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昏々
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こんこん
ふりがな文庫
“
昏々
(
こんこん
)” の例文
昏々
(
こんこん
)
と眠っているお祖父さんの顔を見ていると、かなしさ心ぼそさが
犇
(
ひし
)
ひしと胸をしめつけ、身もだえをしたいほど息苦しくなった。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二
間
(
ま
)
のうち一間のほうには、お十夜孫兵衛、
宿酔
(
ふつかよい
)
でもしたのか、
蒼味
(
あおみ
)
のある顔を枕につけ、もう
午頃
(
ひるごろ
)
だというに
昏々
(
こんこん
)
と
熟睡
(
じゅくすい
)
している。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それにもかかわらず、
当
(
とう
)
の名探偵は、いつさめるともなく、
昏々
(
こんこん
)
と眠っている。眠った上にご
丁寧
(
ていねい
)
にも身動きもできず
縛
(
しば
)
られている。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
夕刻頃から、ゆき子は、
昏々
(
こんこん
)
と眠つた。少しばかり熱もひいたやうだ。四時間ごとに注射したペニシリンが、利いたのかも知れない。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
いぶかしげにあたりを見まわした左膳、横の床に、まだあおい顔をして死人のごとく
昏々
(
こんこん
)
とねむっている柳生源三郎に眼が行くと
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
はっきりした声でこういったので、葉子が顔を近寄せて何かいおうとすると
昏々
(
こんこん
)
としてたわいもなくまた眠りにおちいるのだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こう言い含めたのは、ツイ三日前、その翌る日は三右衛門、二度目の
中風
(
ちゅうぶう
)
に当って、正気を失ったまま、
昏々
(
こんこん
)
と
睡
(
ねむ
)
ってばかりいるのです。
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は、ただもう
昏々
(
こんこん
)
と眠った。空襲警報が鳴っても、ボーイが、よほど
喧
(
やかま
)
しくいわないと、彼は、防空地下室へ下りようとはしなかった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
起き返ろうとしたが
節々
(
ふしぶし
)
が痛い、じっとしていれば
昏々
(
こんこん
)
として眠くなる、小川の
縁
(
ふち
)
へのたって行って水を一口飲んで、やっと気が定まる。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すでに刻限も夜半に近く、ほどなく
海霧
(
ガス
)
も晴れ間を見せようというころ、ラショワ島の岩城は、いまや
昏々
(
こんこん
)
と眠りたけていた。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
今日も真夏の、明るい太陽が、箱根の山々を
輝々
(
きき
)
として、照し初めた。が、人事不省の
裡
(
うち
)
に眠っている瑠璃子は、
昏々
(
こんこん
)
として覚めなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして今、饑えにおとろえはて、血は寒さに凍りクリスマス前夜の夜あかしのたのしさを思い浮べながら、
昏々
(
こんこん
)
と死んで行こうとするのです。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
彼は一日中
昏々
(
こんこん
)
と眠っていたいと考えるのだが、いろんな用事がむらがって起き、止むなく歩き廻ったり人に会ったりしなければならなかった。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
しかしふだんは重苦しい眠が、——それ自身悪夢のような眠が、
間
(
ま
)
もなく彼女の心の上へ、
昏々
(
こんこん
)
と
下
(
くだ
)
って来るのだった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は
昏々
