トップ
>
通人
>
つうじん
ふりがな文庫
“
通人
(
つうじん
)” の例文
私たちの若い時は羽織の
紋
(
もん
)
が一つしきゃないのを着て
通人
(
つうじん
)
とか何とかいって喜んでいた。それが近頃は五つ紋をつけるようになった。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
通人
(
つうじん
)
めいた頭巾なんかかぶりやがって、丹三の野郎、
乙
(
おつ
)
に片づけやがったなと、まず坊主頭がせいぜいいきり立って突っかかった。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「世間体は良い男だったが、
通人
(
つうじん
)
とか、わけ知りとかいう者は、大方こうしたものだろう。お互に野暮ほど有難いものはねえ」
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
槐
(
ゑんじゆ
)
と云ふ樹の名前を覚えたのは「石の枕」と云ふ
一中節
(
いつちうぶし
)
の
浄瑠璃
(
じやうるり
)
を聞いた時だつたであらう。僕は勿論一中節などを稽古するほど
通人
(
つうじん
)
ではない。
槐
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
通人
(
つうじん
)
が少なくなったのだろう」と、半七も笑った。「おめえなら知っているだろうが、伊勢屋に
贔屓
(
ひいき
)
の相撲があるかえ」
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
しかし目に見えない将来の恐怖ばかりに
満
(
みた
)
された女親の狭い胸にはかかる
通人
(
つうじん
)
の放任主義は到底
容
(
い
)
れられべきものでない。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ひと口に申しますれば
通人
(
つうじん
)
がったり大人物がったりする人々には、余り賞されないのみならず、あるいはクサされる傾きさえある人でありますが
馬琴の小説とその当時の実社会
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
芸妓の芸が音曲舞踊の芸ではなくして
枕席
(
ちんせき
)
の技巧を意味せられる時代には、
通人
(
つうじん
)
はもはや昔のように優れた享楽人であることを要しないのである。
享楽人
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
これは
飯
(
めし
)
のものである。だから、握りずしで食うのが第一、
熱飯
(
あつめし
)
の上に載せて食うのが第二である。まぐろの茶漬けなぞも
通人
(
つうじん
)
のよろこぶものである。
鮪を食う話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
尤もこういう
風采
(
ふうさい
)
の男だとは多少
噂
(
うわさ
)
を聞いていたが、会わない以前は
通人
(
つうじん
)
気取りの扇をパチつかせながらヘタヤタラとシャレをいう
気障
(
きざ
)
な男だろうと思っていた。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その時この
通人
(
つうじん
)
は
数多
(
あまた
)
の婦人を呼び出し、友人のためにその経歴を
紹介
(
しょうかい
)
したが、かくするあいだについ三、四ヵ月前に来た新しき女があったが、あれはどうしたかと
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「あの
腰付
(
こしつき
)
を御覧なさい」と村での
通人
(
つうじん
)
仁左衛門さんが嘆美する。「星合団四郎なンか中々強いやつが向う方に居るのですからナ」と
講談物
(
こうだんもの
)
仕入れの智識をふり廻す。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
雲洲
(
うんしゆう
)
の隱居
南海殿
(
なんかいどの
)
、次男雲川殿、しばしば遊びたまへり。此處殿は、其ころ大名の
通人
(
つうじん
)
なり。諸家の留守居、府下の富高の振舞、みな升屋定席、その繁昌比すべきなし。
花火と大川端
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私の家は商家だったが、旧家だったため、草双紙、読本その他
寛政
(
かんせい
)
、
天明
(
てんめい
)
の
通人
(
つうじん
)
たちの作ったもの、
一九
(
いっく
)
、
京伝
(
きょうでん
)
、
三馬
(
さんば
)
、
馬琴
(
ばきん
)
、
種彦
(
たねひこ
)
、
烏亭焉馬
(
うていえんば
)
などの本が沢山にあった。
明治十年前後
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
「ひろはゞ消えなむとにや、これもけしかるわざかな」と
随身
(
ずいじん
)
の男に
祝儀
(
しゅうぎ
)
をおつかわしになったりした院の御様子はどこか江戸の
通人
(
つうじん
)
に似たようなふしもあるではないか。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「……
成程
(
なるほど
)
、心意気かえ。……じゃあ他人から何もおせッかいは
要
(
い
)
らない事。おまえさんも、二、三年辰巳へ商いに来たおかげで、たいそう深川の水に
滲
(
し
)
みた
通人
(
つうじん
)
におなりだね。じゃあ来年またおいで」
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ガーツルード。芝居の
通人
(
つうじん
)
は、そんなわかり切った事は言わぬものです。さあ、皆もお坐り。うむ、なかなか舞台もよく出来た。ポローニヤスの装置ですか。意外にも器用ですね。人は、それでも、どこかに
取柄
(
とりえ
)
があるものだ。」
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「世間體は良い男だつたが、
通人
(
つうじん
)
とか、わけ知りとか言ふ者は、大方斯うしたものだらう。お互に野暮ほど有難いものはねえ」
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
芸妓、紳士、
通人
(
つうじん
)
から
耶蘇
(
ヤソ
)
孔子
(
こうし
)
釈迦
(
しゃか
)
を見れば全然たる狂人である。耶蘇、孔子、釈迦から芸妓、紳士、通人を見れば依然として
拘泥
(
こうでい
)
している。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然
(
しか
)
し目に見えない将来の
恐怖
(
きようふ
)
ばかりに
満
(
みた
)
された
女親
(
をんなおや
)
の
狭
(
せま
)
い胸には
斯
(
かゝ
)
る
通人
(
つうじん
)
の
放任
(
はうにん
)
主義は
到底
