
(
ほうこう
)
となった。誰か一人が小屋へ火を放つ。その炎と黒煙も双方の殺伐を煽り立てた。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
栄二が眼をさますと、部屋の中はまっ暗で、起きだしたみんなのざわめきと、風のすさまじい
咆哮
(
ほうこう
)
とが耳におそいかかった。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その物凄い
咆哮
(
ほうこう
)
に
和
(
わ
)
するかのように、流れるような雨脚とともに、雷鳴は次第次第に天地の間に勢を募らせていった。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
無気味な
咆哮
(
ほうこう
)
と意味をなさぬわめき声が入れまじり、三つのからだが
巴
(
ともえ
)
に乱れて、床板の上をころげまわった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「わかりました。電車通りを探します」てなわけで私はもっと
咆哮
(
ほうこう
)
してくれようと思ったが、しかしこれ以上咆哮して私の溜飲が下った途端、お気の毒ですが
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
すると、この森閑とした死の境域へ、どこか遠くでしている
咆哮
(
ほうこう
)
が聴えてきた。それが、近くもならず遠くもならず、じつにもの悲しげにいつまでも続いている。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
けれども間もなく
全
(
まった
)
くの夜になりました。空のあっちでもこっちでも、
雷
(
かなみり
)
が
素敵
(
すてき
)
に大きな
咆哮
(
ほうこう
)
をやり、電光のせわしいことはまるで夜の大空の
意識
(
いしき
)
の
明滅
(
めいめつ
)
のようでした。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
何坪何合のうちで自由を
擅
(
ほしいまま
)
にしたものが、この鉄柵外にも自由を擅にしたくなるのは自然の
勢
(
いきおい
)
である。
憐
(
あわれ
)
むべき文明の国民は日夜にこの鉄柵に
噛
(
か
)
みついて
咆哮
(
ほうこう
)
している。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思わず、けだもののような
咆哮
(
ほうこう
)
が腹の底から噴出した。一本の外国煙草がひと一人の命と立派に同じ価格でもって交換されたという物語。私の場合、まさにそれであった。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ジャン・ヴァルジャンと向き合って馬車の中にいた間に、幾度となく法の
虎
(
とら
)
は彼のうちに
咆哮
(
ほうこう
)
した。幾度となく彼はジャン・ヴァルジャンの上に飛びかかりたい念に駆られた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
尾を引いた「U」の音をもつ一定した
咆哮
(
ほうこう
)
で、そのすべてが、低いはとの鳴声のような、むやみとしつっこい笛の音でつづられ、身の毛のよだつほど甘美にひびき勝たれている。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
三日目に
漸
(
ようや
)
く泣声がやむと、今度は猛烈な罵声が之に代った。口惜し涙の下に二昼夜の間沈潜していた嫉妬と憤怒とが、今や、すさまじい
咆哮
(
ほうこう
)
となって弱き夫の上に炸裂したのである。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼は獣どもを
咆哮
(
ほうこう
)
させるために、そして内心の動物園の豊富さをいっそうよく感ずるために、
鞭
(
むち
)
を響かせて非常に喜んでいた。彼は孤独ではなかった。孤独になるの恐れはさらになかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
下の方で何だか恐ろしく大きな声で
咆哮
(
ほうこう
)
している人がある事に気が付いていたが、席が定まってからよく見ると、それは正面の高い壇の中壇のような処に立って何事か演説している人の声であった。
議会の印象
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
このときまたもや、おそろしい
咆哮
(
ほうこう
)
の声がきこえた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
女の悲鳴と焔の
咆哮
(
ほうこう
)
と、血潮と、水と、火と。
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
海上からは尊氏の数千ぞうの兵船、陸地から
直義
(
ただよし
)
の万余の兵。むかしの兵庫沖から須磨口から、今日の烈風のごとく、
咆哮
(
ほうこう
)
して来たことだろう。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“咆哮”の意味
《名詞》
咆 哮(ほうこう)
獣が猛りほえること。また、その鳴き声。
(出典:Wiktionary)
咆
漢検1級
部首:⼝
8画
哮
漢検1級
部首:⼝
10画
“咆”で始まる語句
咆
咆吼
咆嘷