ひろ)” の例文
ひろく事を知り、銘々の身分に相応すべきほどの智徳を備えて、政府はそのまつりごとを施すにやすく、諸民はその支配を受けて苦しみなきよう
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
氏は実に世にも得難き碩学せきがくの士でひろく百科の学に精通し、それがまた通り一遍の知識でなくことごとく皆深邃しんすいの域に達していられた。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
私たちは、淋しい、睦じい暮らし方をし、愛と赦しと労いとをひろく、あまねく、隣人に及ぼしてゆく気ですから悦んで下さい。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
愛は偏狭へんきょうきらう、また専有をにくむ。愛したる二人の間に有り余るじょうげて、ひろ衆生しゅじょううるおす。有りあまる財をなげうって多くの賓格ひんかくかいす。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なお賢人のうに、「げん近くしてむね遠きものは善言ぜんげんなり。守ること約にしてほどこすことひろきものは善道なり。君子くんしげんおびよりくだらずしてみちそんす」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それは兎に角大日本史も山陽同様に此事を記してゐるが、大日本史の筆法はひろることはこれ有り、くはしく判ずることは未だしといふ遣り方である。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
見玉へ、我学問のひろきを。狂人にして見まほしき人の、狂人ならぬを見る、その悲しさ。狂人にならでもよき国王は、狂人になりぬと聞く、それも悲し。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
既に人の妻たり母たる生活に入った若い婦人までが、読書と社会的接触とに由って出来るだけ各自の智力を高くかつひろくするように努力して欲しいと思います。
婦人改造と高等教育 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
専門たるりつれきえきのほかに道家どうかの教えにくわしくまたひろじゅぼくほうめい諸家しょかの説にも通じていたが、それらをすべて一家のけんをもってべて自己のものとしていた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
西洋諸国たえて鄙野ひやの教門なし。ここをもって人の好むところにまかするもまた可ならん。かつ人々しき高く、学ひろし。あに木石虫獣を拝する者あらんや。わが邦はすなわちしからず。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
もっと人間としてのひろさと、祈りと、そうして美しい好しみがあってよいと思うのである。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
然かも欧陽公必ず誤まらざらん、まさに更にひろく旧制をかんがふべき也。(老学庵筆記、巻七)
有名な『中庸』という本に「ひろく之を学び、つまびらかに之を問い、慎んで之を思い、明らかに之を辨じ、あつく之を行う」という文句ことばがありますが、けだしこれはよく学問そのものの目的
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
温かき御心ゆゑぞ、大きなるひろき御心もてぞ、ありとあるしみたまへば、御心は神にもいたり、雀にも通ひましけむ。あなあはれ人のこの世のうつつにもかかるひじりのましまししものか。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
(二)がく載籍さいせききはめてひろけれども、しん六蓺りくげいかんがふ。(三)詩書ししよ(四)けたりといへども、しかれども(五)虞夏ぐかぶんなりげうまさくらゐ(六)のがれんとするや、虞舜ぐしゆんゆづる。
聡敏そうびん人にすぐれ、早く叡山に上り、慈覚大師に就いて顕密の二教を学びてその秘奥ひあうを極む、又、花山の辺昭に就いて胎蔵法を受く、ひろく経論に渉猟せふれふし、百家に馳聘ちへいして、その述作する所、大教を補弼ほひつ
と言い、終りに臨んで、ひろくその委嘱に応ずべき由を公言した。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「セント・ジョンはひろくて深い學者ですわ。」
故にひろく学び多く作るを要す。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
今このいやしき習俗を脱して活発なる境界に入り、多くの事物に接しひろく世人に交わり、人をも知り己れをも知られ、一身に持ち前正味の働きを逞しゅうして、自分のためにし
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そして私の魂をできるだけ深く純に強くひろくすることによって直接に他人に影響したい。じっさい世の中の人はどれほど自分で自分の魂をはずかしめているかしれませんと思います。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
此はいやな事ではあるが、小説としては、扱いがいのある人間を書いている訣である。大きくひろく又、最人間的な、神と一重の境まで行って引き返すといった人間の悲しさを書いている。
反省の文学源氏物語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
温かき御心ゆゑぞ、大きなるひろき御心もてぞ、ありとあるしみたまへば、御心は神にもいたり、雀にも通ひましけむ。あなあはれ、人のこの世のうつつにも、かかるひじりのましまししものか。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
無益の彫刻藻絵そうかいを事とするをとどめたるが如き、まことに通ずることひろくしてとらえらるゝことすくなく、文武をねて有し、智有をあわせて備え、体験心証皆富みて深き一大偉人たる此の明の太祖
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また人の見識、品行はただ聞見のひろきのみにて高尚なるべきにあらず。万巻の書を読み、天下の人に交わり、なお一己いっこの定見なき者あり。古習を墨守する漢儒者のごときこれなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ドストエフスキーの作品が単純で、そして万人の心に触れるのもその共存のひろい感情があるからである。人間には普遍性がある。一つ造り主によって作られたる共通の血の音がある。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)