“昏々:こんこん” の例文
“昏々:こんこん”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治21
中里介山7
海野十三5
芥川竜之介5
国枝史郎3
“昏々:こんこん”を含む作品のジャンル比率
文学 > 英米文学 > 小説 物語(児童)11.1%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
ゆき子が昏々こんこんと眠りかけて来たので、そのまゝ机に向ひ、富岡は林業と植物に就いての、仏印の思ひ出の原稿に向つた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
焼け落ちた門、はや、夏草を見せだした瓦礫がれきのかげなどに、よだれを垂らして、よく昏々こんこんと、うつむいている。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八弥の体は、人間の波の上に浮き上がった。彼は、宙に足を振って、何か叫んだが、すぐに、昏々こんこんと仮死してしまった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、お粂はやがて夜具の中の昏々こんこんたる夢の人を軽くゆすぶって、なお醒めない寝顔に吾を忘れて見入っておりましたが、
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よほど打ち所が悪かったとみえる。周瑜しゅうゆは営中の一房に安臥あんがしても、昏々こんこんとうめき苦しんでいる。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは神童子越えのうちの峠の一つ。幸いに、通る者はなかったものの、君臣三名は、そのまま昏々こんこんと絶え入りそうな姿だった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともすれば昏々こんこんと眼をふさぎたくなるような容子の官兵衛であったが、又四郎の声と知ると、上眼を吊って、にことうなずいた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしふだんは重苦しい眠が、——それ自身悪夢のような眠が、もなく彼女の心の上へ、昏々こんこんくだって来るのだった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
はっきりした声でこういったので、葉子が顔を近寄せて何かいおうとすると昏々こんこんとしてたわいもなくまた眠りにおちいるのだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いぶかしげにあたりを見まわした左膳、横の床に、まだあおい顔をして死人のごとく昏々こんこんとねむっている柳生源三郎に眼が行くと、
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と云って帆村は半身を起しかけたが、「あッ痛い」と、またもや地上にゴトリと倒れてしまった。そして昏々こんこんとして睡ってしまった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すでに刻限も夜半に近く、ほどなく海霧ガスも晴れ間を見せようというころ、ラショワ島の岩城は、いまや昏々こんこんと眠りたけていた。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
然るにわが日中両国を返顧へんこするも、猶お未だ、昏々こんこん蒙々もうもう、一に大祥のまさに臨み亡種の惨を知らざるが如し。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そしてそのまま、昏々こんこん夢現むげんの境にはいった頃、兄の姿はまた、前の夜と変りなく、彼の眼に見えた。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昏々こんこんと眠りにはいりながらも、伊香保でのさまざまな思ひ出が夢になり、うつゝになり、ゆき子は寝苦しく息がつまりさうだつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「ふウーム……」と、等しく、長屋の者が、目と目を見あわせていると、今まで、昏々こんこんとしていた紋日の虎。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大尉は昏々こんこんと死んで行きました。娘のことを口走りながら——が、その娘のためには、一文も残さずに。
驚いて清十郎が顔を差し覗くと、朱実はもう答えもせぬ。青いまぶた昏々こんこんと眠っているのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくしばらく、昏々こんこんたる夢路を歩んでいるが、道庵お立ちの声は、容易にその夢を驚かすことがない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして今、饑えにおとろえはて、血は寒さに凍りクリスマス前夜の夜あかしのたのしさを思い浮べながら、昏々こんこんと死んで行こうとするのです。
一時間近くもかゝったために、瑠璃子は、多量の出血のために、昏々こんこんとして人事不省の裡にあった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
が、——いつのまにか、昏々こんこんと深く眠り落ちていた。その母もなく、腹の痛みもなく、天地もなく。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は一日中昏々こんこんと眠っていたいと考えるのだが、いろんな用事がむらがって起き、止むなく歩き廻ったり人に会ったりしなければならなかった。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
