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軋轢
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あつれき
ふりがな文庫
“
軋轢
(
あつれき
)” の例文
新幕府下の武士のおごり、
奢侈淫楽
(
しゃしいんらく
)
の
風
(
ふう
)
、また勝者同士の
軋轢
(
あつれき
)
など、どれ一つといえ、彼の眼からはほくそ笑まれるものでしかない。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
表面仲の好かった三人の女友達の間に、こんな
軋轢
(
あつれき
)
のあったことは、ジュッド医師は勿論、周囲の人も誰も知らなかったのである。
アリゾナの女虎
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
しかし、まだ、表面には、森新之助の名は出ていなかった。それというのが、やはり、吉田一派との
軋轢
(
あつれき
)
に原因しているのである。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
が、彼等は彼等自身のために、彼の
意嚮
(
いこう
)
には頓着なく、ほとんど何事にも
軋轢
(
あつれき
)
し合った。そこには何か宿命的な、必然の力も動いていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一、能楽界の内幕はかなり複雑して居つて表面からは十分にわからぬが、要するに
上掛
(
かみがか
)
りと
下掛
(
しもがか
)
りとの
軋轢
(
あつれき
)
が根本的の軋轢であるらしい。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
ただ彼らの間には流派の
軋轢
(
あつれき
)
があって、早く中央の形勝を占めた者が、官府の力を挟んで号令しようとしたばかりであった。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかれどもこの論派にありて当時すでに二種の分子を孕み、いまだ相
軋轢
(
あつれき
)
するに至らざるも、隠然その傾向を異にしたるは争うべからざるがごとし。
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
頼朝が
逝去
(
せいきょ
)
するとともに、頼家が
家督
(
かとく
)
を相続したが、
朋党
(
ほうとう
)
の
軋轢
(
あつれき
)
に
禍
(
わざわ
)
いせられて、
僅
(
わずか
)
に五年にして廃せられ、
継
(
つ
)
いで伊豆の
修禅寺
(
しゅぜんじ
)
で
刺客
(
しかく
)
の手に
斃
(
たお
)
れた。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この密告が洒落でも冗談でもないことは、安南における皇帝派と皇甥派の
軋轢
(
あつれき
)
を知っているほどの人なら、極めてありそうな事だと首肯するであろう。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「あそこの学校は
軋轢
(
あつれき
)
がなくっていいでしょう。校長は二十七年の卒業生だが、わりあいにあれで話がわかっている男でしてな……村の受けもいいです」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
職員間に
軋轢
(
あつれき
)
があって、他に犠牲者が両三名生じた。新聞は教頭を後任校長に任命したけれど、学務部長は
序
(
ついで
)
に教頭も切って、荒療治をすると言っていた。
首切り問答
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
すると社会部長は急に熱心になって、「そうかも知れんね。ことによると大学部内に何か
軋轢
(
あつれき
)
があるかも知れんから、君一つしらべて
特別記事
(
とくだね
)
にしたらどうだ」
或る探訪記者の話
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
しかし藩中に党派の
軋轢
(
あつれき
)
のあったことは事実で、嫡子の死んだのを幸いに妾腹の長男を押し立てようと企てたものと、正腹の次男を据えようと主張するものと
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或は
上士
(
じょうし
)
と
下士
(
かし
)
との
軋轢
(
あつれき
)
あらざれば、士族と平民との間に敵意ありて、いかなる旧藩地にても、士民共に利害
栄辱
(
えいじょく
)
を
與
(
とも
)
にして、公共のためを
謀
(
はか
)
る者あるを聞かず。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
些細な日常の感情
軋轢
(
あつれき
)
を整理することをおのずから学ぶであろうし、その点では、仕事そのものの上達につれて二重の賢さ、生活術を会得してゆくわけになります。
現実の道:女も仕事をもて
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
先生側の人々が反抗態度を
手強
(
てごわ
)
くし、歩調を
揃
(
そろ
)
えて熱心に行動を取ったためにかえって好結果を来たしたような訳で、したがって両派の
軋轢
(
あつれき
)
も穏便に済んだのでした。
幕末維新懐古談:49 発会当時およびその後のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その因果は子孫にも報い、足利幕府十三代を通じても、同じやうな、内訌
