あば)” の例文
新字:
半年ばかりたつ何者なにものとも知れず、はかあばいて石をぬすさつたものがある。子は手掛てがかりがないのでふことも出來ず其まゝにして二三日たつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此筆を燒き此塚をあばき一葉の舟を江河に流せば、舟は斷崖のもとを流れて舟中に二人の影あるべし。御かへりごとこそ待たるれ。かしこ
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
番甲 これにをりまする老僧らうそう、またころされましたるロミオのしもべにんいづれもはかあばきまするに屈竟くっきゃう道具だうぐをばたづさへてをりまする。
こんなことを言ひ合ひながら、大工どもは古墳でもあばくやうな風にして、氣味わるさうに太鼓樓から二階を壞しにかゝつた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
この男はかしこさうですが、言ふ事に毒があつて、手當り次第誰の罪でもあばき立てるので、うつかりすると此方の搜査が迷はされさうでなりません。
「そりやさうですがね、お内儀かみさん」勘次かんじなんだが隱事いんじでもあばかれたやうにあわてゝいつてさうして苦笑くせうした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
我等は毎歳春三月のころ渡島し、七月上旬皈帆の節獵舟獵具等を小屋に納め置、翌年渡島の節まで毫も差違なかりしに、去年元祿五年より小屋をあばほしいままに器械を奪ひ
他計甚麽(竹島)雑誌 (旧字旧仮名) / 松浦武四郎(著)
それはワキに自分をあばいて呉れるやうにと歎願する、覆ひ隱れた、祕密な何物かである。
クロオデルの「能」 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
蠻勇ばんゆうちからもつて、地中ちちう秘密ひみつあばき、學術上がくじゆつじやう疑問ぎもん解决かいけつあたへねば、まぬのである。
たう開元年中かいげんねんちうせいあひだ劫賊こふぞくあり。近頃ちかごろ不景氣ふけいきだ、と徒黨とたう十餘輩じふよはいかたらうて盛唐縣せいたうけん塚原つかはらいたり、數十すうじふつかあばきて金銀寶玉きんぎんはうぎよく掠取かすめとる。つかなかに、ときひと白茅冢はくばうちようぶものあり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしはあの夫婦ふうふみちづれになると、むかうのやまには古塚ふるづかがある、その古塚ふるづかあばいてたら、かがみ太刀たち澤山たくさんた、わたしはだれらないやうに、やまかげやぶなかへ、さうものうづめてある
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
吾々はあばくよりも破らねばならぬ。打つよりも進めねばならぬ。
生みの力 (旧字旧仮名) / 片上伸(著)
だが、そいつは俺が乘出すまでもあるまいよ、相手が三百五十石の武家ぢや、あばき立てたところで後がうるさい、お琴とか言ふ娘に、古文眞寶な色文を
賊等ぞくらきそうてこれをあばく。はう一丈いちぢやうばかりるに、地中ちちうふかところ四個しこ房閣ばうかくありけり。たゞひがしばうには、弓繒きうそう槍戟さうげきちたる人形にんぎやうあり。みなみばうには、繒綵そうさい錦綺きんきうづたかし。はいありていは周夷王所賜しうのいわうたまふところ錦三百端にしきさんびやくたんと。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分の長年にわたる不正がばれさうになると急に訴人して出て、菱屋の拔け荷のからくりをあばき立て、さしもの大家を一朝にして亡ぼしてしまひました。
矢並行方と自分の不義を臆面もなくあばき立てて、谷口金五郎殺しの下手人を、幽靈でないまでも、外の者と思はせた細工はうま過ぎて恐ろしいくらゐだ
お紋を執念しつこく追廻し、手嚴しく耻しめられたのを根に持つて、惡事の仲間を語らつて、お紋の素姓をあばき立て、到頭荻野家にも居られないやうな事にして了つたのでした。
それをあばき立てるわけにも行かず、娘のお夏は間もなく清水和助に引取られ、尾久の屋敷につれて來られて、和助の伜の清次郎が望むまゝに、嫁にすることになつた樣子です。
俺は今更お縫の細工をあばき立てて、死んだ者に耻を掻かせ度くはなかつたが、さうかと言つて、若旦那が何んにも知らずに人殺しの罪を背負はされるのを見ては居られなかつた。
父上市太郎樣は、身をぢて自害じがいをなすつたのです。それをかばつたのは、此處に居られる奧方樣と、お女中のお菊さん。萬一自害と知れては、父上樣の非をあばくことになりませう。
ところで泰道先生、十日前に死んだ大主人重兵衞も、これと全く同じ死にやうをした筈だ。どうしても卒中といふ見立てなら、寺社のお係にお願ひして、墓をあばいても調べ直すがどうだ
「そこで、寺社の御係にまでお願ひして、明日は墓をあばいて、死骸を取出し、和蘭流の名醫が立ち會つて、腑分ふわけ(解剖)することになりましたよ、迷惑だらうと思ふが、宜しく頼みますよ」
手續に暇取つて、役人立會の上墓をあばいたのはその日の夕方、豫期の通り千兩箱が三つ、大して深くないところから現はれた時は、ガラツ八は言ふに及ばず、萬七も清吉も思はず喊聲かんせいをあげました。
勇三郎樣の惡事をあばき、詰腹つめばらを切らせて、園山家を泰山の安きに置き、百枝もゝえ樣、乙松樣を金助町にお迎へ申上げた上、改めて名乘つて出て、縛り首なり、なぶり殺しなり、何うでも勝手になつてやる
「まだありますよ、番頭の孫作は、うんと溜め込んだのをあばき立てられて、三百兩から吐き出させられ、手代の伴造は十年越の給金を預つたきり返してくれさうもないのにシビレを切らしてゐますよ」
子として親の非をあばくのは本意ではあるまいが、——親の非を遂げさせるよりは、人の道にも叶ふだらう。今では佛になつた父親の半助も、自分の罪をつぐなつてくれたお秀の志を喜んでゐるに違ひない。