とら)” の例文
なされても御所持の荷物なり金子なり共うばとらんと思へばすぐに取て御目に懸ますと然も戯談じようだんらしく己が商賣を明白あからさまに云てわらひながら平氣へいきに酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
佐分利は二年生たりしより既に高利の大火坑にちて、今はしも連帯一判、取交とりま五口いつくちの債務六百四十何円の呵責かしやくあぶらとらるる身の上にぞありける。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お夏が無邪気なる意気地と怜悧れいりなる恋の智慧を見るに足るべし、「あの立野たちの阿呆顔あはうづら敷銀しきがねに目がくれて、嫁にとらうといやらしい」といふ一段に至りては
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
私はこの何だか落付おちつきのない、地底の呼吸を聞きとられるように覚える製造場の中へ入って見たくなった。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まず言う「汝生まれし日より以来このかたあしたに向いて命を下せし事ありや、また黎明よあけにその所を知らしめこれをして地のふちとらえて悪き者を地の上より振落ふりおとさしめたりしや」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
筑摩川春ゆく水はすみにけり消て幾日いくかの峯の白雪とは順徳院じゆんとくゐん御製ぎよせいとかおほいなる石の上にて女きぬあらふ波に捲きとられずやと氣遣きづかはる向の岸のかたに此川へ流れ入る流に水車みづぐるま
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
かきごしにさしいだ團扇うちわとらんとあぐればはづかしゝ美少年びせうねんかんとする團扇うちわさき一寸ちよつおさへて、おもひにもゆるはほたるばかりとおぼすかとあやしの一言ひとこと暫時しばし糸子いとこわれかひと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
松がとられたきょうとなっては、もはや来るべき友達も来尽してしまった肩脱けから、やがて版元に重ねての催促を受けぬうち、一気呵成に脱稿してしまおうと、七草がゆを祝うとそのまゝ
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
呆気あつけとられてる/\うちに、したはうからちゞみながら、ぶくぶくとふとつてくのは生血いきちをしたゝかに吸込すひこ所為せゐで、にごつたくろなめらかなはだ茶褐色ちやかツしよくしまをもつた、痣胡瓜いぼきうりのやうな動物どうぶつ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがてとらせたくさ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
其方義夫傳吉の留守中るすちう昌次郎と奸通かんつう致しあまつさへ傳吉歸國きこくせつ密夫みつぷ昌次郎に大金をかたりとら旁々かた/″\以て不埓ふらちに付三宅島みやけじま遠島ゑんたう申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうして依旧やつぱり鴫沢しぎさわの跡は貫一さんにとらして下さいよ、それでなくては私の気が済まないから。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
とらしか返答へんたふ致すべしとさも横柄わうへいのべけるに兩人再び驚きしが大膳は聲をはげまし汝天下の御落胤ごらくいんなどとあられもなきいつはりを述べ我々をあざむき此場を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)