濫用らんよう)” の例文
自分はすべて文壇に濫用らんようされる空疎な流行語をりて自分の作物の商標としたくない。ただ自分らしいものが書きたいだけである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また五百人の城兵に矢代河畔の荒地を起させるなど、すべて城代の威光を不必要に濫用らんようすると云われても仕方のないことばかりだった。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いかなる権力の濫用らんようも、いかなる暴戻ぼうれいも、極悪な暴君のいかなる非道も、ブジリスやチベリウスやヘンリー八世のいかなる行為も
とかく金に限らず、位置でも名誉でもおのれにするときは、油断をすれば逆上ぎゃくじょうしてこれを利用するを忘れてただ濫用らんようおちいりやすい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そうなると、公卿くげもまた公卿で、廟堂びょうどうの鼠と化し、きのうは武家をたのみ、きょうは僧団をおだてて、政治を自分たちの擁護に濫用らんようする。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歌よみは古来助辞を濫用らんよう致し候様、宋人の虚字を用いて弱き詩を作るに一般に御座候。実朝のごときは実に千古の一人と存候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
穏当おんとうでないか知らぬが親も祖父も、みんな一度は通って来た関門であった。それがただ少しずつ濫用らんようせられていただけである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
地方の政治は名状し難いまでに紊乱びんらんしてしまった! 悪辣あくらつな国司どもは官権を濫用らんようして、不正を働き、私腹をこやして、人民を酷使こくししている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
名言家めいげんかだ! それはさうです。だが、私は荒神(羅馬のレアとペネイトの神)にかけてそれを濫用らんようしないと誓ひますよ。」
昔の日本の学者は芭蕉ばしょうの本物を知らなかったので、そこでこの芭蕉ばしょうの字を濫用らんようし、それがもとでバショウの名がつけられ今日こんにちおよんでいるのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
濫用らんようしてはならん、服従の無き自由は混乱であって、自由の無き服従は奴隷である——とこういう意味であります
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「さういふ精神的技倆と才幹とがしばしば濫用らんようされ、偽を真とし、真を偽とするために用ゐられねばよいが。」
ゲーテに於ける自然と歴史 (新字旧仮名) / 三木清(著)
みだりに外語ぐわいご濫用らんようして得意とくいとするのふうが、一にちは一にちよりはなはだしきにいたつては、その結果けつくわ如何いかゞであらう。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
現実の国家に多かれ少なかれ伴うところの権力濫用らんよう幣害へいがいや、法と刑罰による人間性の歪曲わいきょくや、階級的な搾取さくしゅ抑圧よくあつの危険を排撃する点には、大きな魅力みりょくがあって
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
然るに日本の詩壇では、言語がはなはだ曖昧に使用されてる。多くの詩人たちは、純粋に理論を重んずべき論文に就いてすらも、詩作上に於ける如き言語の表象性を濫用らんようしている。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
消費者が飽くまでも無責任に濫用らんようすれば、到底いたしかたのない事になる。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
職権濫用らんようとか、過剰処置とか、罷免ひめんとか、その他さまざまな法律用語が頭にうかんでくる、といったような、絶望的な顔つきになっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
歌よみは古来助辞を濫用らんよう致し候様、宋人の虚字を用ゐて弱き詩を作ると一般に御座候。実朝の如きは実に千古の一人と存候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかし小児はそんな古い由緒ゆいしょを知らない。それに親たちの心持こころもちまでは呑みこめぬ者が多いので、いつしかこの特権は濫用らんようせられるようになった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
女性の弱きに乗じて彼らをもてあそび、あるいは彼らを苦しめるがごときは、これ男性の権能を濫用らんようするのはなはだしきもの。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
何処からか arbiterアービター elegantiarumエレガンシアルム と云う字を見付出して来て、それを代助の異名の様に濫用らんようしたのは、その頃の事であった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それは危險な主義ぢやございませんか。だつて、濫用らんようされるおそれがあるといふことが直ぐに分りますから。」
習慣の許すところにおいては、変通の道があって、濫用らんようされない限りは見ぬふりのお目こぼしがあると聞く。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
