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見据
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みす
ふりがな文庫
“
見据
(
みす
)” の例文
まして、わたしに何も請求したわけではない。人の顔を穴のあくほど
見据
(
みす
)
える、例の
図々
(
ずうずう
)
しい女でもない。彼女は中を
覗
(
のぞ
)
いても見ない
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「四宮さんは二階に殺されていてよ」とミチ子が耳の
傍
(
そば
)
で
囁
(
ささや
)
いた。サテは、と思って僕がミチ子を
見据
(
みす
)
えた時、階上で叫ぶ声が聞えた。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
呆
(
あき
)
れるほど自信のないおどおどした表情と、若い年で女を知りつくしている
凄
(
すご
)
みをたたえた
睫毛
(
まつげ
)
の長い眼で、じっと
見据
(
みす
)
えていた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
洋服の男は女の顔を見ると驚いたような眼をして、じっと眼を
見据
(
みす
)
えるようにしたが、いきなり飛びあがるように
起
(
た
)
ちあがった。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ころげた首の、笠と
一所
(
いっしょ
)
に、ぱた/\と
開
(
あ
)
く口より、
眼球
(
めだま
)
をくる/\と廻して
見据
(
みす
)
ゑて居た官人が、此の
状
(
さま
)
を
睨
(
にら
)
み
据
(
す
)
ゑて
雨ばけ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
餉台
(
ちゃぶだい
)
におかれたランプの
灯影
(
ひかげ
)
に、薄い
下唇
(
したくちびる
)
を
噛
(
か
)
んで、考え深い目を
見据
(
みす
)
えている女の、
輪廓
(
りんかく
)
の正しい顔が蒼白く見られた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
神棚の上には
蜘蛛
(
くも
)
の巣に
糠
(
ぬか
)
のくっついた間からお
燈明
(
とうみょう
)
がボンヤリ光っていた、気がついた時は自分は縛られていた、上からじっと
見据
(
みす
)
えた竜之助。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
妙子も同じように平然として、例の顔色一つ変えるではなかったが、でもそう云われると、無言でじっと雪子の顔を
見据
(
みす
)
えているばかりであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
急に
厳粛
(
げんしゅく
)
に変わった如来の目が悟空をキッと
見据
(
みす
)
えたまま、たちまち天をも隠すかと思われるほどの大きさに
拡
(
ひろ
)
がって、悟空の上にのしかかってきた。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
観世音菩薩! この言葉はたちまち神父の顔に腹立たしい色を
漲
(
みなぎ
)
らせた。神父は何も知らぬ女の顔へ鋭い眼を
見据
(
みす
)
えると、首を振り振りたしなめ出した。
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「そしてお手前のお頼みとは?」旅の侍は油断なく彼らをキッと
見据
(
みす
)
えたまま、隙も与えずすぐに訊いた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
土肥君は
彼
(
あの
)
鼠
(
ねずみ
)
の様な眼を
見据
(
みす
)
えて、やゝ不安な
寂
(
さび
)
しそうな面地をして居たが、皆に説破されて到頭泊った。枕を並べて
一寝入
(
ひとねい
)
りしたと思うと、余等は起された。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
こうした私の二度目の挨拶は、だいぶ固苦しい外交辞令に近づいていたように思うが、しかし白鷹氏は依然として私を
見据
(
みす
)
えたまま、両手をポケットに突込んでいた。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それ
以前
(
いぜん
)
の
歌
(
うた
)
は、
皆
(
みな
)
表面
(
ひようめん
)
は
景色
(
けしき
)
を
詠
(
よ
)
んだように
見
(
み
)
えても、ほんとうに
味
(
あぢ
)
はつて
見
(
み
)
ると、たゞのうはっつらだけのところで、
實際
(
じつさい
)
景色
(
けしき
)
を
見据
(
みす
)
ゑたものだ、といふことが
出來
(
でき
)
ません。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
雲を洩れたわずかな
夕陽
(
ゆうひ
)
のなかを、鶏は
頸
(
くび
)
を立て、鋭い眼でひとところを
見据
(
みす
)
えていた。背の高さは、三尺ほどもある。白木は縁側にかけたまま、なにかいらだたしそうに呟いた。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
兄分の男は「可哀そうだなあ。」と吐き出すように云って、順吉の顔を
見据
(
みす
)
えながら「おやじのことを思うかい?」と訊いた。順吉はかぶりをふった。父親のことなど思ったこともない。
夕張の宿
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そしてその陰気な灰色の薪を積み上げてあるのをじっと
見据
(
みす
)
えながら
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
今日
(
けふ
)
もまた
我
(
われ
)
見据
(
みす
)
ゑ、
果敢
(
はか
)
なげに、いと
果敢
(
はか
)
なげに
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
兄はじっと弟を
見据
(
みす
)
えて唇を噛んだ。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
今
(
いま
)
も
目
(
め
)
は
塞
(
ふさ
)
がず、
例
(
れい
)
の
眸
(
みは
)
つて、
些
(
さ
)
の
顰
(
ひそ
)
むべき
悩
(
なや
)
みも
無
(
な
)
げに、
額
(
ひたひ
)
に
毛
(
け
)
ばかりの
筋
(
すぢ
)
も
刻
(
きざ
)
まず、
美
(
うつく
)
しう
優
(
やさし
)
い
眉
(
まゆ
)
の
展
(
の
)
びたまゝ、
瞬
(
またゝき
)
もしないで、
其
(
そ
)
のまゝ
見据
(
みす
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
黒坂が振返って見ると、今まで気がつかなかった旅の
武士
(
さむらい
)
が一人、笠越しにじっとこっちを
見据
(
みす
)
えています。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鶉は、地べたの上で、犬が立ち止まっているその鼻先で、
仕止
(
しと
)
めたのである。はじめ、彼は、土の色をした丸い小さな球のようなものを、見るともなしに
見据
(
みす
)
えていた。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
逆立った眼で葉之助を
見据
(
みす
)
え、紋兵衛は
瞬
(
まじろ
)
ぎもしなかったが、ようやくホッと溜息を
吐
(
つ
)
くと
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼はじっと高城を
見据
(
みす
)
えながら、今朝のことを考えつづけていた。隊長の半白の頭を見おろして立っていた時、彼は不意に悲哀の感じが瞬間であったが胸一ぱいになっていたのである。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
鏡の中で、廊下からうしろへ
這入
(
はい
)
って来た
妙子
(
たえこ
)
を見ると、自分で
襟
(
えり
)
を塗りかけていた
刷毛
(
はけ
)
を渡して、
其方
(
そちら
)
は見ずに、眼の前に映っている
長襦袢
(
ながじゅばん
)
姿の、抜き
衣紋
(
えもん
)
の顔を他人の顔のように
見据
(
みす
)
えながら
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
眼だけ放心したように虎の方を
見据
(
みす
)
えている。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
広い船室の中に、たった一人で、思う存分考えてやろうとしたのは、今朝、天幕の中でじっと
見据
(
みす
)
えた、あの体力のハチきれそうな、おぼこの娘の身の上のことでした。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
運転手は前を
見据
(
みす
)
えたまま言った。料金表示器は三百円をさしていた。
記憶
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
暫くすると又ジロジロと雪子を
見据
(
みす
)
えた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私もじっと彼の顔を
見据
(
みす
)
えながら言った。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
据
常用漢字
中学
部首:⼿
11画
“見”で始まる語句
見
見惚
見物
見出
見下
見上
見送
見透
見做
見当