軋轢
(
あつれき
)
に悩まされてゐる。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
彼はこれを与えざらんと欲し、我はこれを採らんと欲す。あにいずくんぞその際において
軋轢
(
あつれき
)
なきを得んや。第十九世紀英国政治の事実は実にこの二分子交闘の事実なり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
(前引、慶雲三年詔)というごとき言葉は、明らかに貴族と農民と
軋轢
(
あつれき
)
を語るものである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
一、憲政党内閣
僅
(
わづか
)
に成立を告ぐるや、内部の
軋轢
(
あつれき
)
は直に起つて、日に益々劇しくなつた。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
加藤博士は監獄教誨師問題について当時各宗教家間に
軋轢
(
あつれき
)
があったことからこの際何の宗教にも属していない儒教の人を用いたらよかろうというような説であったと覚えている
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わたくしの父は、生前文部省の役人で一時帝国大学にも関係があったので、わたくしは少年の頃から学閥の忌むべき事や、学派の
軋轢
(
あつれき
)
の恐るべき事などを
小耳
(
こみみ
)
に聞いて知っていた。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人間各種族の膨脹の結果として生ずる種族間の
軋轢
(
あつれき
)
と、諸種族共通の便益のための会合とは全く別物で、後者がいかに発達しても前者がそのために減ずるという望みはとうていない。
戦争と平和
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
部分は部分において一になり、全体は全体において一とならんとする大渦小渦
鳴戸
(
なると
)
のそれも
啻
(
ただ
)
ならぬ波瀾の
最中
(
さなか
)
に我らは立っているのである。この大回転大
軋轢
(
あつれき
)
は無際限であろうか。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
新王を擁立する独逸と、之に対立する英米(彼等は別にマターファに好意を寄せていた訳ではないが、独逸に対する対抗上、事毎に新王に
楯
(
たて
)
ついた)との
軋轢
(
あつれき
)
も次第に激化して来た。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の
軋轢
(
あつれき
)
と、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を
毟
(
むし
)
り取って仕舞った。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
今までそれを外に現わすまいとのみ
力
(
つと
)
めて来た微妙な
軋轢
(
あつれき
)
が、必然の要求に
逼
(
せま
)
られて、しだいしだいに晴れ渡る
靄
(
もや
)
のように、津田の前に展開されなければならなくなったのはこの時であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
車夫はその不景気を馬車会社に
怨
(
うら
)
みて、人と馬との
軋轢
(
あつれき
)
ようやくはなはだしきも、わずかに顔役の調和によりて、営業上
相干
(
あいおか
)
さざるを装えども、折に触れては紛乱を生ずることしばしばなりき。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
進歩党と保守党との間には多少の
軋轢
(
あつれき
)
を
免
(
まぬか
)
れなかったが、大勢の赴くところまた
如何
(
いかん
)
ともすべからず、ついに明治二十二年我が帝国憲法は紀元節の
佳晨
(
かしん
)
を
卜
(
ぼく
)
して、国民歓呼の
裡
(
うち
)
に発布せられた。
選挙人に与う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
こういった家族の
軋轢
(
あつれき
)
は、例によって、外に知れわたり、ジョンの近隣で陰口の絶好な材料になる。彼の身の上のことが話に出ると、ひとびとは心得顔をして頭をふり、口をそろえて言うのである。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
ハリウッドの映画会社とジグフィイルド
女道楽
(
ファリイス
)
とから同時に莫大な
口
(
オファ
)
が掛って来たため、目下この新大陸の新興二大企業間に危機的
軋轢
(
あつれき
)
が発生して風雲楽観をゆるさないものがある——なあんかと
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ユダヤ人
殺戮者
(
さつりくしゃ
)
のラウール修道士をうち破り、一一四八年にはランスの会議を統べ、ポアティエの司教ジルベール・ド・ラ・ポレーを罪し、エオン・ド・レトアールを罪し、諸侯の
軋轢
(
あつれき
)
をやめさせ
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
我等、君と交わりを結び数十年に渡る長き間、反目
軋轢
(
あつれき
)
の悪記憶を留めざりしは、淡々たる君の君子人たる態度に依るならんか。ここに永遠不可思議の世界に旅立たる、君を我等静かに凝視せんとす。
