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一目
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いちもく
ふりがな文庫
“
一目
(
いちもく
)” の例文
クリームの色はちょっと
柔
(
やわら
)
かだが、少し重苦しい。ジェリは、
一目
(
いちもく
)
宝石のように見えるが、ぶるぶる
顫
(
ふる
)
えて、羊羹ほどの重味がない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かなりな酒好きで、多少の道楽はしたようだが、どこまでもやさしい心の持ち主だった父は、私の母には常に
一目
(
いちもく
)
置いていたようである。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
林右衛門は、家老と云っても、実は本家の
板倉式部
(
いたくらしきぶ
)
から、
附人
(
つけびと
)
として来ているので、修理も彼には、日頃から
一目
(
いちもく
)
置いていた。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その百姓に対して、彼は
一目
(
いちもく
)
も二目も置いたような
卑下
(
ひげ
)
した態度を取っている。どっちからいっても、よくよくおとなしい可愛い男だと次郎左衛門は思った。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それでもすつかり
手拭
(
てぬぐひ
)
の
前
(
まへ
)
まで
行
(
い
)
つて、いかにも
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたらしく、ちよつと
鼻
(
はな
)
を
手拭
(
てぬぐひ
)
に
押
(
お
)
しつけて、それから
急
(
いそ
)
いで
引
(
ひ
)
つ
込
(
こ
)
めて、
一目
(
いちもく
)
さんに
帰
(
かへ
)
つてきました。
鹿踊りのはじまり
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
このような魔術的手腕のみは、ほとほと自分にも真似ができぬものと、師直も彼には
一目
(
いちもく
)
おいていた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其処
(
そこ
)
で一同は、互に
警
(
いまし
)
め合って、家を出てその提燈の
行衛
(
ゆくえ
)
を追うて行った。
皓々
(
こうこう
)
として、白雪に月の冴え渡った広野は、二里も三里も
一目
(
いちもく
)
に見えるように薄青く明るかった。
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それに
家柄
(
いえがら
)
も相当で、上層社会に知人が多く、士官学校の同期生や
先輩
(
せんぱい
)
で将官級になった人たちでも、かれには
一目
(
いちもく
)
おいているといったふうがあり、また政変の時などには
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
今もそうで、旅のうらない師というこの若い女を引き入れているところへ、ちょっと
一目
(
いちもく
)
おかなければならない玄心斎の白髪あたまが、ぬうっと出たので、源三郎、
中
(
ちゅう
)
っ
腹
(
ぱら
)
だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
旦那様は随分
他人
(
ひと
)
には
酷
(
ひど
)
くお
衝
(
あた
)
りになりましても、
貴嬢
(
あなたさま
)
ばかりには
一目
(
いちもく
)
置いて
居
(
いら
)
したのが、
彼
(
あ
)
の晩の御剣幕たら何事で御座います、
父子
(
おやこ
)
の縁も今夜限だと大きな声をなすつて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
その
才物
(
さいぶつ
)
なるは
一目
(
いちもく
)
瞭然
(
りょうぜん
)
たることにて、実に目より鼻へ抜ける人とはかかる人をやいうならん、惜しい
哉
(
かな
)
、人道以外に
堕落
(
だらく
)
して、同じく
人倫
(
じんりん
)
破壊者の
一人
(
いちにん
)
なりしよし聞きし時は
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
だが、「旦那」の看守が俺に
一目
(
いちもく
)
おいたとなると、みなは途端に小さくなってしまった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
いずれにしても、酔眼に人なき道庵も、一休禅師には
一目
(
いちもく
)
ぐらいは置いているらしい。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と思っていた清盛だったが、わが子とはいえ、
一目
(
いちもく
)
おいている上に、その礼儀正しさと、慈悲深さは定評のある男であり、会ったとたんに清盛は、自分の格好が恥ずかしくなってきた。
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
しかるにさすがのお師匠さんも
己
(
おれ
)
には
一目
(
いちもく
)
置いているなどと云い
触
(
ふ
)
らし
殊
(
こと
)
に佐助を
軽蔑
(
けいべつ
)
して彼の代稽古を嫌いお師匠さんの教授でなければ治まらずだんだん増長する様子に春琴も
癇癖
(
かんぺき
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それでも一座は事務長には
一目
(
いちもく
)
置いているらしく、また事務長と葉子との関係も、事務長から残らず聞かされている様子だった。葉子はそういう人たちの間にあるのを結句気安く思った。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「そんなことはないだろう。僕には
一目
(
いちもく
)
置
(
お
)
いて、英語の質問をするもの」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ソレ故
一寸
(
ちょい
)
と
一目
(
いちもく
)
見た所では——今までの話だけを
開
(
きい
)
た所では、
如何
(
いか
)
にも学問どころの事ではなく
唯
(
ただ
)
