よそほひ)” の例文
新字:
ガラツ八が飛込んで來たのは、もう日射しの秋らしくなつて、縁側の朝顏も朝々の美しいよそほひが衰へかけた時分の事でした。
ゆきつかねたやうですが、いづれも演習行軍えんしふかうぐんよそほひして、眞先まつさきなのはたうつて、ぴたりとむねにあててる。それが長靴ながぐつたかんでづかりとはひる。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
檳榔毛びらうげの車にも火をかけよう。又その中にはあでやかな女を一人、上﨟のよそほひをさせて乘せて遣はさう。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こゝにはおごそかなるよそほひしたる門者かどもり立てり。兩邊にともしびを點じたる石階を登れば、前房あり。僮僕しもべあまた走り迎へて、我帽と杖とを受取り、我が爲めに正面なる扉を排開したり。
あゝ、あのやなぎに、うつくしにじわたる、とると、薄靄うすもやに、なかわかれて、みつつにれて、友染いうぜんに、鹿しぼり菖蒲あやめけた、派手はですゞしいよそほひをんなが三にん
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その女子の意志の自由にゆだぬといへど、そは只だ掟の上の事のみにて、まことは幼きより尼のよそほひしたる土偶にんぎやうもてあそばしめ、又寺に在る永き歳月の間世の中の罪深きを説きてはおどしすかし
づ、いろしろをんなはう、が、ゆきなすしろさ、つめたさではない。薄櫻うすざくらかげがさす、おぼろにほよそほひである。……こんなのこそ、はだへふより、不躾ぶしつけながらにくはう。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
灼熱しやくねつてんちりあかし、ちまた印度インド更紗サラサかげく。赫耀かくえうたるくさや、孔雀くじやく宇宙うちうかざし、うすもの玉蟲たまむしひかりちりばむれば、松葉牡丹まつばぼたん青蜥蜴あをとかげひそむも、刺繍ぬひとりおびにして、おごれる貴女きぢよよそほひる。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やかたおくなる夫人ふじんの、つねさへ白鼈甲しろべつかふ眞珠しんじゆちりばめたる毛留ブローチして、つるはだに、孔雀くじやくよそほひにのみれたるが、このたまはるを、けて、とおもふに、いかに、端近はしぢかちや居迎ゐむかふる姿すがたれば、櫛卷くしまき薄化粧うすげしやう
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)