行潦にわたずみ)” の例文
撒き水のまだ溜り残っている行潦にわたずみを、春の名残りの恋猫が足を気色悪るげに振って渡り過ぎる姿が、先き角の小学児童用品店の灯で、痩せさらばった影にいます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一坪の畳は全くあけに染みて、あるいは散り、あるいはほとばしり、あるいはぽたぽたとしたたりたる、そのあとは八畳の一間にあまねく、行潦にわたずみのごとき唐紅からくれないの中に、数箇所の傷を負いたる内儀の、こぶしを握り
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)