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肯
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がえん
ふりがな文庫
“
肯
(
がえん
)” の例文
束帯
(
そくたい
)
の上から縄打つ法はあるまい。まして宮門の内より縄付きを出してよいものか。万一、どうしても
肯
(
がえん
)
じねば、俊基、この場で舌を
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女子を自分と対等な位地に置くことを
肯
(
がえん
)
ぜないのは、男子がそれだけ無学であるからだと私は考えて男子のために恥じております。
女子の独立自営
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
抽斎がもし生きながらえていて、幕府の
聘
(
へい
)
を受けることを
肯
(
がえん
)
じたら、これらの蘭法医と肩を
比
(
くら
)
べて仕えなくてはならなかったであろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
鉄の配給統制で材料もなくなり日々の生活に窮しつつ猶組合の工場へ入って一人の労働者として働くことを
肯
(
がえん
)
じがたい心持の失望と苦悩
「建設の明暗」の印象
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
出来
(
しゅったい
)
の上で、と辞して
肯
(
がえん
)
ぜぬのを、平にと納めさすと、きちょうめんに、
硯
(
すずり
)
に直って、ごしごしと墨をあたって、席書をするように、受取を——
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
彼はそれらの不評に屈服することを
肯
(
がえん
)
じないで、ますます進んでその活歴なるものを観客に紹介しようと試みたのである。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は自分では気がつかないが、怠け者のせいか、それともまた役に立たないせいか、とにかく運動を
肯
(
がえん
)
じないで、分に安じ
己
(
おのれ
)
を守る人らしく見えた。
端午節
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
私はこの抗議を
肯
(
がえん
)
じよう。然しこの場合、改めねばならぬのは個人の生活であるか、社会の生活であるか、どちらだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
米友が頭を左右に振って、
肯
(
がえん
)
ぜぬ形をした時に、またしても盲法師の弁信が後ろから、抜からぬ面で口を出しました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
花嫁の泣き別れ で、その家を出ます時分には花嫁は大抵大いに泣き悲しんで馬に乗ることを
肯
(
がえん
)
じない。地にひれふしてほとんど立つことが出来ない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
一行は病み衰へたサビエルを見て切に乗馬をすゝめたが、サビエルは
肯
(
がえん
)
じないので、一同も馬から下りて、聖師の後から馬の轡を引つぱつて戻つてきた。
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それは、自分たちの運動が幸いに成功して、どうなり県当局の意志を動かし得たとして、先生は果して留任を
肯
(
がえん
)
じられるだろうか、という疑問であった。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
七年という言葉に
驚愕
(
きょうがく
)
しながら太田は監房へ帰った。七年という刑は岡田が転向を
肯
(
がえん
)
じなかったこと、彼が敵の前に屈伏しなかったことを物語っている。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
所有主は土地から引離し得ざる彼れの資本部分を抛棄することを
肯
(
がえん
)
ずるが、けだし彼は、この資本部分を抛棄しない場合よりも、引去り得る部分をもって
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
自分の知ってる者はだれもいないと言いながら、寂しそうに室に閉じこもって、出かけることを
肯
(
がえん
)
じなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
家茂
(
いえもち
)
薨去
(
こうきょ
)
の後は、尾州公か紀州公こそしかるべしと言って、前将軍の後継者たることを
肯
(
がえん
)
じなかった人である。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
女王は二人とも弾くのを
肯
(
がえん
)
じない。父宮はたびたび勧めにおやりになったが、何かと口実を作って断わり、弾こうと姫君たちのしないのを薫は残念に思った。
源氏物語:47 橋姫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
氏は一方に自分の個性を曲げることを
肯
(
がえん
)
じないでゐながら一方には泡鳴氏にその主張を曲げさせやうと努力された。これは個人主義ではなくて利己主義である。
岩野清子氏の『双棲と寡居』について
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
しかしこれは咳が
癒
(
なお
)
ったのではなくて、咳をするための腹の筋肉がすっかり疲れ切ってしまったからで、彼らが咳をするのを
肯
(
がえん
)
じなくなってしまったかららしい。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
今日の文壇には彼らのほかにべつに、自然主義者という名を
肯
(
がえん
)
じない人たちがある。しかしそれらの人たちと彼らとの間にはそもそもどれだけの相違があるのか。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
それより談は其事の上にわたりて、太祖、その曲直は
孰
(
いずれ
)
に在りやと問う。太子、曲は七国に在りと承りぬと
対
(
こた
)
う。時に太祖
肯
(
がえん
)
ぜずして、
否
(
あらず
)
、
其
(
そ
)
は講官の偏説なり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
当人がそれを
肯
(
がえん
)
じないのは
勿論
(
もちろん
)
として、本家も今では引き取ろうと云わないであろうことが予想された。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は十六日間責め通されてなお改宗を
肯
(
がえん
)
じないのだ。彼の全身は
悉
(
ことごと
)
く
腐爛
(
ふらん
)
し、口も眼も鼻も
癩
(
らい
)
患者のようにただれ、彼より発する
堪
(
た
)
え難い悪臭が恐ろしく鼻をつく。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
僕は僕の市蔵に対する今日までの態度に
顧
(
かえり
)
みて、この非難をもっともだと
肯
(
がえん
)
ずる。それがために市蔵を田口家から疎隔したという不服もついでに承認して
差支
(
さしつかえ
)
ない。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
使は元宰先生の
手札
(
しゅさつ
)
の
外
(
ほか
)
にも、それらの名画を
購
(
あがな
)
うべき
槖金
(
たくきん
)
を授けられていたのです。しかし張氏は前のとおり、どうしても
黄一峯