弔辞(徳田秋声)
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
建物
(
たてもの
)
を建築するに、
出来方
(
できかた
)
は同じように出来ても、作っている間に、ある所では技師
職工
(
しょっこう
)
にいたるまで面白く
快
(
こころよ
)
く仕事すると、他の一方には
軋轢
(
あつれき
)
を
生
(
しょう
)
じ
同僚
(
どうりょう
)
を
擲
(
なぐ
)
れとか、
某
(
ぼう
)
がこんなことをいったとか
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
土豪にしては無能なほど、隣郡との
軋轢
(
あつれき
)
なども避け、ただ無事を守っている
水分
(
みくまり
)
ノ
館
(
たち
)
だったが、それにしてさえ、敵はあった。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天下大乱の兆、
漸
(
ようや
)
くきざし、山名細川両氏の
軋轢
(
あつれき
)
甚しく、両氏は互いに義政を利用しようとして居る。ところが彼は巧みに両氏の間を泳いで不即不離の態度をとって居る。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自覚をもつ
我
(
われ
)
、及び自然的人間情緒が捲き起さざるを得ない
軋轢
(
あつれき
)
と相剋とを描き得た。
「迷いの末は」:横光氏の「厨房日記」について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
離島
(
りとう
)
で、巡査派出所と公学校と両方のある島では、必ず両者の
軋轢
(
あつれき
)
がある。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
当時
会津
(
あいづ
)
を主とする佐幕の諸藩と
薩長
(
さっちょう
)
以下勤王諸藩の
軋轢
(
あつれき
)
は、女師匠の
稽古屋
(
けいこや
)
に若衆の入り込む
体
(
てい
)
を借り、あるひは
五月幟
(
ごがつのぼり
)
の
下
(
もと
)
に子供が
戦遊
(
いくさあそ
)
びをなす
体
(
てい
)
に倣ひて最も痛快
辛辣
(
しんらつ
)
に諷刺せられき。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかのみならず、たといかかる急変なくして
尋常
(
じんじょう
)
の業に従事するも、双方互に利害情感を別にし、工業には力をともにせず、商売には資本を
合
(
がっ
)
せず、
却
(
かえっ
)
て互に
相
(
あい
)
軋轢
(
あつれき
)
するの
憂
(
うれい
)
なきを期すべからず。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかし、その
軋轢
(
あつれき
)
が、はからずも、森新之助には幸したわけである。仲直り宴の経費で、倒れるかと心配していたのに、吉田磯吉が金五郎のところへ届けてくれた祝儀で、急場を
凌
(
しの
)
ぐことが出来た。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
かかる国は外に対しては一国であるが、内では人種と人種との
軋轢
(
あつれき
)
が絶えない。もし自分を守るために他人種と合して一国をなす必要がなくなれば、その国は当然数ヵ国に分裂してしまうに違いない。
人類の生存競争
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
すなわち、足利方の
内訌
(
ないこう
)
がそれで、直義と師直との
軋轢
(
あつれき
)
は、両者の凱旋を機としていよいよ激化し出して来たかの様相がこの春は一ばい
濃
(
こ
)
かった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
只管
(
ひたすら
)
欲するように、他人との
軋轢
(
あつれき
)
や争いに胸を傷つけられ、瑠璃子夫人に対する幻滅で心を痛めた信一郎は、家庭の持っている平和や、妻の持っている
温味
(
あたたかみ
)
の裡に、一刻も早く
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
いつのばあいでも、
内訌
(
ないこう
)
は敵をよろこばすだけのものだが、直義対師直の
軋轢
(
あつれき
)
ほど、「待っていたもの」と、南朝方を勇気づけたものはあるまい。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この
軋轢
(
あつれき
)
はどっちからともいえないものだが、武力のきッかけを示したのは、宮のほうが先だった。再三、尊氏をうかがっては、不意を突くのに失敗をかさねている。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
近来、当地清風鎮のあいだで、頻りに武官の貴下と、文官の劉高との仲に、
軋轢
(
あつれき
)
が絶えないとの風聞があり、青州御奉行の
慕蓉
(
ぼよう
)
閣下におかれても、いたくお心を悩ませておられる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“軋轢”の意味
《名詞》
(「軋」「轢」両者とも車輪がきしる意。車輪がきしるさまから)争いが生じて、仲が悪くなること。摩擦や葛藤を生じること。
(出典:Wiktionary)
軋
漢検1級
部首:⾞
8画
轢
漢検1級
部首:⾞
22画
“軋”で始まる語句
軋
軋音
軋々
軋轆