(
こんこん
)
と
睡
(
ねむ
)
りながら、とりとめもない夢をみていた。夜の燈が雨に
濡
(
ぬ
)
れた田の
面
(
も
)
へ
洩
(
も
)
れているのを見ると頻りに妻の臨終を憶い出すのであった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そうして約三四十時間も前後不覚の状態に陥って、
昏々
(
こんこん
)
と眠り続けると、又もや、アンポンタン・ポカン然として
眼球
(
めだま
)
をコスリコスリ起上るのだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
病院の静かな奥の一室に妻は
昏々
(
こんこん
)
と睡っていた。窓の外の八ツ手が青い影を寝台の上へ落していた。白い手術衣を着て枕
許
(
もと
)
に立っていた若い医師は
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
画工は
画
(
え
)
の具その他をたずさえて、役人に伴われて行きますと、どういうわけか、城の門を出る頃からその役人はただ
昏々
(
こんこん
)
として酔えるが如きありさまで
中国怪奇小説集:09 稽神録(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
僕はマルセーユから催眠酒をのまされたような意識を失って近東行の急行列車に乗ると
昏々
(
こんこん
)
とマホガニイの寝台でフロレンス辺まで吊されていたらしいのだ。
孟買挿話
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
洞斎老人も安心して、それからは
昏々
(
こんこん
)
として眠るばかり。遂にその翌日、帰らぬ旅へと立ったのであった。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
然るにわが日中両国を
返顧
(
へんこ
)
するも、猶お未だ、
昏々
(
こんこん
)
蒙々
(
もうもう
)
、一に大祥の
将
(
まさ
)
に臨み亡種の惨を知らざるが如し。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
大尉は
昏々
(
こんこん
)
と死んで行きました。娘のことを口走りながら——が、その娘のためには、一文も残さずに。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
甘々
(
うまうま
)
部屋から
誘惑
(
おびきだ
)
し、鳳凰の間まで連れて来るや活をもって息吹き返させ、さらにオースチン師の催眠術をもって
睡眠
(
ねむり
)
に入れられた白虎太郎は今や
昏々
(
こんこん
)
と眠っている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
妙子は常から人一倍
夜聡
(
よざと
)
く、
些細
(
ささい
)
な故障にも直ぐ眼を覚ますたちであるのに、雪子は見かけに
依
(
よ
)
らぬ呑気なところがあって、くたびれると汽車の中などでも、椅子に掛けたまま
昏々
(
こんこん
)
と眠る
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ある日、
渠
(
かれ
)
は、とある道ばたにぶっ倒れ、そのまま深い
睡
(
ねむ
)
りに落ちてしまった。まったく、何もかも忘れ果てた
昏睡
(
こんすい
)
であった。渠は
昏々
(
こんこん
)
として幾日か睡り続けた。空腹も忘れ、夢も見なかった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
笑い草ですが、余り頭が苦しくて
昏々
(
こんこん
)
と眠るからね、もしかしたらこの頃流行の嗜眠性脳炎ではないかと思って、もしそういう疑いがあれば正気なうちにあなたに手紙を書いて置こうと思ったの。
獄中への手紙:03 一九三六年(昭和十一年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は、口から
頬
(
ほお
)
へかけて泥だらけになって
昏々
(
こんこん
)
と死のように眠った。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
曰く、『昼もまた知らざるところありや』と。先生曰く、『
汝
(
なんじ
)
よく昼の
懵々
(
ぼうぼう
)
として
興
(
お
)
き、
蠢々
(
しゅんしゅん
)
として食するを知るのみ。行いて著しからず、習いて
察
(
つまびら
)
かならず、終日
昏々
(
こんこん
)
として、ただこれ夢の昼なり。 ...
