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充満
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いっぱい
ふりがな文庫
“
充満
(
いっぱい
)” の例文
旧字:
充滿
もしか
敵役
(
かたきやく
)
でも出ようものなら熱誠を
籠
(
こ
)
めた
怒罵
(
どば
)
の声が場内に
充満
(
いっぱい
)
になる不秩序な
賑
(
にぎ
)
やかさが心も
躍
(
おど
)
るように思わせたのに違いない。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
するとまたその
婦
(
おんな
)
が、や、どッこいしょ、と掛声して、澄まして、ぬっと入って、ふわりと
裾埃
(
すそごみ
)
で前へ出て、正面
充満
(
いっぱい
)
に陣取ったろう。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
漁師は膳の前に坐って蕎麦切を
喫
(
く
)
っている女房に、こんなことを云って、網の袋に
充満
(
いっぱい
)
になって来る大きな鮭を想像していた。
鮭の祟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「今入れているじゃありませんか、
性急
(
せわし
)
ない
児
(
こ
)
だ」と母は
湯呑
(
ゆのみ
)
に
充満
(
いっぱい
)
注
(
つ
)
いでやって自分の居ることは、
最早
(
もう
)
忘れたかのよう。二階から大声で
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
松枝
(
まつえだ
)
の
宿
(
しゅく
)
に泊りました、其の頃お大名のお着きがございますと、いゝ宿屋は
充満
(
いっぱい
)
でございます。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
脚
(
あし
)
を截り去れば脚また生じ、金の頭金の手金の脚家
充満
(
いっぱい
)
となりて、
爛々燦々
(
らんらんさんさん
)
と輝きわたりければ、この事王の耳に入りしが、
仔細
(
しさい
)
を問ひ玉ふに及びて、これ善行の
報
(
むくい
)
なりと知れ
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
素早く、
階子段
(
はしごだん
)
の降口を
塞
(
ふさ
)
いで、むずと、大手を拡げたろう。……影が天井へ
懸
(
かか
)
って、
充満
(
いっぱい
)
の黒坊主が、
汗膏
(
あせあぶら
)
を流して撫じょうとする。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
未だ夜の明けきらないうちに、舟に
充満
(
いっぱい
)
の鮭を獲った夫婦は、一度帰って来てから、また舟に
充満
(
いっぱい
)
の魚を獲った。
鮭の祟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
さて展覧会の当日、恐らく全校数百の生徒中
尤
(
もっと
)
も胸を
轟
(
とどろ
)
かして、展覧室に入った者は自分であろう。図画室は既に生徒及び生徒の父兄姉妹で
充満
(
いっぱい
)
になっている。
画の悲み
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「うゝん、誰だか知らない。手桶の中に
充満
(
いっぱい
)
になつて、のたくつてるから、それだから、
遁
(
に
)
げると
不可
(
いけな
)
いから
蓋
(
ふた
)
をしたんだ。」
夜釣
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
やかましい父が見張っている時でさえ、その
隙
(
すき
)
を盗んで
纏
(
まと
)
わりついた者が、今日からはどんなに
煩耨
(
しつこ
)
く纏うて来るだろうと云う恐れが、
女
(
むすめ
)
の頭に
充満
(
いっぱい
)
になっておりました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
充満
(
いっぱい
)
で御座います」とお徳は一言で拒絶した。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
極性
(
ごくしょう
)
な
朱
(
しゅ
)
でござったろう、ぶちまけた
甕
(
かめ
)
充満
(
いっぱい
)
のが、時ならぬ
曼珠沙華
(
まんじゅしゃげ
)
が咲いたように、
山際
(
やまぎわ
)
に燃えていて、
五月雨
(
さみだれ
)
になって消えましたとな。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それで懐の中の分が無くなると、今度は両方の
袂
(
たもと
)
から、それが済むと、更に風呂敷包の中からと言うふうにするので、
室
(
へや
)
の
内
(
うち
)
は忽ち蝋燭や線香で
充満
(
いっぱい
)
になりました。私は
呆
(
あき
)
れてしまって
母の変死
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
蓋
(
