“齟齬:そご” の例文
“齟齬:そご”を含む作品の著者(上位)作品数
寺田寅彦10
吉川英治9
宮本百合子6
福沢諭吉5
津田左右吉4
“齟齬:そご”を含む作品のジャンル比率
自然科学 > 物理学 > 物理学13.0%
社会科学 > 教育 > 教育13.0%
歴史 > 伝記 > 個人伝記3.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
その間に、私は四五百首の短歌を作った。短歌! あの短歌を作るということは、いうまでもなく叙上の心持と齟齬そごしている。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
日本軍が上陸してから俄に違約を蒙つて齟齬そごを来しては重大だから、彼らの本心を見究めるため、自分らを先発させて欲しい。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
——が、前田はすでに問題外だし、勝家の狐塚本陣も、いかに玄蕃允の大きな齟齬そごがあったといえ、余りに崩るるに急だった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが政府の農業政策が、農村の現実と齟齬そごする程度が増すにつれてこの委員会の活動は不活溌にされ、現在は解体している。
今日の日本の文化問題 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
簡単な実験でも何遍も繰返すうちには四囲の状況は種々に変化するから、結果に多少の異同や齟齬そごを来すのは常の事である。
物理学実験の教授について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
人を順良にせんとするの方便は、たまたまこれを詭激に導くの助けをなし、目的の齟齬そごする、これよりはなはだしきはなし。
経世の学、また講究すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そんなことよりも法師丸は、昨夜あれ迄順調に運びながら、最後の瀬戸際で折角の計畫が齟齬そごしたのが残念でならなかった。
それはまた、親の計画を齟齬そごさせ、娘を親からそむかせ、混雑と狼狽ろうばいとを親戚の間にき散らした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで兇漢は彼の計画を齟齬そごせしめ、あの宝石を奪われたのを知った時、如何いかに之を取返そうと誓ったでしょう。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
が、しかしそのタチバナなる名称は全く名実が齟齬そごしていて昔タチバナと称したものは断じてこの品ではないのである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
しかしこれらの心のいろいろのはたらきは必しも常に調和しているのではなく、その間に齟齬そごのあることがあり、時には衝突も生ずる。
王子と、ラプンツェルの場合も、たしかに、その懐姙、出産を要因として、二人の間の愛情が齟齬そごきたした。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
換言すれば人間の心に関する知識の科学的系統化とその応用が進んでいないために起こる齟齬そごの結果ではないかとも考えられるのである。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
二人はときどき気持の些細ささい齟齬そごを感じ、たがいの愛情をもってしてもそれを避けることができなかった。
その間に、私は四五百首の短歌を作つた。短歌! あの短歌を作るといふ事は、言ふまでもなく叙上じよじやうの心持と齟齬そごしてゐる。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「残酷って言うことを知らないからでしょう。」私の考えと、判事さんの話とは、少し齟齬そごするところがあった。
帰途 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
しかし物を言っている顔の大写しなどの場合には、この耳と目との空間知覚の齟齬そごが多少は起こるかもしれない。
耳と目 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
人間の智性などというものは、かくも脆弱ぜいじゃくなものか。ひとたびその叡智に齟齬そごを来すと、こうも愚にかえるものだろうか。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだしこの亡邸の一挙たる、彼が身世しんせい齟齬そごの第一着にして、彼れみずからその猛気を用いたる劈頭へきとうに加えたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ゆえに名称のために拘束せられてその信ずるところの真理を主張するあたわず、あるいは真理を主張してかえってその名称と齟齬そごするものあり。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
おおい平生へいぜい思想しそう齟齬そごするものあり、また正しく符合ふごうするものもありて、これをようするに今度の航海は
もし然らずしてこの二者の至り及ぶところの度を誤り、わずかに齟齬そごすることあれば、たちまち不都合を生じてわざわいの原因となるべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人々は各々その好むところに従って任意にこの語を用いているようであり、従ってその間には往々齟齬そごし矛盾するところさえもありげに見える。
日本精神について (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
この上、徳川家とのあいだに、感情の齟齬そごなどあらば大不吉、と唯々無事を祈る気持しかなかったのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私たちの間で話されていることについてのお互の根本的な理解で、齟齬そごしているところは無いと信じます。
これは決定的な敗戦の因をなすものであるが、光秀の性格とここ数日の齟齬そごがかくさせたもので、彼自身にも、どうにもならないものだったろう。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはワーロージャという青年が、自分の個人的な行動からその列車にのり組んだ仲間全体の計画を齟齬そごさせた責任を感じて、自殺しかけて失敗する。
広場 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
またこの結果が熱の器械的等量の電気的測定の結果と器械的測定の結果との齟齬そごを撤回したので、ジュールはたいそう喜んだ手紙をレーリーに寄せた。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
主人は椅子から飛び上つた。彼は自分の油断を自覚した。計画の齟齬そごを知つた。彼はムカ/\とした。