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「ちょッとしたイタズラじゃアないのかなア。あの人ならそれぐらいのイタズラはやりかねないよ。浮気封じに
昏々
(
こんこん
)
と眠らせてやろうてんで、チョイとフラスコへイタズラする、面白そうなことだからな」
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
火桶の中には、
蛍
(
ほたる
)
ほどな火の気しかなかった。だが、飢えも寒さも第二のものだった。彼は手枕のまま
二刻
(
ふたとき
)
あまり、
昏々
(
こんこん
)
と眠っていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昏々
(
こんこん
)
と眠りにはいりながらも、伊香保でのさまざまな思ひ出が夢になり、
現
(
うつゝ
)
になり、ゆき子は寝苦しく息がつまりさうだつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
竜之助は道標の下に倒れて、
昏々
(
こんこん
)
として眠っている間に、サーッと雨が降って来ました。
時雨
(
しぐれ
)
の空ですから、雲が廻ると雨の落ちるのも早い。
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それ以来、私は
人事不省
(
じんじふせい
)
となり、全身ところきらわず
火傷
(
やけど
)
を負ったまま、
翌朝
(
よくちょう
)
まで
昏々
(
こんこん
)
と
死生
(
しせい
)
の間を
彷徨
(
ほうこう
)
していたのである。
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さうしてそれを耳にすると共に、彼は
恰
(
あたか
)
も天使の
楽声
(
がくせい
)
を聞いた
聖徒
(
セエント
)
のやうに
昏々
(
こんこん
)
として意識を失つてしまつたのである。
東京小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
秘書官と令嬢とが同時に駈け寄って、伯爵の
巨躯
(
きょく
)
を支える様にしたが、伯爵は已に
昏々
(
こんこん
)
と不自然な眠りに陥っていた。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
妹は
昏々
(
こんこん
)
として眠り続ける姉の顔——少しむくんで、見る影もなく日頃の美しさを打ち壊された姉の顔——を、痛々しく差しのぞき乍らこう申します。
呪の金剛石
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
金之助が駆けつけてから三日のあいだ、助左衛門はまったく意識がなく、ただ
昏々
(
こんこん
)
と眠り続けていた。
落ち梅記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そしてそのまま
昏々
(
こんこん
)
として眠るように仰向いたまま目を閉じていた。倉地は肩で激しく
息気
(
いき
)
をつきながらいたましく取り乱した葉子の姿をまんじりとながめていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一時間近くもかゝったために、瑠璃子は、多量の出血のために、
昏々
(
こんこん
)
として人事不省の裡にあった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
二人の中の一粒種、十一歳の可愛い盛り、葉之助は大熱に浮かされながら
昏々
(
こんこん
)
として眠っている。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
折竹は、もうその時は
昏々
(
こんこん
)
とねむっていたのだ。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
疲れてふと洞窟の
床
(
ゆか
)
へ身を投げて
臥
(
ふ
)
すと、
昏々
(
こんこん
)
として二日もさめないことがある。そんな時、
頭心
(
とうしん
)
だけが
錐
(
きり
)
のように
研
(
と
)
げていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ベッドの毛布の上に転がつてゐると、トラックの震動がまだ続いてゐるやうで、耳の中がふたをしたやうに重苦しかつた。
昏々
(
こんこん
)
と眠りたかつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
それらのすべての機関が働かないにしても、眼だけでも動けば、多少ものを言うのであろうけれど、その眼も
昏々
(
こんこん
)
として眠ったままでいるのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
常子は青い顔をしたまま、呼びとめる勇気も失ったようにじっと夫の
後
(
うし
)
ろ姿を見つめた。それから、——玄関の落ち葉の中に
昏々
(
こんこん
)
と
正気
(
しょうき
)
を失ってしまった。……
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
葉子は
昏々
(
こんこん
)
として熱も光も声もない物すさまじい暗黒の中にまっさかさまに浸って行った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
入口の
扉
(
と
)
は開いたまま、中にいる佐五平老人は、昼の事務服を着て、テーブルにもたれたなり、
昏々
(
こんこん
)
と泥に酔ったフナのように、半醒半眠のありさまで泡を吹いているではありませんか。
九つの鍵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
不安と
疲労
(
つかれ
)
とで使徒達は、木の根や岩角を枕とし、
昏々
(
こんこん
)
として眠っていた。
銀三十枚
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今夜姉は
卒倒
(
そっとう
)
しましてね、ぼくたちおどろきました。それから姉は、
昏々
(
こんこん
)
と睡りつづけているのです。お医者さんも呼びましたが、手当をしても
覚醒
(
かくせい
)
しないのです。昼間は、たいへん元気でしたがね
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
家にはいると、彼はすぐ師の病室をそっと
窺
(
うかが
)
った。勘兵衛は
昏々
(
こんこん
)
とふかい寝息の中にある。ほっと胸をなでて、彼は自分の居間へ
退
(
さ
)
がった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昏
漢検準1級
部首:⽇
8画
々
3画
“昏々”で始まる語句
昏々昧々
昏々濛々