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香
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かん
ふりがな文庫
“
香
(
かん
)” の例文
立て続けにも一口飲んで、徳利を膝の上に両手で握りしめたまま、口の中に残った
香
(
かん
)
ばしい
後味
(
あとあじ
)
を、ぴちゃりぴちゃりと舌鼓うった。
特殊部落の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
はなはだ
香
(
かん
)
ばしからぬ状態にあったので、フランス本土からわざわざ審査に来た小児医は、ただただ鼻をおおって閉口するばかり。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
光子の突きとめたことは
香
(
かん
)
ばしいことではなかった。そのころの精神病院は小松川にフーテン院というものがあったし、巣鴨病院があった。
明治開化 安吾捕物:10 その九 覆面屋敷
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
路傍の
籬
(
まがき
)
の向こうには、眼には見えなかったがある庭に
蜜蜂
(
みつばち
)
の巣があって、その
香
(
かん
)
ばしい音楽を空気中にみなぎらしていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それは
香
(
かん
)
ばしい汗と
獰猛
(
どうもう
)
な征服欲との闘いといってもいい。西門慶の予想は、はるかに期待を
超
(
こ
)
えていた。不覚にも彼さえつかれはてていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
頬に通う
香
(
かん
)
ばしい息、——それよりもガラッ八の本能は、話の重大性を直感して、この女の言いなり放題に、茶店の奥へ通る気になったのです。
銭形平次捕物控:045 御落胤殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
敬太郎はこの
失踪者
(
しっそうしゃ
)
の友人として、彼の
香
(
かん
)
ばしからぬ行為に立ち入った関係でもあるかのごとく主人から取扱われるのをはなはだ迷惑に思った。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
赫々
(
かっかく
)
と照っていた日の光りが少し蔭ると、天地が
仄
(
ほんの
)
りと暗くなって、
何処
(
いずく
)
ともなく冷たい、
香
(
かん
)
ばしい風が吹いて来る。
稚子ヶ淵
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
お
家
(
うち
)
の
外
(
そと
)
を
歩
(
ある
)
き
廻
(
まは
)
つても、
石垣
(
いしがき
)
のところには
黄色
(
きいろ
)
い
木苺
(
きいちご
)
の
實
(
み
)
が
生
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
るし、
竹籔
(
たけやぶ
)
のかげの
高
(
たか
)
い
榎木
(
えのき
)
の
下
(
した
)
には、
香
(
かん
)
ばしい
小
(
ちひ
)
さな
實
(
み
)
が
落
(
お
)
ちて
居
(
ゐ
)
ました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
申すも憚られますが、女と一つ
衾
(
しとね
)
でも、この時くらい、人肌のしっとりとした暖さを感じた覚えがありません。全身湯を浴びて、
香
(
かん
)
ばしい汗になった。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人が、伊東へ一里ばかりの海岸へ来たときに、道の両側に蜜柑畑があり、その中には早しらじらと花の咲いたのがあって、
香
(
かん
)
ばしい匂いが、鼻を衝いた。
船医の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
元来親分気のある将門が、首を垂れ膝を折つて頼まれて見ると、
余
(
あま
)
り
香
(
かん
)
ばしくは無いと思ひながらも、仕方が無い、口をきいてやらう、といふことになつた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
何処からともなく、
香
(
かん
)
ばしい花の匂ひが来る。
小径
(
こみち
)
の方で、ボンソア……と
挨拶
(
あいさつ
)
してゐる女の声がしてゐる。薄い雲が星をかいくゞつて流れてゐる。湖は見えない。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
大体
(
だいたい
)
は
地上
(
ちじょう
)
の
庭園
(
ていえん
)
とさしたる
相違
(
そうい
)
もございませぬが、ただあんなにも
冴
(
さ
)
えた
草木
(
そうもく
)
の
色
(
いろ
)
、あんなにも
香
(
かん
)
ばしい
土
(
つち
)
の
匂
(
にお
)
いは、
地上
(
ちじょう
)
の
何所
(
どこ
)
にも
見受
(
みう
)
けることはできませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
町では煙草のけむりが鼻をかすめ、珈琲が
香
(
かん
)
ばしく、電車のレールは銀のやうに光り、オフイスの窓硝子は光線を
反映
(
なげかへ
)
し、工場の機械はカタンカタン
響々
(
ごう/\
)
と、規則正しく𢌞つてゐる。
春
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それに連中の間を泳ぎまわっている葉子の
噂
(
うわさ
)
もあまり
香
(
かん
)
ばしいものではなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは一種