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
不平煩悶はんもんにも相感じ、気が気に通じ心が心を喚起よびおこし決して齟齬そご扞格かんかくする者で無い、と今日が日まで文三は思っていたに
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「必ず、大坂表にも聞えておりましょうし、かくては、相互の御意志に、齟齬そごが増すばかりですが」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また父を異にした子女の間に感情の齟齬そごが多くて一家の平和を破る事にも気が附いたに違いない。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
甲の場合に試験した結果と乙の結果と全然齟齬そごしたりするのは畢竟ひっきょうこのためである。
物理学の応用について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ところが、明日ともいわず、その晩のうちに、呉軍のほうから積極的作戦に出てきたので、曹休の計は、それを行う前に、根本から齟齬そごを来してしまった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鴎外のロマンチシズム、その中挫、ゲーテ的なものの空想と現実との齟齬そご、大変面白いのです。
一切は大賀一味の逮捕たいほと、露顕ろけんによって齟齬そごしてしまった。のみならず、甲軍の方策は、早くも徳川方に読み抜かれてしまったわけである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのような感情の齟齬そごが、帰るまで、遂に彼らの間から消えなかった。七日いて、彼らは謂わば喧嘩別れのように、佃は東京へ、伸子はKへと、別々に立った。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
事ごとにこういう齟齬そごばかり踏んだ甲軍は、もう後ろに迫っている徳川、織田の聯合軍に対して、一刻も晏如あんじょとしてはいられない状態になっていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言行齟齬そごするとは、議論に言うところと実地に行なうところと一様ならずということなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「昔日の事をお忘れなく。必ずとも、孔明の計と齟齬そご遊ばさぬように」といって去った。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
りとてただこれを口に言うばかりでなく、近く自分の身より始めて、仮初かりそめにも言行齟齬そごしてはまぬ事だと、ず一身の私をつつしみ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
明智が馬鹿野郎、馬鹿野郎と罵ったのも無理ではない。折角、彼が単身、敵の背後を襲って、屋根の上で賊を引捕えようとした計画が、すっかり齟齬そごしてしまったのだ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いろんな齟齬そごのうちに、富岡は、自分のからだをもてあましてしまつてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
この前提が実用上無謀ならざる事は数回同じ実験を繰返す時はおのずから明らかなるべきも、とにかくここに予言者と被予言者との期待に一種の齟齬そごあるを認め得べし。
自然現象の予報 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうしたことから、お二人の計画は、全く齟齬そごしてしまったのでございます。
へい将軍も、将軍も、はやはや退き給え。丞相のご命令である。——北原も味方の敗れとなり、浮橋を焼く計もことごとく齟齬そごいたして、蜀勢はみな敗れ去った」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ等の、相互の生活が結合しないうちは何にも影響のないことであって、いざ一家を持つと種々な面倒や感情の齟齬そごを来しそうな点について、出来る丈精密な熟議を凝します。
男女交際より家庭生活へ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「何たることだ」と、予想の逆転と、はかりごと齟齬そごに、鬱憤うっぷんのやりばもなく、仮病をとなえて、一室のなかに耳をふさぎ眼を閉じていたのは呉侯孫権だった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに事は志と齟齬そごして、富井女史は故郷に帰るの不幸にえり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
欧州戦争の為に、出征、負傷、財産の減少、企業の中絶、凡ての計画が齟齬そごしてからは、已むを得ず、学生町で、下宿業などを始めるようになったが彼は到底商売人ではなかった。
二人のセルヴィヤ人 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
つまりは諸氏の望みと諸氏の用意との間に齟齬そごがあったのである。
予定が狂いすぎる。思わぬ障害が起り過ぎる。——阿賀妻は海に向いてくンと洟汁はなをかんだ。——だが、これも、移住を思いたった日からのさまざまな齟齬そごのうちの一つかも知れない。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
魏の進撃が、思いのほか遅かったのは、曹仁が樊城をたつときから、参謀の満寵と夏侯存かこうぞんなどのあいだに、作戦上の意見に齟齬そごがあって、容易に出足が一決しなかったためである。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お馨さんは常に日米感情の齟齬そごを憂えて居る女であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼は自分の計画の齟齬そごしなかったことに興味を覚えた。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
そうして人間にはこれと齟齬そごする病的な状態がある。
母性偏重を排す (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「は。……為に、大いなる齟齬そごきたしまして」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頬を赤くして云った、「雄大に、野放図に、百年の計に齟齬そごを来さないよう充分に土地を取ってもらいたい、このサッポロをごらん下されたか? 初代の判官島団右衛門どのの計画によれば、——」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
こう二つの足らない強力な信玄政治は、却って一族の和を齟齬そごしはじめた。ひいては、信玄時代には、上下一般の信条だった——甲州ノ四境ハ一歩モ敵ニ踏マセタルタメシナシ——という誇りにも、
