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驚愕
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きょうがく
ふりがな文庫
“
驚愕
(
きょうがく
)” の例文
もっともそれは子供心にそういう風に受け取ってしまったのかもしれないが、とにかくそれは当時の私には
驚愕
(
きょうがく
)
に近いものであった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ミサコの馬の脚のような涙に
驚愕
(
きょうがく
)
して、彼女の夫は帽子をつかむと街路に逃げだした。うすい唇に白い歯をうかべてカリタが云った。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
そこに聴くことのできた話の内容は、一向に二人の関係について予備知識をもたなかった僕を、
驚愕
(
きょうがく
)
の
淵
(
ふち
)
につきおとすに十分だった。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
期せずして、伝六と泥斎の口から
驚愕
(
きょうがく
)
の声が放たれました。紛れもない人の足首がぶきみにぬッと窯の口からのぞいていたからです。
右門捕物帖:27 献上博多人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
階段の上で人々の聞いた言葉というのは、猩々の悪鬼のような声とまじった、そのフランス人の恐怖と
驚愕
(
きょうがく
)
との叫び声であったのだ。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
▼ もっと見る
外記は訝しそうな顔をし、志摩は
驚愕
(
きょうがく
)
の眼で甲斐を見た。甲斐は黙って、向うに安芸を待っている、申次の大井新右衛門を見やった。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
たしかに
呂宋兵衛
(
るそんべえ
)
のからだのどこかに、
焔
(
ほのお
)
をあげて
噛
(
か
)
みついたにちがいない。あッと、相手の
驚愕
(
きょうがく
)
した声が竹童の耳にも聞きとれた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彦太郎は我にもなく
驚愕
(
きょうがく
)
した自分がてれ臭くなったので、卯平に声をかけ、ごりょんさんはまださっぱりせんらしいな、と云った。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
あの時の
驚愕
(
きょうがく
)
がやはり神経に響いているのであろうか、しかし、驚愕とも云えない位、あれはほんの数秒間の出来事であったのだ。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
だから彼もしばらくの間は、恐怖と
驚愕
(
きょうがく
)
とを代る代る醜い顔に表しながら、ただ、漫然と自失した
眼
(
まなこ
)
を相手に注ぐよりほかはなかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「いったいおれはまあどうしたというんだろう!」と彼はまた身を起こしながら、深い
驚愕
(
きょうがく
)
に襲われたもののように、ことばを続けた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その時どんなに
驚愕
(
きょうがく
)
し恐怖するだろうと思えば、姉さんと二人きりの夜に自殺するのは気が重くて、とても出来そうも無かったのです。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
けれども、その——一見、安らかな死の影とも思われるものは、同時にまた、不意の
驚愕
(
きょうがく
)
が起した、虚心状態とも推察されるのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
怖
(
こわ
)
かっただけで、無事にすんだのである。その顔色が、だんだん血の
気
(
け
)
を帯びてくるにつれて、不安と
驚愕
(
きょうがく
)
が、人々の心から消えて行く。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
咽喉仏
(
のどぼとけ
)
をがくがくさせて何かささやいている、細かくからだを振りながら聞いている平べったい彦根殿の顔が、見るみる
驚愕
(
きょうがく
)
にゆがんだ。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
利慾を離れる事の出来ない彼は、
驚愕
(
きょうがく
)
の念を以て、細君の父にのみあって、自分には全く欠乏している、一種の
怪力
(
かいりょく
)
を眺めた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
想像をこえたそのばかげた興奮ぶりへの
驚愕
(
きょうがく
)
や嘲笑、それらがあったのかどうか、いまはなんとも確言することができない。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
最初の発見者が駈けつけた
刹那
(
せつな
)
に、ジャックは
屍
(
し
)
体を離れて、その時は静かに、そこらの暗い一隅に立って人々の
驚愕
(
きょうがく
)
を見ていたに相違ない。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そして殊に眼前にただ
木偶坊
(
でくのぼう
)
のように
驚愕
(
きょうがく
)
している兄の様子が、何とも言えず腹立たしくて、私はまた頭を掻き
毮
(
むし
)
りたいような気持であった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
海をはじめて見た幼い日の
驚愕
(
