“行潦”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
にはたづみ40.0%
こうろう20.0%
にわたずみ20.0%
ぬかるみ10.0%
みづたまり10.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
御立みたちせし島を見るとき行潦にはたづみながるる涙止めぞかねつる」(巻二・一七八)ぐらいに行くのが寧ろ歌調としての本格であるのに、此歌は其処までも行っていない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
有若曰く、あにただに民のみならんや。麒麟きりんの走獣に於ける、鳳凰ほうおうの飛鳥に於ける、泰山たいざん丘垤きゅうてつに於ける、河海かかい行潦こうろうに於けるは類なり。聖人の民に於けるもまた類なり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
撒き水のまだ溜り残っている行潦にわたずみを、春の名残りの恋猫が足を気色悪るげに振って渡り過ぎる姿が、先き角の小学児童用品店の灯で、痩せさらばった影にいます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから戸口へ廻る時、実際行潦ぬかるみへ左の足を腓腸ふくらはぎまで蹈み込んだ。靴に一ぱい水が這入つた。女は今かも一枚で覆つてあるベンチのやうな寝台ねだいに腰を掛けて、靴を脱ぎ始めた。
馬蹄の反響する野は、茫々たる黄茅くわうばうおほはれて、その所々にある行潦みづたまりも、つめたく、青空を映したまま、この冬の午後を、何時かそれなり凍つてしまふかと疑はれる。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)