すみ)” の例文
この教え方は、道も長いし、迂遠うえんなようであるが、落ちつく処へ落ち附くとかえって歩みはすみやかで、どんどんと捗取はかどるのであります。
新しく計画した生活上のプロットが既に目睫もくしょうに迫っている折からだったので、この行程は最もすみやかに処置して来なければならなかった。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
それから一週間ばかり経って後のある日、開墾の方が予定よりもずっとすみやかに進んだことのお祝いを兼ねて、慰労の催しをすることがありました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ことに小幡城は、小牧から出て来たときも、ひき揚げにも、ここが家康の完全なる前線基地となって、その進退を、頗るすみやかにさせたのであった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちいさな、うつくしいつばさった天使てんしは、たそがれがたそらのように、すみやかにんで、ふたたびなつかしい、わがえる野原のはらほうへとんできました。
町の天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
拾いし者はすみやかに返すべし——町役場ちょうやくばに持参するとも、直ちにイモーヴィルのフォルチュネ、ウールフレークに渡すとも勝手なり。ご褒美ほうびとして二十フランの事。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
東のは懲りて復これを忘るゝものを云ひ、西のは人須らく智を運し功をすみやかにすべきを云へり。
東西伊呂波短歌評釈 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この切手を試みに人に送ると、反響のようにすみやかに、反響のように弱められて返って来る。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
からすあらそふとものがるゝことはかなはずすみやかに白状せよとさとされければ大膽無類の長庵も最早もはやかなはじとや思ひけん見る中に髮髯かみひげ逆立さかだち兩眼りやうがんそゝ惡鬼羅刹あくきらせつの如きおもて振上ふりあげ一同の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
孟子もうしはゝやおどろかん上達じようたつすみやかさ、うまいとめられて今宵こよひも一まわりと生意氣なまいきは七つ八つよりつのりて、やがてはかた置手おきてぬぐひ、鼻歌はなうたのそゝりぶし、十五の少年せうねんがませかたおそろし
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幽明ゆうめい物心ぶっしん死生しせい神人しんじんの間をへだつる神秘の一幕いちまくは、容易にかかげぬ所に生活の面白味おもしろみも自由もあって、みだりに之を掲ぐるのむくいすみやかなる死或は盲目である場合があるのではあるまいか。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
マタイ伝には「女たち懼れと大なる歓喜とをもて、すみやかに墓を去り、弟子たちに知らせんとて走りゆく」(二八の八)とあるが、これもむしろ後日の回想を交じえた記事ではあるまいか)
この上はただすみやかに戦地に帰らんと、ひたすら医の許容ゆるしを待てるなりき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
いつは以てうち政府せいふを改良するの好手段たり、一挙両得の策なり、いよいよすみやかにこの挙あらん事を渇望かつぼうし、かつ種々心胆をくだくといえども、同じく金額の乏しきを以て、その計画成るといえども
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
すみやかに、軽ろやかに、何気なく、そこここに新しい巣が営まれた。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「あはははは。さすがは秀吉、わずかなに、これだけの大兵を、手足のごとく、すみやかにうごかして来たのは手際てぎわといえる。敵ながら、めておこう」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
河水かわみずは、あるときは、ゆるやかに、あるときはあしでもするように、すみやかにはしりました。
河水の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
孟子もうしの母やおどろかん上達のすみやかさ、うまいとめられて今宵こよひも一廻りと生意気は七つ八つよりつのりて、やがては肩に置手ぬぐひ、鼻歌のそそり節、十五の少年がませかた恐ろし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このときたちまち、そのとおい、寂寥せきりょう地平線ちへいせんにあたって、五つのあかいそりが、おなじほどにたがいにへだてをおいて行儀ぎょうぎただしく、しかもすみやかに、文字もんじにかなたをはしっていく姿すがたました。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
「続いて、そちへ作事を申しつけておく。すみやかにせよ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆるやかな時分じぶんには、バナナのかわも、つえも、ゆるやかにながれて、たがいの上話うえばなしでもするようについたり、はなれたりしていきましたが、すみやかにながれるときは、やはり、バナナのかわも、つえも
河水の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すみやかにせい」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)