きょうがく
)
の念は、それが引き起した錯覚に強調されて、いつまでも
滅
(
き
)
えずに残って来ているのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
氏ノ顔ニ
驚愕
(
きょうがく
)
ノ色ガ浮カブ。血壓計ガ破レテシマウホド血壓ガ高イト云ウ。至急スベテノ仕事ヲ廃シ、絶対安静ノ必要ガアルト云ワレル。………
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
恩田の顔には、けだものが鏡の前に立たされたような
驚愕
(
きょうがく
)
の表情があった。お化けにでも出っくわしたような恐怖の色が、まざまざと読まれた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
すべてこれらのことが一瞬の
閃
(
ひらめ
)
きの間であった。思い設けないことに対する一種の
驚愕
(
きょうがく
)
が、今まで腰かけていたべンチの上から彼を
弾
(
はじ
)
き下ろした。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
三度紀昌が
真面目
(
まじめ
)
な顔をして同じ問を
繰返
(
くりかえ
)
した時、始めて主人の顔に
驚愕
(
きょうがく
)
の色が現れた。彼は客の眼を
凝乎
(
じっ
)
と見詰める。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼は最後についている前科調書の所をいきなりあけたが、何ともつかぬ一種の
驚愕
(
きょうがく
)
の表情を示して星田を見なおした。
殺人迷路:08 (連作探偵小説第八回)
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
と
驚愕
(
きょうがく
)
の叫びを上げた。彼女は顔色を変えて、なにやら訳の分からぬことを口走りながら部屋を出ていってしまった。
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
そうして理解ある凡ての人々の新たな
驚愕
(
きょうがく
)
となっています。私たち志を同じくする者は、更に力を集めて上人の徳を永く世に讃えようとするのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
なほフェノロサがその編纂目録において浮世絵板物の一枚ごとにその
出板
(
しゅっぱん
)
年代を記載したるは頗る
驚愕
(
きょうがく
)
すべき事とす。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、おろおろごえで、取りすがる女房の、顔には血の気もなかったが、さすが、主人は
驚愕
(
きょうがく
)
の中にも沈着さを失わず
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
いや、
驚愕
(
きょうがく
)
したのであった。少年は、青と白のしまのある、リンネルの、軽快な、ブラウスのついた服を着ていた。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
一座の人の顔は
驚愕
(
きょうがく
)
に化石しますが、良海尼だけはかえって女らしい柔かさと落着きを取戻して、何の恐れる色もなく静かに平次を見上げるのでした。
銭形平次捕物控:069 金の鯉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかれども今回余がもっとも
驚愕
(
きょうがく
)
したるところのもの二あり。その一は生活社会の大いに進歩したることこれなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
人々の
驚愕
(
きょうがく
)
、悲鳴をよそに、二人の科学者は、泰然として、世にも不思議な海洋中の大渦巻に
見惚
(
みと
)
れている。僕は、恐怖を忘れて、二老人の顔をみた。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
それは一種の野性の
驚愕
(
きょうがく
)
であった。彼はそれをじっと見ていた。それだけである。しかし彼の考えは何であったか。それを推察するは不可能であろう。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その真白く剥き出した両眼と、ガックリ
開
(
あ
)
いた
鬚
(
ひげ
)
だらけの
下顎
(
したあご
)
に、云い知れぬ
驚愕
(
きょうがく
)
と恐怖を凝固させたまま……。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
七年という言葉に
驚愕
(
きょうがく
)
しながら太田は監房へ帰った。七年という刑は岡田が転向を
肯
(
がえん
)
じなかったこと、彼が敵の前に屈伏しなかったことを物語っている。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
その頃十八、九歳の田舎青年であった余は、この衣食問題を提供されて実は
一方
(
ひとかた
)
ならず
驚愕
(
きょうがく
)
したのであった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
殊
(
こと
)
に、この
知
(
し
)
らせを
受
(
う
)
けて、
天地
(
てんち
)
が
覆
(
くつが
)
えった
程
(
ほど
)
の
驚愕
(
きょうがく
)
を
覚
(
おぼ
)
えたのは、
南町奉行
(
みなみまちぶぎょう
)
本多信濃守
(
ほんだしなののかみ
)
の
妹
(
いもうと
)
お
蓮
(
れん
)
であろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
... 抱きかかえたまま、前面に連れて来て、丘の傾斜面にそっと横たえる。突然、
驚愕
(
きょうがく
)
の色)なよたけ! 死んじゃいけない! しっかりおし! しっかりおし!
