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頬辺
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ほっぺた
ふりがな文庫
“
頬辺
(
ほっぺた
)” の例文
旧字:
頬邊
チチッ、チチッ、一人でお食べなと言っても
肯
(
き
)
かない。
頬辺
(
ほっぺた
)
を横に振っても
肯
(
き
)
かない。で、チイチイチイ……おなかが空いたの。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒼い浅黒い顔をなお蒼くして、机に肱ついてる片手を、縮れ乱れた長い髪の毛の中にさしこんで、口と
頬辺
(
ほっぺた
)
とで笑い、きつい眼付をしていた。
溺るるもの
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「お前は是までそんなに私を見損なって居たのか。今年はお前の小さな娘のところへ土産まで持って来た。あの児の紅い
頬辺
(
ほっぺた
)
もこの私のこころざしだ。」
三人の訪問者
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
汽車賃もない癖に、坑夫になろうなんて
呑込顔
(
のみこみがお
)
に受合ったんだから、自分は少し
図迂図迂
(
ずうずう
)
しい人間であったんだと気がついたら、急に
頬辺
(
ほっぺた
)
が熱くなった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
するものあれば
頬辺
(
ほっぺた
)
をつねって懲し或は芸者の顕官に寵せられて心おごるもの或は芸人俳優者の徒にして
奢侈
(
しゃし
)
飽く事なきものあらば随所に事をかまえて其の胆を
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「まあ、ひどい風だことねえ。」といって、泣いているかねちゃんを自分の傍に引き寄せて、
妾
(
あたし
)
の身体は濡れていてよ、と温かい
唇
(
くち
)
をかねちゃんの薔薇色の
頬辺
(
ほっぺた
)
にあてて
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
二人のごくきたない小僧が、一人はパンをもち一人は油
壜
(
びん
)
をもって上がってくるのにすれ違った。彼はその二人の
頬辺
(
ほっぺた
)
を
馴
(
な
)
れ馴れしくつねってやった。顔渋めてる門番に微笑みかけた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
痩
(
や
)
せてげっそりと落ちた
頬辺
(
ほっぺた
)
のあたりを指で軽く
擦
(
さす
)
りながらシゲシゲと彼を
眺
(
なが
)
めていたが、急に大きな声を出して笑い出した。そして横手の方にある大きな板の
衝立
(
ついたて
)
のようなものの
蔭
(
かげ
)
へ向って
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
と耳の
許
(
とこ
)
へ口をつける……
頬辺
(
ほっぺた
)
が
冷
(
ひや
)
りとするわね、
鬢
(
びん
)
の毛で。それだけ
内証
(
ないしょ
)
のつもりだろうが、あの
娘
(
こ
)
だもの、
皆
(
みんな
)
、聞えるよ。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
仙台
名影町
(
なかげまち
)
の吉田屋という旅人宿兼下宿の奥二階で、そこからある学校へ通っている年の若い教師の客をつかまえて、
頬辺
(
ほっぺた
)
の紅い宿の娘がそんなことを言って笑った。
足袋
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
赤い
頬辺
(
ほっぺた
)
が笑っていた。無数の手がこちらをさし招いていた。するうちにどしりと躓き倒れた……。
特殊部落の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
顔を洗う所も見つけた。台所を下りて長い流の前へ立って、冷たい水で、申し訳のために
頬辺
(
ほっぺた
)
を
撫
(
な
)
でて置いた。こうなると
叮嚀
(
ていねい
)
に顔なんか洗うのは馬鹿馬鹿しくなる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
太郎は冷汗を流しているとお婆さんは太郎の
頬辺
(
ほっぺた
)
をつねったり、太郎の
襟元
(
えりもと
)
を捕えて引き
摺
(
ず
)
るのであります。だから、太郎は勇が泣いて帰ればすぐ逃げて姿を隠すのが常であります。
百合の花
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その「もっとも堂々たる人物」は、笑いながらミンナの
頬辺
(
ほっぺた
)
をつついて、「卓越した女」であると、クリストフへ断言していた。この高等法院顧問官は、クリストフの身の上を知っているらしかった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
苔
(
こけ
)
の生えた
桶
(
おけ
)
の中から、
豆腐
(
とうふ
)
を
半挺
(
はんちょう
)
、
皺手
(
しわで
)
に白く積んで、そりゃそりゃと、
頬辺
(
ほっぺた
)
の
処
(
ところ
)
へ
突出
(
つきだ
)
してくれたですが、どうしてこれが食べられますか。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相手から先を越されて
頬辺
(
ほっぺた
)
に拳固を一つ喰わせられましたが、一足よろめきながら、側の卓子の上にあった
空
(
から
)
のビール瓶を取って、向うの奴の脳天から打ち下したんです。
変な男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「何だか
頬辺
(
ほっぺた
)
が
熱
(
ほて
)
って来たような気がする」
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お嬢さんが
縋
(
すが
)
りついて留めてたがね。へッ
被成
(
