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絃歌
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げんか
ふりがな文庫
“
絃歌
(
げんか
)” の例文
三人の通った座敷の隣に
大一座
(
おおいちざ
)
の客があるらしかった。しかし
声高
(
こえたか
)
く語り合うこともなく、
矧
(
まし
)
てや
絃歌
(
げんか
)
の響などは起らなかった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
夜更けの大川はさすがに鎭まり返つて、最早
絃歌
(
げんか
)
も
燭
(
あか
)
りもなく、夜半過ぎの初秋の風が、サラサラと川波を立ててをります。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さしも北里のるいを
摩
(
ま
)
するたつみの不夜城も深い眠りに包まれて、
絃歌
(
げんか
)
の声もやみ、夜霧とともに暗いしじまがしっとりとあたりをこめていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
われこの日始てこれを寺僧に聞得て
愕然
(
がくぜん
)
たりき。
因
(
ちなみ
)
にしるす南岳が四谷の旧居は荒木町
絃歌
(
げんか
)
の地と接し今岡田とかよべる酒楼の立てるところなり。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
抛
(
ほう
)
り出していた
毛脛
(
けずね
)
をひっ込めたり、横にしていた体を起して、
絃歌
(
げんか
)
ようやく盛んならんとする頃おい、小女が来て
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
河岸
(
かし
)
の
小店
(
こみせ
)
の
百囀
(
もゝさへ
)
づりより、
優
(
ゆう
)
にうづ
高
(
たか
)
き
大籬
(
おほまがき
)
の
樓上
(
ろうじやう
)
まで、
絃歌
(
げんか
)
の
聲
(
こゑ
)
のさま/″\に
沸
(
わ
)
き
來
(
く
)
るやうな
面白
(
おもしろ
)
さは
大方
(
おほかた
)
の
人
(
ひと
)
おもひ
出
(
い
)
でゝ
忘
(
わす
)
れぬ
物
(
もの
)
に
思
(
おぼ
)
すも
有
(
あ
)
るべし。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そこからは
落寞
(
らくばく
)
たる歓楽の
絃歌
(
げんか
)
が聞こえ、干からびた寂しい笑い声がにぎやかにもれて来る。——それは普通オランダ屋敷と呼ばれている「出島の
蘭館
(
らんかん
)
」である。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
どこかの家から、
絃歌
(
げんか
)
の声が水面を渡って、宇治川のお茶屋にでも、遊んでいるような気がする。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
こんな不潔な
絃歌
(
げんか
)
の
巷
(
ちまた
)
で、女に家をもたせたりして納まっている自分を
擽
(
くすぐ
)
ったく思い、ひそかに反省することもあり、そんな時に限って、
気紛
(
きまぐ
)
れ半分宗教書を
繙
(
ひもと
)
いたり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
料理茶屋からは
絃歌
(
げんか
)
の声も聞えて来て、冬とは思えないほど、あたりはうきうきと賑わっていた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
先刻までかなり騒がしかった
四隣
(
あたり
)
の
絃歌
(
げんか
)
も絶えて、どこか近く隅田川辺の工場の笛らしいのが響いて来る。思いなしか耳を澄ますと川面を渡る夜の帆船の音が聞えるようである。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
左側の水楼に坐して
此方
(
こっち
)
を見る老人のあればきっと
中風
(
ちゅうぶう
)
よとはよき見立てと竹村はやせば皆々笑う。
新地
(
しんち
)
の
絃歌
(
げんか
)
聞えぬが
嬉
(
うれ
)
しくて丸山台まで行けば
小蒸汽
(
こじょうき
)
一
艘
(
そう
)
後より追越して行きぬ。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
水鳥はもう寝たのか、障子の
硝子戸
(
ガラスど
)
を透してみると上野の森は深夜のようである。それに引代え廊下を歩く女中の足音は忙しくなり、二つ三つ隔てた座敷から
絃歌
(
げんか
)
の音も聞え出した。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
水を越して響いて来る
絃歌
(
げんか
)
の音が清三の胸をそぞろに波だたせた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
さすがに
絃歌
(
げんか
)
の聲は絶えて、不氣味な沈默が水の上を支配しましたが、それでも、時々は遠い鳴物や歌聲が、風に乘つてこの沈默を破るのです。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
昼顔の葉も花も、白い