ふた
)
が
打欠
(
ぶっか
)
けていたそうでございますが、
其処
(
そこ
)
からもどろどろと、その
丹色
(
にいろ
)
に
底澄
(
そこす
)
んで光のある
粘土
(
ねばつち
)
ようのものが
充満
(
いっぱい
)
。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
余りのことに気の弱い梓は胸が
充満
(
いっぱい
)
、女が見ないので心の
張
(
はり
)
が
弛
(
ゆる
)
んだか、
瞶
(
みつ
)
めている目にほろりとした。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
舞台ただ
充満
(
いっぱい
)
の古狐、もっとも
奇特
(
きどく
)
は、鼠の油のそれよりも、狐のにおいが
芬
(
ぷん
)
といたいた……ものでござって、上手が占めた鼓に劣らず、声が、タンタンと響きました。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつもは
俯向
(
うつむ
)
いて、底を見るのが、立って、伸上って見送るほど、
嵩
(
かさ
)
増して、
薄
(
すすき
)
の葉が瀬を造って、もうこれで
充満
(
いっぱい
)
と云うように、川柳が枝を上げて、あぶあぶ
遣
(
や
)
ってた。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
自棄
(
やけ
)
に、
口惜
(
くや
)
しそうに、もう一つ出した茶碗へ、また
充満
(
いっぱい
)
に樽の口をつけた。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
凡
(
およそ
)
八
町
(
ちょう
)
四方ばかりの間、扇の
地紙
(
じがみ
)
のような形に、空にも下にも
充満
(
いっぱい
)
の花です。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見上げた
破風口
(
はふぐち
)
は峠ほど高し、とぼんと野原へ出たような気がして、
縁
(
えん
)
に添いつつ
中土間
(
なかどま
)
を、
囲炉裡
(
いろり
)
の前を向うへ通ると、
桃桜
(
ももさくら
)
溌
(
ぱっ
)
と輝くばかり、
五壇
(
ごだん
)
一面の
緋毛氈
(
ひもうせん
)
、やがて四畳半を
充満
(
いっぱい
)
に雛
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
四谷新宿へ突抜けの
麹町
(
こうじまち
)
の大通りから
三宅坂
(
みやけざか
)
、日比谷、……銀座へ出る……歌舞伎座の前を
真直
(
まっすぐ
)
に、
目的
(
めあて
)
の
明石町
(
あかしちょう
)
までと
饒舌
(
しゃべ
)
ってもいい加減の間、町
充満
(
いっぱい
)
、屋根一面、
上下
(
うえした
)
、左右、縦も横も
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
道者衆
(
どうじゃしゅう
)
で
充満
(
いっぱい
)
で、
足踏
(
あしぶみ
)
も出来ません処から、
框
(
かまち
)
へかけさせ申して、帳場の火鉢を差上げましたような次第で、それから
貴女様
(
あなたさま
)
がお泊りの
筈
(
はず
)
、立花が来たと伝えくれい、という事でござりまして。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
てまい
)
なぞは見物の方で、お
社
(
やしろ
)
前は、おなじ
夥間
(
なかま
)
で
充満
(
いっぱい
)
でございました。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これはと思う、右も、左も、前の枝も、何の事はないまるで
充満
(
いっぱい
)
。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何とかいったな、あの
言種
(
いいぐさ
)
は。——宴会前で腹のすいた
野原
(
のっぱら
)
では、見るからに
唾
(
つば
)
を飲まざるを得ない。薄皮で、肉
充満
(
いっぱい
)
という白いのが、
妾
(
めかけ
)
だろう、妾に違いない。あの、とろりと色気のある工合がよ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
簪
(
かんざし
)
の花が
凜
(
りん
)
として色が冴えたか気が籠って、
屹
(
きっ
)
と、教頭を見向いたが、その目の
遣場
(
やりば
)
が無さそうに、向うの壁に
充満
(
いっぱい
)
の、
偉
(
おおい
)
なる全世界の地図の、サハラの砂漠の有るあたりを、
清
(
すずし
)
い瞳がうろうろする。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
茶を
充満
(
いっぱい
)
の
吸子
(
きびしょ
)
が一所に乗っていた。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
充
常用漢字
中学
部首:⼉
6画
満
常用漢字
小4
部首:⽔
12画
“充”で始まる語句
充
充分
充填
充滿
充溢
充實
充血
充実
充當
充牣