波立なみだ)” の例文
見る時、ほおおおへる髪のさきに、ゆら/\と波立なみだつたが、そよりともせぬ、裸蝋燭はだかろうそくあおい光を放つのを、左手ゆんでに取つてする/\と。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はやしは、かぜのために波立なみだっていました。からすはぶように、そらくろく、きさわいでいました。そして、は、だんだんとれかかっていたのです。
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かねさんすつかりほれられつちやつた」と風呂桶ふろをけそばからいつた。おつぎはかほあかくしてあわたゞしく手桶てをけつてげた。一ぱいんだ手桶てをけみづすこ波立なみだつてこぼれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小川をがはあぶらのやうな水面すゐめんおほきく波立なみだつて、眞黒まつくろ人影ひとかげこはれた蝙蝠傘かうもりがさのやうにうごいてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
銀色ぎんいろのマントをきらきら波立なみだてて野原のはらを見まわったり、ホモイはうれしさに何遍なんべん
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私は、實際、私の胸の中にたゞ惡い感情のみが波立なみだつてゐるのを感じたから。
さつあをつた面影おもかげと、ちらりとしろ爪尖つまさきばかりののこつたときで——けものやがえたとおもふと、むねうつしたかげ波立なみだち、かみ宿やどしたみづうごいた……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かぜは、おばあさんの白髪しらが波立なみだたせ、大根だいこんきちぎりそうに、もみにもんだのであります。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
がけやほりには、まばゆいぎんのすすきのが、いちめん風に波立なみだっています。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たちまち、青葉あおばうえ波立なみだっていました山風やまかぜおそってきて、このがさをさらってゆきました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、そんなものは、だれのにもはいりません。ただ、みんなは、ひかりうみおよぐように、かみのかぜ波立なみだたせ、たのしくて、しかたがないと、ちいさいむねをふくらませていました。
托児所のある村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつも快活かいかつで、そして、またひとりぼっちに自分じぶんかんじた年子としこは、しばらく、やわらかな腰掛こしかけにからだをげて、うっとりと、波立なみだちかがやきつつある光景こうけいとれて、夢心地ゆめごこちでいました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこで、みんながそとてみますと、ボンは脇腹わきばらのあたりをせわしそうに波立なみだて、くるしいいきをしていました。そうして、もうんでも、がってることもできなかったのであります。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どこか、とおいところで、たこのうなるおとこえていました。そして、かぜが、すさまじく、すぎのいただきいています。そのかぜは、また、かごのなかのやまがらのあたまほそちいさなをも波立なみだてました。
ある日の先生と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)