埃
(
ほこり
)
をかぶって、砂地の原には、日蔭もなかった。その向うに見える家々は夜に入ると港の男の
濁
(
だ
)
み
声
(
ごえ
)
や
絃歌
(
げんか
)
の聞える一劃だった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その大きな高い白帆のかげに折々眺望を
遮
(
さえぎ
)
られる
深川
(
ふかがわ
)
の岸辺には、思切って海の方へ
突出
(
つきだ
)
して建てた
大新地
(
おおしんち
)
小新地
(
こしんち
)
の楼閣に早くも
燦
(
きらめ
)
き
初
(
そ
)
める
燈火
(
ともしび
)
の光と湧起る
絃歌
(
げんか
)
の声。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
士
(
さむらい
)
たちが、
禄
(
ろく
)
を金にかえてもらった時分には、黄金の洪水がこの廓にも流れこんで、その近くにある山のうえに、すばらしい劇場が立ったり、
麓
(
ふもと
)
にお茶屋ができたりして、
絃歌
(
げんか
)
の声が絶えなかった。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
春宵
(
しゅんしょう
)
一刻
価
(
あたい
)
千金、ここばかりは時を
得
(
え
)
顔
(
がお
)
の
絃歌
(
げんか
)
にさざめいている。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ふとしては聞える
絃歌
(
げんか
)
の類もみがきのかかったものが多かった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
見物は橋の上一パイの人だかり、人數に不足はない上に、空には引つ切りなしに花火が咲いて、遠くの船からは、まだ
絃歌
(
げんか
)
の聲が盛り上がつてゐるのです。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一昨日
(
おととい
)
、昨日、今日とつづいている城下の踊りは、
夜半
(
よなか
)
にかけても
倦
(
う
)
むいろなく、
絃歌
(
げんか
)
と仮装の踊りの陣が、幾組もいく組も、
灯
(
ひ
)
に
彩
(
いろど
)
られた徳島の町々を渦にまいて流れていた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが
絃歌
(
げんか
)
の
巷
(
ちまた
)
でも少しも
差
(
さ
)
し
閊
(
つか
)
えないはずだと思われた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
亥刻
(
よつ
)
過ぎになると、水の面もさすがに宵の賑はひはありませんが、それでも
絃歌
(
げんか
)
の響や
猪牙
(
ちよき
)
を
漕
(
こ
)
がせる水音が、人の氣をそゝるやうに斷續して聽えるのでした。
銭形平次捕物控:183 盗まれた十手
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
もうこの世界でも起きている
青楼
(
うち
)
はないらしい。ばったりと
絃歌
(
げんか
)
の
音
(
ね
)
もやんでしまった。
丑満
(
うしみつ
)
の告げはさっき鳴ったように思う。一同が引揚げてからでもやや一
刻
(
とき
)
余りは経つ……
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
百千の
花燈
(
かとう
)
をとぼし、
河北
(
かほく
)
一のお茶屋と評判な
翠雲楼
(
すいうんろう
)
ときては、とくに商売柄、その趣向もさまざまであり、花街の
美嬌
(
びきょう
)
と
絃歌
(
げんか
)
をあげて、夜は空を
焦
(
こ
)
がし、昼は昼で
彩雲
(
さいうん
)
も
停
(
とど
)
めるばかり……。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
使命を
半
(
なか
)
ばにしてズタ斬りとなるか、無念の鬼となろうとしているのを、世間は
宵
(
よい
)
の
絃歌
(
げんか
)
さわぎで、河岸を流す
声色屋
(
こわいろや
)
の木のかしら、いろは茶屋の客でもあろうか、小憎いほどいい
喉
(
のど
)
な
豊後節
(
ぶんごぶし
)
——。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
万
戸
(
こ
)
の燈籠は一時に消え、歌舞の
絃歌
(
げんか
)
は、
阿鼻
(
あび
)
の
叫
(
きょう
)
や悲鳴に変った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
桑田
(
くわた
)
は
町屋
(
まちや
)
に変り、
広野
(
ひろの
)
は
絃歌
(
げんか
)
の
灯
(
ともしび
)
を
映
(
うつ
)
す堀となり、無数の橋や新しい道路は、小鳥の巣や
鷺
(
さぎ
)
のねぐらを奪って、丘の肌は、みな
生々
(
なまなま
)
しい土層を露出し、削られたあとには、屋敷が建ち、門がならび
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“絃歌”の意味
《名詞》
三味線や琴を弾き、また歌を歌うこと。
(出典:Wiktionary)
絃
漢検準1級
部首:⽷
11画
歌
常用漢字
小2
部首:⽋
14画
“絃歌”で始まる語句
絃歌講誦