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波立
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なみだ
唯見る時、
頬を
蔽へる髪のさきに、ゆら/\と
波立つたが、そよりともせぬ、
裸蝋燭の
蒼い光を放つのを、
左手に取つてする/\と。
林は、
風のために
波立っていました。からすは
火の
子の
飛ぶように、
空に
黒く、
鳴きさわいでいました。そして、
日は、だんだんと
暮れかかっていたのです。
「
兼さんすつかり
惚られつちやつた」と
風呂桶の
傍からいつた。おつぎは
顏を
赧くして
慌しく
手桶を
持つて
遁げた。一
杯に
汲んだ
手桶の
水が
少し
波立つて
滾れた。
小川の
油のやうな
水面は
大きく
波立つて、
眞黒な
人影が
毆れた
蝙蝠傘のやうに
動いてゐた。
銀色のマントをきらきら
波立てて
野原を見まわったり、ホモイはうれしさに
何遍も
私は、實際、私の胸の中にたゞ惡い感情のみが
波立つてゐるのを感じたから。
颯と
蒼く
成つた
面影と、ちらりと
白い
爪尖ばかりの
残つた
時で——
獣が
頓て
消えたと
思ふと、
胸を
映した
影が
波立ち、
髪を
宿した
水が
動いた……
風は、おばあさんの
白髪を
波立たせ、
大根の
葉を
吹きちぎりそうに、もみにもんだのであります。
崖やほりには、まばゆい
銀のすすきの
穂が、いちめん風に
波立っています。
たちまち、
青葉の
上を
波立っていました
山風が
襲ってきて、この
日がさをさらってゆきました。
けれど、そんなものは、だれの
目にも
入りません。ただ、みんなは、
光の
海を
泳ぐように、かみの
毛を
風に
波立たせ、たのしくて、しかたがないと、
小さい
胸をふくらませていました。
いつも
快活で、そして、また
独りぼっちに
自分を
感じた
年子は、しばらく、
柔らかな
腰掛けにからだを
投げて、うっとりと、
波立ちかがやきつつある
光景に
見とれて、
夢心地でいました。
そこで、みんなが
外に
出てみますと、ボンは
脇腹のあたりをせわしそうに
波立て、
苦しい
息をしていました。そうして、もう
呼んでも、
起き
上がって
尾を
振ることもできなかったのであります。
どこか、
遠いところで、
凧のうなる
音が
聞こえていました。そして、
風が、すさまじく、すぎの
木の
頂を
吹いています。その
風は、また、かごの
中のやまがらの
頭の
細い
小さな
毛をも
波立てました。