其名そのな)” の例文
三番目の娘は其名そのな露子つゆこと云う、三人の中でも一番美しく、日頃から極く温順な少女なので、此時も決して争う様な事はせず、黙って腕環を眺めて居る。
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
其入口そのいりくちにはぴか/\した眞鍮しんちゆう表札へうさつに『山野兎やまのうさぎ』と其名そのなりつけてありました、あいちやんはこゑもかけずに二かいあがりました、眞實ほんと梅子うめこさんにつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
こゝろ變化へんくわするものなり、雪三せつざう徃昔そのかみ心裏しんりうかゞはゞ、糸子いとこたいする觀念くわんねん潔白けつぱくなること、其名そのなゆきはものかは、主人しゆじん大事だいじ筋道すぢみちふりむくかたもかりしもの
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
また諸所しよしよ修道院しうだうゐんともらつて、もはや此世このよない会友くわいいうためいのりげ、其名そのな巻物まきものきとめて、てらからてらへと其過去帳そのくわこちやう持回もちまはつたなら、みんなさぞよろこことであらうが、だい
『こゝに一人ひとり少女せうぢよあり、其名そのなきぬといふ』とぼく小説批評家せうせつひゝやうかへの面當つらあていま特筆とくひつ大書たいしよする。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ロバートなんとか氏のいわく、「一人の邪魔者の常に我身にまとうあり、其名そのなを称して正直とう」芹川進せりかわすすむ氏の曰く、「一人の邪魔者の常に我身に附き纏うあり、其名を称して受験と云う」
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一年は十二にわかち十二月とす其名そのなかずごとし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
昔々むかし/\ところに三にんちひさな姉妹きやうだいがありました』と福鼠ふくねずみ大急おほいそぎではじめて、『其名そのなを、えいちやん、りんちやん、ていちやんとつて、三にんともみん井戸ゐどそこんでゐました——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あさこゝろ思召おぼしめすか假令たとひどのやうなことあればとてあだびとなんのその笑顏わらひがほせてならうことかはやまほどのうらみもくるすぢあれば詮方せんかたなし君樣きみさま愛想あいさうつきての計略たくみかとはおことばながらあまりなりおやにつながるゝつみおなじと覺悟かくごながら其名そのなばかりはゆるしたまへよしや父樣とゝさまにどのやうなおにくしみあればとてかはらぬこゝろわたしこそ君樣きみさまつまなるものを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)