二人の中の一粒種、十一歳の可愛い盛り、葉之助は大熱に浮かされながら昏々こんこんとして眠っている。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし夜が明けると、昏々こんこんと眠りに落ち、日が高きころ目をさまして、平常にかえってきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、偽目くらと挌闘中、ピストルの弾丸たまあたった巡査は、もう昏々こんこんと倒れていた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
竜之助は道標の下に倒れて、昏々こんこんとして眠っている間に、サーッと雨が降って来ました。時雨しぐれの空ですから、雲が廻ると雨の落ちるのも早い。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さうしてそれを耳にすると共に、彼はあたかも天使の楽声がくせいを聞いた聖徒セエントのやうに昏々こんこんとして意識を失つてしまつたのである。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
疲れてふと洞窟のゆかへ身を投げてすと、昏々こんこんとして二日もさめないことがある。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妹は昏々こんこんとして眠り続ける姉の顔——少しむくんで、見る影もなく日頃の美しさを打ち壊された姉の顔——を、痛々しく差しのぞき乍らこう申します。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
らい了戒りょうかいの大刀に、衰えた肩をもたせかけ、膝を友禅ゆうぜんの小蒲団にくるんで、相良さがら金吾は昏々こんこんと眠っております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それらのすべての機関が働かないにしても、眼だけでも動けば、多少ものを言うのであろうけれど、その眼も昏々こんこんとして眠ったままでいるのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ガッカリしたのは滝之助ばかりでは無かった。洞斎老人も安心して、それからは昏々こんこんとして眠るばかり。遂にその翌日、帰らぬ旅へと立ったのであった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
家にはいると、彼はすぐ師の病室をそっとうかがった。勘兵衛は昏々こんこんとふかい寝息の中にある。ほっと胸をなでて、彼は自分の居間へ退がった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてついには、戦い戦い駈けまわる馬の上で、われ知らず昏々こんこんと神気を失いかけていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして約三四十時間も前後不覚の状態に陥って、昏々こんこんと眠り続けると、又もや、アンポンタン・ポカン然として眼球めだまをコスリコスリ起上るのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
起き返ろうとしたが節々ふしぶしが痛い、じっとしていれば昏々こんこんとして眠くなる、小川のふちへのたって行って水を一口飲んで、やっと気が定まる。
火桶の中には、ほたるほどな火の気しかなかった。だが、飢えも寒さも第二のものだった。彼は手枕のまま二刻ふたときあまり、昏々こんこんと眠っていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕はマルセーユから催眠酒をのまされたような意識を失って近東行の急行列車に乗ると昏々こんこんとマホガニイの寝台でフロレンス辺まで吊されていたらしいのだ。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
不安と疲労つかれとで使徒達は、木の根や岩角を枕とし、昏々こんこんとして眠っていた。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いま、北斗を見るに、大なる一星は、昏々こんこんと光をかくし、七星の座はくずれている。こんどこそ間違いはない。今夕こんせき、孔明は必ず死んだろう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が後から後へと流れて行く。兵馬の眼前へ来て、その面が二つに分れて、左右へ流れて行く。それを見ると、昏々こんこんとしていよいよ眠くなって幽冥の境へ誘われる。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
途中、一宿して、翌日は長安の都へかかるのだった。ところがその日は、めずらしく霧がふかく、行列が発する頃から狂風が吹きまくって、天地は昏々こんこんと暗かった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昏々こんこんとしていた病人は、そのとき微かに手をうごかした。秀吉の声が耳へとおったらしく、うっすらひとみをあけて、何か、近侍に意志を告げようとしていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、——玄関の落ち葉の中に昏々こんこん正気しょうきを失ってしまった。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、自由に、思うままに、獄舎の、牢格子のなかにさえ、やすやすとはいって、昏々こんこんと、つかしている恋人の肩にすがって、その、寝顔をのぞいて、
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昏々こんこんとして、どのくらいのあいだ、眠りこけたか、それはわからない。或いは、ほんのうたた寝のつかを破られてしまったのかどうか、それも分らないが、
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、人事不省のうちに眠っている瑠璃子は、昏々こんこんとして覚めなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼は、口からほおへかけて泥だらけになって昏々こんこんと死のように眠った。
