また)” の例文
信吾のいかりはまた発した。(有難う御座います。)その言葉を幾度か繰返して思出して、遂に、頭髪かみ掻挘かきむしりたい程腹立たしく感じた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
而して彼を見る者は聖父ちちを見るのであれば、心の清き者(彼に心を清められし者)は天に挙げられしが如くにまた地にきたり給う聖子を見て聖父を拝し奉るのであろう(行伝一章十一節)。
饒舌しゃべりながら母親がくんで出す茶碗ちゃわんはばかりとも言わずに受取りて、一口飲で下へ差措さしおいたまま、済まアし切ッてまたふたたび読みさした雑誌を取り上げてながめ詰めた、昇と同席の時は何時でもこうで。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
希有ぢや未曾有ぢやまたあるまじと爲右衞門より門番までも、初手のつそりを軽しめたる事は忘れて讚歎すれば、圓道はじめ一山いつさんの僧徒も躍りあがつて歓喜よろこび、これでこそ感応寺の五重塔なれ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
と笑いながら、……もう向うむいて行きかける六蔵をまた呼んで
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『オイ、お申婆さるばあでねえか?』と、直ぐまた大きい声を出した。恰度その時、一人の人影が草履の音を忍ばせて、此家に入らうとしたので。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一刀いっとうけずりてはしばら茫然ぼうぜんふさげば花漬はなづけめせと矯音きょうおんもらす口元の愛らしき工合ぐあい、オヽそれ/\と影をとらえてまたかたな、一トのみ突いては跡ずさりしてながめながら、幾日の恩愛たすけられたり扶けたり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蛤の灯がほんのりと、また来て……
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『莫迦野郎!』と、信吾はまたしても唸る様に言つて、下唇くちびるを喰絞り、堅めた両の拳をブル/\顫はせて、恐しい顔をして突立つてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何のじょうを含みてかわがあたえしくしにジッと見とれ居る美しさ、アヽ此処ここなりと幻像まぼろしを写してまた一鑿ひとのみようやく二十日を越えて最初の意匠誤らず、花漬売の時の襤褸つづれをもせねば子爵令嬢の錦をも着せず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
六はまた指二本。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『僕こそ。』と言ひながら、男は少許すこし離れて鋼線はりがねの欄干にもたれた。『意外な所でまたお目にかかりましたね。貴女あなたお一人ですか?』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
牛のしりがいここに外れてモウともギュウとも云うべき言葉なく、何と珠運に云い訳せん、さりとて猥褻みだらなるおこないはお辰に限りてなかりし者をと蜘手くもでに思い屈する時、先程の男きたりてまた渡す包物つつみものひらきて見れば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
昨晩ゆうべの座敷の樣子が、また鮮かに私の目に浮んだ。然うだ、菊池君の住んで居る世界と、私達の住んで居る世界との間には、餘程の間隔がある。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨夜ゆうべの座敷の様子が、また鮮かに私の目に浮んだ。然うだ、菊池君の住んで居る世界と、私達の住んで居る世界との間には、余程の間隔へだたりがある。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お定は一寸狼狽うろたへてお八重の顔を見た。お八重はまた笑つて『一人だば淋しだで、お定さんにも行つて貰ふべがと思つてす。』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『怎したけな?』と囁いてみたが返事がなくて一層歔欷すすりなく。と、平常ひごろから此女のおとなしく優しかつたのが、俄かに可憐いぢらしくなつて来て、丑之助はまた
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『野村さんがお金を出したら、らないつて云ふんですつて、其お竹さんと云ふ人が。そしたらね、それぢやまた來いツて其儘歸したんですとさ。』
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『野村さんがお金を出したら、らないつて云ふんですつて、其お竹さんと云ふ人が。そしたらね、それぢやまた来いツて其儘帰したんですとさ。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『ホホヽヽ。』とまた笑つて、『先生様ア、お前様めえさま狐踊踊るづア、今夜こんにやおらと一緒に踊らねえすか? 今夜こんにやから盆だず。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「実に巧い、モ一つ、モ一つ。」と雀躍こをどりする様にして云つた小松君のことばが、三四人の反響を得て、市子はまた立つ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それからそれと仰々しく述べ立てて、今度は仕方がないから帰るけれど、必ずまた自分だけは東京に来ると語つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
不思議だナと考へて、半分廻しかけた頭を一寸戻して、またお芳の目を見たが、モウ似て居ない。似る筈が無いサと胸の中で云つて、思切つて寝返りを打つ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『それぢや何だね、』と、健はまた老女の方を向いた。『此児これの弟といふのが、今年八歳やつつになつたんだらう。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
黒い星は依然として黒い星で、見ても見ても、矢張やつぱり同じ所にポツチリとして居る。一体何処の港を何日立ツて、何処の港へ行く船だらうと、また繰返して考へた。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『こら、うちの嬶、お前は何故、今夜は酒を飲まないのだ。』と松太郎はまた顔を上げた。舌もよくは廻らぬ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
... 逢ひます、屹度また逢ひます。僕は君の外に頼みに思ふ人もありませんし、屹度また何処かで逢ひます。」と云ひますと、「人生は左様さう都合よくは出来て居らんぞ。 ...
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、渠は小声に抑揚ふしをつけて読み出した。が、書いてあるのはたつた十二三行しかないので、直ぐに読終へて了ふ。と繰返してまた読み出す。再読終へて再読み出す。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『でも、』と渠はまた目を落した。『でも、モウお決めになつてるんぢやないかと、私は思ひますがねす。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そしたら其晩また來ましたの。野村さんは洋服なんか着込んでらつしやるから、見込をつけたらしいのよ。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
不思議だナと考へて、半分𢌞しかけた頭を一寸戻して、またお芳の目を見たが、モウ似て居ない。似て居る筈が無いサと胸の中で云つて、思ひ切つて寢返りを打つ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「痛苦の……生—活—の溝、」と、また口の中で云つて見たが、此語は、吾乍ら鋭い錐で胸をもむ樣な連想を起したので、狼狽うろたへて「人生の裏路を辿る人。」と直す。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
左様さうか、そんな病気なら、少し炭を持つて来て呉れ、湯を沸すから。」とまた淋しく笑ひました。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
密々ひそひそと話声が起りかけた。健は背後うしろの方から一つ咳払ひをした。話声はそれでまた鎮つた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、健は、うしてつたんだと果しなくあらそつてるのが、——校長の困り切つてるのが、何だか面白くなつて来た。そして、ツと立つて、解職願をまた校長の卓に持つて行つた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
眼をギラギラ光らして舌を出し乍ら、垢づいた首卷を卷いて居たが、階段を降りる時はまた顏を顰蹙しかめて、些と時計を見上げたなり、事務の人々には言葉もかけず戸外そとへ出て了つた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
翌年の春の初め、森の中には未だ所々に雪が殘つてる時分お里はまた見えなくなつた。翌日あくるひ、老爺は森の奧の大山毛欅の下で、裸體はだかにされて血だらけになつてゐる娘の屍を發見みいだした。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
必ず動いて居る筈だと瞳を据ゑる。黒い星は依然として黒い星で、見ても見ても、矢張同じ所にポッチリとして居る。一體何處の港を何日發つて、何處の港へ行く船だらうと、また繰返して考へた。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
甲田はまた此男は嘘を言つてるのではないなと思つた。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『そんなら、水つけたらまたえるの?』
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
母は、またかと顔をしかめる。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『アーア』とまた聞えた。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)