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
如斯かくのごとく申上候へば、先般天誅之儀に付彼此かれこれ申上候と齟齬そご仕、御不審可被為在あらせらるべく候へ共、方今之時勢彼之者共かのものども厳科に被行候おこなはれさふら
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さまで心事の齟齬そごしたるものにあらざればなり。
彼女はそれに出会うと、一種の齟齬そごを感じた。
(何か、大事の企画が、齟齬そごしたのであろう)
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
近似的の方則をどこまでも適用せんとして失敗し、「理論と実際の齟齬そご」という標語を真向にかざして学者を毛嫌いする世人の少なくないのは、これらの方則の近似的な事を忘れているためである場合もある。
方則について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼が心事は、またこの挙において齟齬そごせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
教育の目的、齟齬そごしたるものというべし。
慶応義塾学生諸氏に告ぐ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
文字の上の知識としては、支那のはもとより、支那の文字を介して印度のが学ばれも説かれもし、相互に齟齬そごし矛盾した種々のものが存在したけれども、日本人の生活は一つの生活として歴史的に発展して来たのである。
また働きに対する報酬の齟齬そご
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ある停留所に電車が到着する時刻の齟齬そごの状況は、もし個々の車の速度ならびに停留時間の平均誤差が与えられれば、容易に計算する事ができるが、要するに出発点からの距離が大きくなるほど大きくなるのは明らかである。
電車の混雑について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
わたくしが話す乞食の生活の経験、啓司が話す勉強生活の齟齬そごの経験、何の種類にしろ女が一たんおのれの偽装を剥がれたと思う男には、もはや心置きなく又、逃さじと心を相手に身を捨てゝ心を通わして行くものであります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もとより文献の解釈が文献そのものの検討のみによってなし得られるというのではないが、少くともそれを先にすべきものであり、そうしてそれによって明かに考え得られることと齟齬そごしない解釈をすることが必要なのである。
ただ、雪子自身は内心はかく、表面は「それくらいなことで傷つきはしない」と云う建前でいたので、そんな事件のために妙子と感情が齟齬そごする結果にはならず、かえって義兄に対して妙子をかばうと云う風であった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
できあがったものは形式上普通の詩や小説と全く同じであるから読むほうではそういうつもりで読み、またそういうものとしての論理や性格やの統一を要求しているのに、内容にはどうしてもどこかに分裂があり齟齬そごがあるのを免れ難いからである。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
候わば今日道通りの民家を焼払わしめ、明日は高清水を踏潰ふみつぶし候わん、と氏郷は云ったが、目論見もくろみ齟齬そごした政宗は無念さの余りに第二の一手を出して、毒を仕込み置いたる茶を立てて氏郷に飲ませた、と云われている。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
のみならず、たとえ具体的にはいかに現在の科学と齟齬そごしても、考えの方向において多くの場合にねらいをはずれていないこの書物の内容からいかに多くの暗示が得られるであろうかという事はだれでも自然に思い及ばないわけには行かないであろう。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「去年の初秋からでございますよ。にわかにおだやかになりまして私の申す意見などにも、耳を傾けるようになりました。よく口癖に申したりします。『事というのは齟齬そごするものだ。わしはこれからは我は張らぬよ』このように申すのでございますよ」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時に王既に今川了俊いまがわりょうしゅんの為に圧迫せられて衰勢に陥り、征西将軍の職を後村上帝ごむらかみていの皇子良成ながなり王に譲り、筑後ちくご矢部やべに閑居し、読経礼仏を事として、兵政のつとめをば執りたまわず、年代齟齬そごするに似たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
女子と小人は養い難し——駒井は、やっぱりそうしたものかなあ、そうして、自分たちが必ずしも大人君子というわけではないが、ともかくも理想の天地を拓こうとする途に向っても、必ずしもその理解者のみが集まるものではない、かえって、その目的と全く齟齬そごした仲間を
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
反訳叢書ほんやくそうしょは本月うちに発兌はつだせんといひしを如何にせしやらん、今においてその事なし、この雑誌には余も頼まれて露文を反訳せしにより、その飜訳料をもて本月の費用にあてんと思ひをりしに今は空だのめとなりしか、人事齟齬そご多し、覚えず一歎を発す。」
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
それから易介になると、絶命推定時刻は法水の推定どおりだったけれども、異様な緩性窒息の原因や、絶命時刻と齟齬そごしている脈動や呼吸などについては、まさに甲論乙駁おつばくの形で、わけても、易介が傴僂ポット病患者であるところから、その点に関した偏見が多いようだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そもそも人間の生涯に思想なる者の発萌はつばうし来るより、善美をねがふて醜悪を忌むは自然の理なり、而して世に熟せず、世の奥に貫かぬ心には、人世の不調子不都合を見初みそむる時に、初理想の甚だ齟齬そごせるを感じ、実世界の風物何となく人をして惨惻さんそくたらしむ。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
唯僕は前に挙げた「伝記私言数則」の中に、「天みづから言はず、人をして言はしむ、されど人の声は、必ずしも天の声と一致せず、人の褒貶毀誉ほうへんきよは、数々しばしば天の公裁と齟齬そごす。人世尤も憐むべきは、生前天の声を聞かずして死に入るものと為す。後人こうじんは彼が為めに、天に代り死後の知己たらざるべからず」の語を読んだ時
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)