おろ)” の例文
「オッと来たり、その棺桶は門口へおろいとけ。上から花輪をば、のせかけとけあ、おくれた奴の目印になろう。盗む者はあるめえ」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そういながら、わたくしるべく先方むこうおどろかさないように、しずかにしずかにこしおろして、この可愛かわい少女しょうじょとさしむかいになりました。
すると、唐突だしぬけに夕立がざつとおろして来た。八郎右衛門は羽織の事も光琳の事もすつかり忘れて、慌てて逃げ出して来た。
多分はずっと大昔から、食器を叩くことは食物を与えんとする信号であって、転じてはこの類の小さな神を招きおろす方式となっていたものであろう。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
門の戸は重い音を立てゝけられた。瑞木を車夫が下へおろすのと一緒に鏡子はころぶやうにして門をくゞつた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
訶和郎かわろは馬から鹿の毛皮で造られた馬氈ばせんおろして、その妻の背にかけた。月は昇った。訶和郎は奴国の追い手を警戒するために、剣を抜いたまま眠らなかった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
武村兵曹たけむらへいそうわたくしとは、じつ双肩さうけん重荷おもにおろしたやう心地こゝちがしたのである。じつに、うれしい、うれしい、うれしい。
自分じぶんかごつて、つなたかむねにひきあげさせて、つばめたまごむところをさぐるうちに、ふとひらたいものをつかみあてたので、うれしがつてかごおろ合圖あひずをしたところが
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
でこの逆上をやすには血液を従前のごとく体内の各部へ平均に分配しなければならん。そうするには逆かさに上った奴を下へおろさなくてはならん。その方にはいろいろある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さうして、おろされた。私のトランクは、とり下されて、馬車は、直ぐ動いていつた。
窓際まどぎは紫檀しだんたくはさんでこしおろし、おたがひつかがほでぼんやり煙草たばこをふかしてゐると、をんな型通かたどほ瓜子クワスワツアはこんでくる。一人ひとり丸顏まるがほ一人ひとり瓜實顏うりさねがほそれ口紅くちべにあかく、耳環みゝわ翡翠ひすゐあをい。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
又「それはわきゃアねえ、僕が鍋焼饂飩を売ってる場所は、毎晩高橋たかばしぎわへ荷をおろして、鍋焼饂飩と怒鳴どなって居るから、君が饂飩を喰う客のつもりで、そっと話をすれば知れる気遣きづかいはあるめえ」
金五郎は、玄関正面にかかっている柱時計をおろした。新品である。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
品子さんを天井裏から助けおろしたあとへ、身代りとして転がして置いたのじゃよ。だから、この血は人間の血じゃない。猫の血じゃ。猫めダンビラで以てスッポリと首を斬られていることじゃろうて。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たこ見物けんぶつ草臥くたびれました。もうそろ/\おろしてください。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「いや、近くならばどこでもいい。おろして呉れ」
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「紅茶で思い出したがアノS・O・Sの伊那一郎は船長がおろしたんですか」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馭者は私をウ※トクロスと云ふ處におろした、彼は私が拂つた賃金ではこれ以上乘せてくれなかつたのだ。そして私はこの他にたつた一シリングも持つてゐなかつた。馬車はもう一マイルも遠ざかつてゐる。
そうして、わずかに開けられた正方形の石の入口には、太いけやき格子こうしおろされ、その前には、背中と胸とに無数の細い蜥蜴とかげの絵でもって、大きな一つの蜥蜴を刺青ほりものした一人の奴隷がつけられていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
月世界に取りのこされた火星人をおろした。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)