ワイ/\して居たのかと人が思うでありましょうが、
其処
(
そこ
)
の一段に至ては決して
爾
(
そ
)
うでない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
近所の人たちも皆このお爺さんに
一目
(
いちもく
)
置いて、「旦那」あるいは「先生」などといふ尊称を奉り、何もかも結構、立派なお方ではあつたが、どうもその左の頬のジヤマツケな瘤のために、旦那は日夜
お伽草紙
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
「君のようなせわしない男と碁を打つのは苦痛だよ。考える暇も何もありゃしない。仕方がないから、ここへ
一目
(
いちもく
)
入れて
目
(
め
)
にしておこう」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おとわも勿論
素直
(
すなお
)
に云うことを
肯
(
き
)
く筈はありませんが、旦那の喜兵衛も
一目
(
いちもく
)
置いているような変な奴にみこまれて、怖いのが半分でまあ往生してしまったんでしょう。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
なぜならば、日一日と、彼は藤吉郎に対して、その智略にも度量にも、尊敬を増して、自分以上の
器
(
うつわ
)
と信じ、人間的に、今では自分より
一目
(
いちもく
)
も二目も上に見ているからであった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その文に
曰
(
いわ
)
く(中略)貴嬢の朝鮮事件に
与
(
くみ
)
して一死を
擲
(
なげう
)
たんとせるの心意を察するに、葉石との交情旧の如くならず、他に婚を求むるも
容貌
(
ようぼう
)
醜矮
(
しゅうわい
)
突額
(
とつがく
)
短鼻
(
たんび
)
一目
(
いちもく
)
鬼女
(
きじょ
)
怪物
(
かいぶつ
)
と
異
(
こと
)
ならねば
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そんな風に、奥さんの方でも御主人の亡くなられた跡はともすると爺やに
一目
(
いちもく
)
置いているように見えましたが、それは一つには爺やにやるものを殆どやらずにいたからでもあったのでしょう。
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
清さんの百成清一郎は俺に対していつも
一目
(
いちもく
)
おいた口のきき方をしていたが、金原はそうでない。そうでない金原がそれなりに俺には、反対に俺を妙に立てていた朝倉と同じように気に入っていた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
近所の人たちも皆このお爺さんに
一目
(
いちもく
)
置いて、「旦那」あるいは「先生」などといふ尊稱を奉り、何もかも結構、立派なお方ではあつたが、どうもその左の頬のジヤマツケな瘤のために、旦那は日夜
お伽草紙
(旧字旧仮名)
/
太宰治
(著)
そうして済まねえと言って
一目
(
いちもく
)
置く。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
長蔵さんは教育のある男ではあるまいが、自分の
風体
(
ふうてい
)
を見て
一目
(
いちもく
)
騙
(
かた
)
るべからずと看破するには教育も何も
要
(
い
)
ったものではない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「はははは、そうでもない。わしは無学だ、お身は学識がある。わしは野から
生
(
は
)
えた人間だ。お身は
菩提山
(
ぼだいさん
)
の城主の子だ。そういったような差かなあ。——何となく
一目
(
いちもく
)
措
(
お
)
けるよ」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少しく支那小説を研究なされた方々には
一目
(
いちもく
)
瞭然であろうと考えられます。
中国怪奇小説集:02 開会の辞
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
民衆は、これに
一目
(
いちもく
)
をおくのだから、こたえられまい。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
いわゆる因果法と云うものはただ今までがこうであったと云う事を
一目
(
いちもく
)
に見せるための索引に過ぎんので、便利ではあるが
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
憎みながらそれには
一目
(
いちもく
)
おいておりますので
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
窓から眺める時はどこに何がいるか、
一目
(
いちもく
)
明瞭に見渡す事が出来るが、よしや敵を
幾人
(
いくたり
)
見出したからと云って捕える訳には行かぬ。ただ窓の
格子
(
こうし
)
の中から叱りつけるばかりである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
はすに延ばして負けにけりか、そんならこっちはと——こっちは——こっちはこっちはとて暮れにけりと、どうもいい手がないね。君もう一返打たしてやるから勝手なところへ
一目
(
いちもく
)
打ちたまえ
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
隻手を挙ぐれば隻手を失い、
一目
(
いちもく
)
を
揺
(
うご
)
かせば一目を
眇
(
びょう
)
す。手と目とを
害
(
そこの
)
うて、しかも第二者の
業
(
ごう
)
は依然として変らぬ。のみか時々に刻々に深くなる。手を
袖
(
そで
)
に、眼を閉ずるは恐るるのではない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“一目”の意味
《名詞》
一 目 (いちもく, ひとめ)
(いちもく) 一回だけ見ること。
(いちもく) 一個の碁石。
(いちもく, ひとめ) 一度に見渡すこと。
(ひとめ) ちょっとだけ見ること。
(ひとめ) 目に一杯であること。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“一目”で始まる語句
一目散
一目瞭然
一目惚
一目下
一目参
一目寺
一目眇
一目置
一目千里
一目千金