不足ふそくてん適當てきたう外語ぐわいごもつ補充ほじうするのはつかへないが、ゆゑなく舊來きうらい成語せいごてゝ外國語ぐわいこくご濫用らんようするのは、すなはみづからおのれを侮辱ぶじよくするもので、もつてのほか妄擧まうきよである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
いかなる種類のものであろうとも、およそ、特権、濫用らんよう、破廉恥、圧制、不正、専制、不法、盲信、暴虐、などと名のつくものは、このぽかんとしてる浮浪少年に用心するがいい。
人生はかけであるという言葉ほど勝手に理解されて濫用らんようされているものはない。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
これに反し第二の考えは相手の人には力がある、しかも自分よりすぐれた力がある。しかし彼らはこの力を濫用らんようせぬ。自分に対して善用するだろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大きな気狂が金力や威力を濫用らんようして多くの小気狂しょうきちがい使役しえきして乱暴を働いて、人から立派な男だと云われている例は少なくない。何が何だか分らなくなった
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その洒堂をおしへたるもこれらの佳作をしりぞけたるにはあらで、むしろその濫用らんよういましめたるにやあらん。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
村々の文書では普通には「仁屋」と書き、今日はただ君というほどの意味に濫用らんようせられているというが、本来は新親にいおや、親のまだ年若としわかなものをさしての敬称だったらしい。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そうです、間諜です。警察権を濫用らんようして以来、私は一個の間諜にすぎません。」
用うる政府の最大主眼は、人民と相敬重あいけいちょうすることにあって、権力の濫用らんようから、人民を確保しなければならぬ、服従無き自由は混乱であって、自由なきの服従は奴隷である——まあ、こんな意味です
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もし人格のないものがむやみに個性を発展しようとすると、ひとを妨害する、権力を用いようとすると、濫用らんように流れる、金力を使おうとすれば、社会の腐敗をもたらす。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元義はいもといはでもあるべき歌に妹の語を濫用らんようせしと同じく丈夫ますらおといはでもあるべき歌に丈夫の語を濫用せり。かくの如き者即ち両面における元義の性情をあらはしたる者に外ならず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かかる戦いは平和を確立するところのものである。偏見、特権、憶説、虚偽、強請、濫用らんよう、暴行、不正、暗黒、などの巨大な城砦じょうさいは、なおその憎悪の塔をそびやかして社会の上に立っている。
この言に限らずすべての対照的文字は濫用らんようされやすい。近頃世間に用いらるる左傾右傾の如きもまた同じである。しかしこれらは何れも実在するものを指すのでなく、二者の関係を示すに過ぎない。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
こう云う下卑げびた所に直覚の二字を濫用らんようしては済まんが、ほかに言葉がないから、やむを得ず高尚な術語を使った。さてその虫を検査しているうちに、非常ににくらしくなって来た。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを蕪村が常に用ゐたるが如く思ひて蕪村がこの語を用ゐたりなどいふ口実を設けこれを濫用らんようすること蕪村は定めて迷惑に思ふなるべし、この事は特に蕪村のために弁じ置く。(六月三日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ただの一瞥ということは、恋の物語においてあまりに濫用らんようされたため、ついに人に信ぜられなくなった。互いに視線を交じえたために恋に陥ったということを、今日ではほとんど口にする者もない。
デモクラシー即ち自由の誤解濫用らんようを最も能く現わしたものである。
デモクラシーの要素 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
書付のしまいの方には、島田が健三の戸籍を元通りにして置いて実家へ返さないのみならず、いつの間にか戸主に改めた彼の印形いんぎょう濫用らんようして金を借り散らした例などが挙げてあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
去るほどにその格好かっこうたるやあたかも疝気持せんきもち初出でぞめ梯子乗はしごのりを演ずるがごとく、吾ながら乗るという字を濫用らんようしてはおらぬかと危ぶむくらいなものである、されども乗るはついに乗るなり
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金力権力の点においてもその通りで、おれの好かないやつだから畳んでしまえとか、気にわない者だからやっつけてしまえとか、悪い事もないのに、ただそれらを濫用らんようしたらどうでしょう。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の神経衰弱を濫用らんようすると、わが子までも神経衰弱にしてしまう。そうしてあれの病気にも困り切りますと云う。感染したものこそいい迷惑である。困り切るのはどっちの云い分か分らない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)