(
たうてい
)
容
(
い
)
れられべきものでない。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
が、もし不幸になるとすれば、
呪
(
のろ
)
わるべきものは男じゃない。小えんをそこに至らしめた、
通人
(
つうじん
)
若槻青蓋
(
わかつきせいがい
)
だと思う。
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まぐろはいつ頃、どこで
獲
(
と
)
れたのが美味いとか、たいはどうして食べるべきであるとかいうようなことを知っているのが、いかにも料理の
通人
(
つうじん
)
のごとく思われている。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
さてもそののち
室香
(
むろか
)
はお辰を
可愛
(
かわゆ
)
しと思うより、
情
(
じょう
)
には鋭き女の勇気をふり起して昔取ったる
三味
(
しゃみ
)
の
撥
(
ばち
)
、再び握っても色里の往来して
白痴
(
こけ
)
の大尽、
生
(
なま
)
な
通人
(
つうじん
)
めらが
間
(
あい
)
の
周旋
(
とりもち
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
通人
(
つうじん
)
である芦船は、求めずしてその道の人たちとも
社交
(
まじわり
)
があったので、むしろ団十郎の方が、新しい思いつきとして、または自分の好きな道を舞台にとりいれたのかもしれない。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
平中はそんな気持であった。漁色家の心理と云うものは、王朝時代の
搢紳
(
しんしん
)
も江戸時代の
通人
(
つうじん
)
と同じようなもので、過ぎ去った女のことに後々までこだわっているつもりはなかった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いわゆる
通人
(
つうじん
)
にはとても成り得そうもない外記は、そこらに迷っている提灯の紋をうかがっても、鶴の丸は何屋の誰だか、かたばみはどこの何という女だか、一向に見分けが付かなかった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
木母寺
(
もっぽじ
)
には
梅若塚
(
うめわかづか
)
、
長明寺
(
ちょうみょうじ
)
門前の桜餅、
三囲神社
(
みめぐりじんじゃ
)
、今は、
秋葉
(
あきば
)
神社の火のような紅葉だ。
白鬚
(
しらひげ
)
、
牛頭天殿
(
ごずてんでん
)
、
鯉
(
こい
)
、
白魚
(
しらうお
)
……名物ずくめのこの向島のあたりは、
数寄者
(
すきしゃ
)
、
通人
(
つうじん
)
の別荘でいっぱいだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
二葉亭を何といったら
宜
(
よ
)
かろう。小説家型というものを
強
(
あなが
)
ち青瓢箪的のヒョロヒョロ男と限らないでも二葉亭は小説家型ではなかった。文人風の
洒脱
(
しゃだつ
)
な風流
気
(
け
)
も
通人
(
つうじん
)
気取
(
きどり
)
の
嫌味
(
いやみ
)
な
肌合
(
はだあい
)
もなかった。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
○○と云う人に今日の会で始めて
出逢
(
であ
)
った。あの人は
大分
(
だいぶ
)
放蕩
(
ほうとう
)
をした人だと云うがなるほど
通人
(
つうじん
)
らしい
風采
(
ふうさい
)
をしている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼等
通人
(
つうじん
)
も
肚
(
はら
)
の中では
如何
(
いか
)
に人生の
暗澹
(
あんたん
)
たるものかは心得てゐたのではないであらうか? しかもその事実を
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そんなところから、
通人
(
つうじん
)
は柳川で一杯などとシャレるに至ったものらしいということだ。
一癖あるどじょう
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
お藏前の札差といへば、私たちは豪富な町人で
通人
(
つうじん
)
で、はじめから言ふ目の出た暮しをしてゐたものと、頭から特別階級のやうに思ひこんでゐたが、はじめはさうではなかつたのだ。
花火と大川端
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
通人
(
つうじん
)
を以て
自任
(
じにん
)
する
松風庵蘿月宗匠
(
しょうふうあんらげつそうしょう
)
の名に
愧
(
はじ
)
ると思った。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その上そこにいる若槻自身も、どこか当世の
浮世絵
(
うきよえ
)
じみた、
通人
(
つうじん
)
らしいなりをしている。
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
雑炊の上から
煎茶
(
せんちゃ
)
のうまいのをかけて食べるのもよい。
通人
(
つうじん
)
の仕事である。
水戸
(
みと
)
方面の小粒納豆があれば、さらに申し分ないが、普通の納豆でも結構いただけることを、私は
太鼓判
(
たいこばん
)
を
捺
(
お
)
して保証する。
夜寒に火を囲んで懐しい雑炊
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
通人
(
つうじん
)
を
以
(
もつ
)
て
自任
(
じにん
)
する
松風庵蘿月宗匠
(
しようふうあんらげつそうしやう
)
の名に
愧
(
はぢ
)
ると思つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「
昔
(
むか
)
しの
通人
(
つうじん
)
はそんな風流をして遊んだそうだ」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
現に古風な家の一部や荒れ果てた庭なども残つてゐる。けれども
磨
(
す
)
り
硝子
(
ガラス
)
へ緑いろに「食堂」と書いた
軒燈
(
けんとう
)
は少くとも僕にははかなかつた。僕は勿論「橋本」の料理を
云々
(
うんぬん
)
するほどの
通人
(
つうじん
)
ではない。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“通人”の意味
《名詞》
世の中のことに精通した人。
遊興、遊郭などに通じた人。
(出典:Wiktionary)
通
常用漢字
小2
部首:⾡
10画
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
“通人”で始まる語句
通人肌
通人振
通人論
通人迄