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
大臣に見られてはじめて顔を夜着の中に隠して紛らわすようにした。大臣は
驚愕
(
きょうがく
)
した。
無礼
(
ぶれい
)
だと思った。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
大抵の子供は
驚愕
(
きょうがく
)
のあまり、悲鳴を上げて逃げ出すのがあたりまえですけれども、茂太郎は驚きません。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
思えば、それが私の狭心症の最初の軽微な発作だったのだろうが、それまではそれについて何の予兆もなかったので、そのときはただ自分の
驚愕
(
きょうがく
)
のためかと思った。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
一同は
驚愕
(
きょうがく
)
と
危懼
(
きく
)
の念にあおくなった。七人の
凶暴無慚
(
きょうぼうむざん
)
の悪漢が、いまこの島を
徘徊
(
はいかい
)
している。かれらは人を殺すことは草をきるよりもよういに思う者どもである。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
当時も四、五羽相集め、暇さいあればこれを
撫育
(
ぶいく
)
いたしおり候に、小鳥もまた
押馴
(
おうじゅん
)
し、食物を掌上に載せ出だせば、来たりてこれを
啄
(
ついば
)
み、少しも
驚愕
(
きょうがく
)
畏懼
(
いく
)
の風これなし。
妖怪報告
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
佐佐の顔には、不意打ちに会ったような、
驚愕
(
きょうがく
)
の色が見えたが、それはすぐに消えて、険しくなった目が、いちの
面
(
おもて
)
に注がれた。
憎悪
(
ぞうお
)
を帯びた驚異の目とでも言おうか。
最後の一句
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
葉子は世人と一緒に
驚愕
(
きょうがく
)
した。世人は氏の自殺に対して、病苦、家庭苦、芸術苦、恋愛苦或いはもっと漠然とした透徹した氏の人生観、一つ一つ別の理由をあて
嵌
(
は
)
めた。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
また
凄
(
すご
)
かったのは神田和泉町の第二医院の火事で、あまりの
驚愕
(
きょうがく
)
に看護婦に気のふれたのがあって、げらげら笑うのを
朋輩
(
ほうばい
)
が三、四人して連れて来るのを見たことがある。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
鷺太郎も
吃驚
(
びっくり
)
した。このはじめて来る他人の家に、地下室があろうなんて、畔柳博士はどうして知っているのであろう。それにしても、山鹿の
驚愕
(
きょうがく
)
は何を意味するのか——。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
潤滑油が
洩
(
も
)
れ始めた時も、不安も
驚愕
(
きょうがく
)
もなかった。この旅客機に乗っている目的は自分にも判っているつもりだったが、それが
墜
(
お
)
ちるとか炎上するという実感は全然なかった。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
それはなにか
驚愕
(
きょうがく
)
のような身振りに見えた。すると洋服を着た一人の男が人びとに頭を下げたのが見えた。石田はそこに起こったことが一人の人間の死を意味していることを直感した。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
“驚愕”の解説
驚愕(きょうがく、en: surprise)または驚き(おどろき)とは、動物が予期しない事象を体験したときに起こる瞬間的な感情をいう。他の感情に比べて単純かつ原始的で、生理的反応と強く結びついた情動である。驚いた状態をびっくりしたという。
(出典:Wikipedia)
驚
常用漢字
中学
部首:⾺
22画
愕
漢検1級
部首:⼼
12画
“驚愕”で始まる語句
驚愕狼狽
驚愕仕
驚愕顛動
驚愕交響曲