泰山たいざん)” の例文
泰山たいざんはこの日、人間の雲だった。わけて東岳廟とうがくびょうを中心とするたてものの附近は社廟やしろの屋根から木の上までがまるで鈴なりの人である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
因つてうたがふ、孔子泰山たいざんの歌、後人假託かたく之をつくれるならん。檀弓だんぐうの信じがたきこと此の類多し。聖人を尊ばんと欲して、かへつて之がるゐを爲せり。
かけきしにいままへてもふがかなしき事義じぎりぬじようさまの御恩ごおん泰山たいざんたかきもものかずかはよしや蒼海そうかいたま
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
太上老君たいじょうろうくん八卦炉はっけろ中に焼殺されかかったときも、銀角大王の泰山たいざん圧頂の法にうて、泰山・須弥山しゅみせん峨眉山がびさんの三山の下につぶされそうになったときも
蒲田弁理公使がよろし樽爼そんそかんに折衝して、遊佐家を泰山たいざんの安きに置いて見せる。嗚呼ああ、実に近来の一大快事だ!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかれども恐らくはその解釈は怪の一字を解し得ざるべく、しからざれば一字一句金鉄きんてつの如く緻密に泰山たいざんの如く動かざる蕪村の筆力を知らざる者の囈語げいごのみ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
『えい、ふざけたり/\、海賊かいぞくどもものせてれんづ。』と矢庭やには左舷さげんインチ速射砲そくしやほうほうせたが、たちま心付こゝろづいた、海軍々律かいぐんぐんりつげんとして泰山たいざんごと
有若曰く、あにただに民のみならんや。麒麟きりんの走獣に於ける、鳳凰ほうおうの飛鳥に於ける、泰山たいざん丘垤きゅうてつに於ける、河海かかい行潦こうろうに於けるは類なり。聖人の民に於けるもまた類なり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「東京及び東京地方に居住する帝国臣民諸君」将軍の声は泰山たいざんの如くに落付いていた。「本職は東京警備司令官の職権をもって広く諸君に一げんせんとするものである。 ...
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昼も夜もどんどん往来してやすむときがありません。ただひま人が定まった生業ももたずに暮らしていたならば、泰山たいざんのようなたくさんのものもたちまち食いつくしてしまうでしょう。
「起きて来たのはいいが、泰山たいざん鳴動めいどうしてねずみ一匹じゃあねえかな……よく降りゃあがる」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おお、さいわい、今思い出したが、おれは泰山たいざんの南のふもとに一軒の家を持っている。その家を
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
勇三郎様の悪事をあばき、詰腹つめばらを切らせて、園山家を泰山たいざんの安きに置き、百枝様、乙松様を金助町にお迎え申上げた上、改めて名乗って出て、縛り首なり、なぶり殺しなり、どうでも勝手になってやる
季氏が泰山たいざんの山祭りをしようとした。先師が冉有ぜんゆうにいわれた。——
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
泰山たいざんを望んで不平を洩らした。
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
泰山たいざん大盗だいとう孫観そんかん呉敦ごとんをはじめ、馬首をそろえて、彼へ喚きかかってきたが、一人として許褚きょちょの前に久しく立っていることはできなかった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悟空また同じく本相をあらわし、大喝だいかつ一声するよと見るまに、身の高さ一万丈、かしら泰山たいざんに似て眼は日月のごとく、口はあたかも血池にひとし。奮然鉄棒をふるって牛魔王を打つ。
水のひくき方にかたぶくがごとし。一二三夜に昼にゆきくとむときなし。ただ一二四閑人むだびと生産なりはひもなくてあらば、一二五泰山たいざんもやがてひつくすべし。一二六江海がうかいもつひに飲みほすべし。
『論語』の八佾はちいつ篇においては、孔子は宗廟の祭りや泰山たいざんまつりていの祭りや告朔こくさく餼羊きようや社の樹などについて語っているにかかわらず、その主たる関心は礼の保持であって信仰の鼓吹ではない。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「おう、ご番卒でございますか。てまえは、泰山たいざん儒者じゅしゃですが、諸国遊歴がてら、うらないを売って旅費とし、また諸山の学問をきわめんとしている者でございまする」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元封げんぽう元年に武帝が東、泰山たいざんに登って天を祭ったとき、たまたま周南しゅうなんで病床にあった熱血漢ねっけつかん司馬談しばたんは、天子始めて漢家のほうを建つるめでたきときに、おのれ一人従ってゆくことのできぬのをなげ
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
目のまえにあった泰山たいざんのような邪魔ものが崩れて一ときにべつな視野を見たような感でもあったが、すぐあとには、われにもあらぬふるえがどうにもとまらなかった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに反して、もし袁術の手が伸びて、小沛が彼の勢力範囲になったら、北方の泰山たいざん諸豪しょごうとむすんでくるおそれもあるし、徐州は枕を高くしていることはできなくなる
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかんずく、角力すもうの上手で、本場所の泰山たいざんでさえ、三年間も勝ちつづけたという剛の者とあって、さあ、孟州大街でも、俄然がぜん、羽ブリはきかせるし、手もつけられない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泰山たいざんの強盗群、孫観そんかん呉敦ごとん尹礼いんれい昌豨しょうきなどの賊将が手下のあぶれ者、三万余を糾合きゅうごうして
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂布は、曹操の襲来を知って、藤県とうけんから泰山たいざんの難路をこえて引っ返して来た。彼もまた
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)