香
(
かん
)
ばしいような、そして官能的なところもある悪臭だった。彼は歩いているうちに、臭気がたいへん濃く
沈澱
(
ちんでん
)
している地区と、そうでなく臭気の淡い地区とがあるのを発見した。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
夏目先生にその話をしたら早速その当時書いていた小説の中の点景材料に使われた。須永というあまり
香
(
かん
)
ばしからぬ役割の作中人物の所業としてそれが後世に伝わることになってしまった。
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
かつて
皆川淇園
(
みながわきえん
)
は、酒数献にいたれるときは味なく、
肴
(
さかな
)
数種におよぶときは
美
(
うま
)
みなく、
煙草
(
たばこ
)
数ふくに及ぶときは
苦
(
にが
)
みを生じ、茶数
椀
(
わん
)
におよぶときは
香
(
かん
)
ばしからずと言ったが、誠にその通りで
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
暖は
城墟
(
じやうきよ
)
に入つて春樹
香
(
かん
)
ばし
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
香
(
かん
)
ばしき風にふかれて
艸千里
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
その為には、妙子の頬を滅茶滅茶に打って、私自身もさめざめと泣き乍ら、その
香
(
かん
)
ばしい涙の醍醐味を、倦くことを知らずに啜ったこともありました。
新奇談クラブ:02 第二夜 匂う踊り子
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
元々、清水長左衛門宗治殿という
武士
(
もののふ
)
は、骨まで
香
(
かん
)
ばしいお人だったに違いない。こんどの講和に際しても
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余後はなはだ
香
(
かん
)
ばしいというわけにはゆかず、今年の冬はぜひとも巴里の冷たい霧から逃れ、南仏蘭西の海岸に日光と塩分を求めて転地しなければならぬという
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おじいさんは、そのかんのふたを
開
(
あ
)
けました。すると
香
(
かん
)
ばしいかおりがしたのです。
片田舎にあった話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
または永き日を、かつ永くする
虻
(
あぶ
)
のつとめを果したる後、
蕋
(
ずい
)
に
凝
(
こ
)
る甘き露を吸い
損
(
そこ
)
ねて、
落椿
(
おちつばき
)
の下に、伏せられながら、世を
香
(
かん
)
ばしく眠っているかも知れぬ。とにかく静かなものだ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
カルーソーが生きている頃から、カルーソーそっくりの声を出したが、カルーソーの歿後は
香
(
かん
)
ばしいこともない。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
族長
(
カボラル
)
を先に立て、総員十六人の村中が、一人残らず『極楽荘』の門の前に集まって来、そこでもじもじと身動きしていたが、ごった煮はいよいよ
香
(
かん
)
ばしく煮えあがる。
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「御身とも、百戦万難の中を久しく共歓共苦してきたが、ついにきょうがお別れとなった。晩節を
香
(
かん
)
ばしゅうせよ。また丞相とともに、あとの幼き者たちをたのむぞ」
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
両手を三十郎の首に巻いて、
香
(
かん
)
ばしい唇が、三十郎の眼の前に、毒の花のように咲きこぼれます。
新奇談クラブ:01 第一夜 初夜を盗む
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
よって、これにほかから
香
(
かん
)
ばしい餌を投げ与えてごらんなさい。二虎は猛然、本性をあらわして
咬
(
か
)
みあいましょう。必ず一虎は仆れ、一虎は勝てりといえども満身
痍
(
きず
)
だらけになります。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そうかね、その言葉の様子じゃ、あまり
香
(
かん
)
ばしい事も無さ
相
(
そう
)
だ、まア、辛抱しねえ」
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
春の夜の外気は恋人の呼吸のように
香
(
かん
)
ばしく温かですし、
烟
(
けぶ
)
ったような朧月に照されて、夢見る如く眼下に展開した大都の景色など見ると、馴れては居ると言っても、さすがに悪い心持はしません。
新奇談クラブ:04 第四夜 恋の不在証明
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あまり
香
(
かん
)
ばしい收穫もなかつた樣子です。
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“香”の解説
香(こう、en: incense)とは、本来、伽羅、沈香、白檀などの天然香木の香りをさす。そこから線香、焼香、抹香、塗香等の香り、またこれらの総称として用いられる。お香、御香ともいう。
(出典:Wikipedia)
香
常用漢字
小4
部首:⾹
9画
“香”を含む語句
香花
香物
名香
香気
薫香
香油
香料
鬱金香
麝香
芳香
香水
茴香
香炉
沈香
涙香
香煎
香箱
香染
香具
香山
...