なさる
)
もんだ、あの爺を
庇
(
かば
)
う位なら、
俺
(
おいら
)
の
頬辺
(
ほっぺた
)
ぐらい指で
突
(
つつ
)
いてくれるが
可
(
い
)
い、と其奴が
癪
(
しゃく
)
に障ったからよ。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雨戸をそっと開いて逃げていっても、誰にも気付かれないかも知れない、と思う心が自分ながら浅間しくなって、も一度強く女を揺ぶり、眼を覚しかけた所を、更に
頬辺
(
ほっぺた
)
を一つ叩いてやった。
悪夢
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
悚
(
ぞっ
)
と涼しく成ると、例の
頬辺
(
ほっぺた
)
が
冷
(
ひや
)
りとしました、螢の留った処です。——裏を透して、口の
裡
(
うち
)
へ、真珠でも含んだかと思う、光るように胸へ映りました。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
世渡
(
よわたり
)
やここに一
人
(
にん
)
、飴屋の親仁は変な顔。
叱言
(
こごと
)
を、と思う
頬辺
(
ほっぺた
)
を窪めて、もぐもぐと呑込んで
黙言
(
だんまり
)
の、眉毛をもじゃ。若い妓は気の毒なり、小児たちは常得意。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
処
(
ところ
)
が、並んで真中へ立ちました。近くに居ると、
頬辺
(
ほっぺた
)
がほてるくらい、つれの持った、いが、饅頭が、ほかりと暖い。暖いどころか、あつつ、と息を吹く次第で。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母
(
おっか
)
さんはそうじゃあない、もう助からない覚悟をして、うまれたばかり、一度か二度か、乳を
頬辺
(
ほっぺた
)
に当てたばかりの
嬰児
(
あかんぼ
)
を、見ず知らずの他人の手に渡すんだぜ。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自由に
揉
(
も
)
まれながら、どうだい
頬辺
(
ほっぺた
)
と膝へ、道士、逸人の面を
附着
(
くッつ
)
けたままで、口絵の色っぽい処を見せる、ゆうぜんが
溢出
(
はみで
)
るなぞは、地獄変相、極楽、いや天国変態の図だ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「春時分は、
筍
(
たけのこ
)
が掘って見たい筍が掘って見たいと、御主人を驚かして、お
惣菜
(
そうざい
)
にありつくのは誰さ。……ああ、おいしそうだ、
頬辺
(
ほっぺた
)
から、
菓汁
(
つゆ
)
が垂れているじゃありませんか。」
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「白粉に、玉と、この少し、蚊帳に映って青白くって、
頬辺
(
ほっぺた
)
にびんの毛の乱れた工合よ。玉に白粉と。……
此奴
(
こいつ
)
おいらんでいやあがる。今夜の連中にこのくらいなのは一人もねえ。」
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とか云って
遊女
(
おんな
)
が、その帯で
引張
(
ひっぱ
)
るか、
階子段
(
はしごだん
)
の下り口で、
遁
(
に
)
げる、引く、くるくる廻って、ぐいと胸で抱合った
機掛
(
きっかけ
)
に、
頬辺
(
ほっぺた
)
を
押着
(
おッつ
)
けて、大きな
結綿
(
ゆいわた
)
の紫が垂れ
掛
(
かか
)
っているじゃないか。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちと
躾
(
たしな
)
めるように言うと、一層
頬辺
(
ほっぺた
)
の色を
濃
(
こ
)
くして、ますます
気勢込
(
きおいこ
)
んで
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
麓
(
ふもと
)
の川の橋へかかると、鼠色の水が一杯で、ひだをうって
大蜿
(
おおうね
)
りに
蜒
(
うね
)
っちゃあ、どうどうッて聞えてさ。
真黒
(
まっくろ
)
な
線
(
すじ
)
のようになって、横ぶりにびしゃびしゃと
頬辺
(
ほっぺた
)
を打っちゃあ霙が消えるんだ。
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そんな脂切ったのがあるかと思うと、
病上
(
やみあが
)
りの
蒼
(
あお
)
っしょびれが、
頬辺
(
ほっぺた
)
を
凹
(
くぼ
)
まして、インバネスの下から信玄袋をぶら下げて、ごほごほ
咳
(
せき
)
をしながら、
日南
(
ひなた
)
を
摺足
(
すりあし
)
で
歩行
(
ある
)
いて行く。弟子廻りさ。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
頬辺
(
ほっぺた
)
を窪ますばかり、歯を吸込んで
附着
(
くッつ
)
けるんだ、
串戯
(
じょうだん
)
じゃねえ。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
藤助は、ぎょろりとしながら、
頬辺
(
ほっぺた
)
を平手で
敲
(
たた
)
いて
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
円輔はまた
耳朶
(
みみたぶ
)
へ掛けて
頬辺
(
ほっぺた
)
を
扱
(
こ
)
き上げて
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
左の
頬辺
(
ほっぺた
)
に
痣
(
あざ
)
があって第一円顔なんで。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、手拭で
頬辺
(
ほっぺた
)
を、つるりと
撫
(
な
)
でる。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
頬
部首:⾴
15画
辺
常用漢字
小4
部首:⾡
5画
“頬”で始まる語句
頬
頬杖
頬冠
頬張
頬被
頬骨
頬白
頬髯
頬桁
頬笑