(
こういっぽう
)
だけは、手離すことを
肯
(
がえん
)
じません。
秋山図
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あれが自分を
庇
(
かば
)
い立てでもするように、自身番へ訴人することを
肯
(
がえん
)
じないという——はて、どういうこころであろう? と、この危急の場合にも、お妙の心中を考え
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
対馬守がこれを外国公使館の敷地に当てようとしたところ、織部正が江戸要害説を
固執
(
こしつ
)
して
肯
(
がえん
)
じなかったために、怒って幽閉したのを憤おって自刃したと言う憶測だった。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
……それも、矢っ張、書置をたてに、何としてもその親たちからの要求を
肯
(
がえん
)
じなかった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
彼はそう云って、どんな
忙
(
いそが
)
しい時でも下等な仕事には手をつけることを
肯
(
がえん
)
じなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
探索隊は深い山の中をさがし回って、ようやく老夫婦を見いだしたが、その老夫婦は、この十七年来人に逢ったことわずかに二度であると語り、浮世に出て来ることを
肯
(
がえん
)
じなかった。
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
だが、勇は彼女に働きを要求しても、彼女の肉体を他人に提供することは
肯
(
がえん
)
じない。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
鉄道開通以来、土地の人が頑固で、
折角
(
せっかく
)
の停車場の設置を
肯
(
がえん
)
ぜなかったばかりに、木曾下流の渡船場として
殷賑
(
いんしん
)
であったこの笠松街道もさっぱり寂れてしまったということであった。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
巴がなかなか落ちることを
肯
(
がえん
)
じないので義仲は度重ねて、きびしく巴にいった。巴も彼のきつい言葉のうらにある愛情は知っている。そして遂に決意して一行を先に送ると一人待った。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
伯爵が寝室へ行く様に勧めても、娘の生死が分るまではと
肯
(
がえん
)
じなかった。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし正造は
肯
(
がえん
)
じなかった。彼は紙片に記して、左席の中山へ示した。
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
と頑張って退く事を
肯
(
がえん
)
じない。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
某は家にいたのに、
来
(
きた
)
り診することを
肯
(
がえん
)
ぜなかった。常吉はこの時父のために憂え、某のために
惜
(
おし
)
んで、心にこれを
牢記
(
ろうき
)
していた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その時、事情を聞いたお吉が、当然に、そういって
勧
(
すす
)
めたけれど、お米は、どうしても首を振って、家へ帰ることを
肯
(
がえん
)
じない。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
されど室内に立入りて、その
面
(
おもて
)
を見んとせらるるとも、主翁は頑として
肯
(
がえん
)
ぜざるべし。諸君涙あらば強うるなかれ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この貴公子が、どうしても動座を
肯
(
がえん
)
ぜざるがために、用人の面上に現われた苦渋、難渋の色は、見るも気の毒なほどでありました。よって見兼ねた兵馬が
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし、警官がも一人彼の背中に飛びかかったとき、彼は
猪
(
いのしし
)
のように武者震いして、二人の警官を
拳固
(
げんこ
)
でなぐりつけた。捕縛されるのを
肯
(
がえん
)
じなかったのである。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その時になって外人も備前藩の兵でないだけは
諒解
(
りょうかい
)
したが、しかしこの地の占領を解くことを断じて
肯
(
がえん
)
じない。長州兵はやむを得ないで
奥平野
(
おくひらの
)
村の
禅昌寺
(
ぜんしょうじ
)
に退いた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
眼を
患
(
わずら
)
っていたからでもあったが、一つには、姉が義兄の意を伝えて雪子を返せと云い出しでもして、雪子が
肯
(
がえん
)
じなかった場合に、
板挟
(
いたばさ
)
みになるのを恐れたからであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その老人はどうしても一家と一緒に東京へ来るのを
肯
(
がえん
)
じなかった。それは見ず知らずの国で寂しい老後を送るよりは、知己の多い大阪で土になりたいという寂しい願いのためであった。
不幸
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
新らしい
外套
(
がいとう
)
も着られなかった。が、彼の友だちはいずれもそれ等を受用していた。彼は彼等を
羨
(
うらや
)
んだ。時には彼等を
妬
(
ねた
)
みさえした。しかしその嫉妬や羨望を自認することは
肯
(
がえん
)
じなかった。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
聞くならくアーサー大王のギニヴィアを
娶
(
めと
)
らんとして、心惑える折、
居
(
い
)
ながらに世の
成行
(
なりゆき
)
を知るマーリンは、首を
掉
(
ふ
)
りて慶事を
肯
(
がえん
)
んぜず。この女
後
(
のち
)
に思わぬ人を慕う事あり、娶る君に
悔
(
くい
)
あらん。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
言うまでもなく、単なる
臆測
(
おくそく
)
である。科学の
肯
(
がえん
)
じない臆測である。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
とがんばって
肯
(
がえん
)
じなかったというのである。
文芸時評
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
禽
(
とり
)
の
籠
(
かご
)
に
囚
(
とら
)
はるゝを
作
(
な
)
すを
肯
(
がえん
)
ぜんや。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
然るに当時半井
大和守成美
(
やまとのかみせいび
)
は献ずることを
肯
(
がえん
)
ぜず、その子
修理大夫
(
しゅりのだいぶ
)
清雅
(
せいが
)
もまた献ぜず、
遂
(
つい
)
に清雅の子出雲守
広明
(
ひろあき
)
に至った。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
肯
常用漢字
中学
部首:⾁
8画
“肯”を含む語句
首肯
肯分
肯定
肯入
肯綮
北爾肯州
受肯
弁肯
御肯入
御首肯
肯定者
肯諾
肯首
首肯点頭