死屍を食う男 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
憐れむべし、彼はうなずいて、ほどなく昏々こんこんと、ふかい鼾の中に陥ちた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昏々こんこんと、しばらくは何もしらなかった。誰かそのうちに起す者がある。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてそのまま昏々こんこんとして眠るように仰向いたまま目を閉じていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そのよいから昏々こんこんとして、遂に、彼の七十八歳の生涯は、雪ふかい柳生谷のあした、静かに終りを告げた。いやその遺業に悠久を約して大往生をとげたものと云えよう。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が幽里子は返事もなく昏々こんこんとして東野南次の腕に倒れるのです。
私は昏々こんこんねむりながら、とりとめもない夢をみていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
それ以来、私は人事不省じんじふせいとなり、全身ところきらわず火傷やけどを負ったまま、翌朝よくちょうまで昏々こんこん死生しせいの間を彷徨ほうこうしていたのである。
のうち一間のほうには、お十夜孫兵衛、宿酔ふつかよいでもしたのか、蒼味あおみのある顔を枕につけ、もう午頃ひるごろだというに昏々こんこん熟睡じゅくすいしている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからまたあと三時間ばかり、彼は昏々こんこんとして眠った。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三日ばかりは、昏々こんこんとただうめいている孫策であった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二つの生命は昏々こんこんとして死の方へ眠って行った。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
折竹は、もうその時は昏々こんこんとねむっていたのだ。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
笑い草ですが、余り頭が苦しくて昏々こんこんと眠るからね、もしかしたらこの頃流行の嗜眠性脳炎ではないかと思って、もしそういう疑いがあれば正気なうちにあなたに手紙を書いて置こうと思ったの。
その時、お十夜は、まだ昏々こんこんと眠り落ちていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八、九十日から先は、一切夢中でございました。何も覚えませぬ。精も力も尽き、昏々こんこんと仆れて夢中の霧につつまれたように気を失ったのが、ちょうど百日目の暁方あけがたでございました」
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老婆は、血の交じったつばを、口の中にためながら、ささやくようにこう言うと、それなり恍惚こうこつとした、失神の底に、——おそらくは、さめる時のない眠りの底に、昏々こんこんとして沈んで行った。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
渠は昏々こんこんとして幾日か睡り続けた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そしてまた、二人は昏々こんこんと眠った。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
画工はの具その他をたずさえて、役人に伴われて行きますと、どういうわけか、城の門を出る頃からその役人はただ昏々こんこんとして酔えるが如きありさまで、自分の腰帯をはずして地に投げ付けたりするのです。
彼は、ただもう昏々こんこんと眠った。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
猛烈な胃痙攣いけいれんを起こした患者が、モルヒネの注射を受けて、間歇的かんけつてきに起こる痛みのために無意識に顔をしかめながら、麻薬まやくの恐ろしい力の下に、ただ昏々こんこんと奇怪な仮睡に陥り込むように
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
昏々こんこんと眠った。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
襲われたような気持ちで門番小屋を覗くと、入口のは開いたまま、中にいる佐五平老人は、昼の事務服を着て、テーブルにもたれたなり、昏々こんこんと泥に酔ったフナのように、半醒半眠のありさまで泡を吹いているではありませんか。
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「ちょッとしたイタズラじゃアないのかなア。あの人ならそれぐらいのイタズラはやりかねないよ。浮気封じに昏々こんこんと眠らせてやろうてんで、チョイとフラスコへイタズラする、面白そうなことだからな」と、セムシ詩人がニヤニヤしながら言う。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
行いて著しからず、習いてつまびらかならず、終日昏々こんこんとして、ただこれ夢の昼なり。ただそくも養うあり、しゅんも存することあり、この心惺々せいせい明々めいめいとして、天理一息の間断なくして、わずかにこれよく昼を知るなり。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「そのことも、ちょっと心配なんです。今夜姉は卒倒そっとうしましてね、ぼくたちおどろきました。それから姉は、昏々こんこんと睡りつづけているのです。お医者さんも呼びましたが、手当をしても覚醒かくせいしないのです。昼間は、たいへん元気でしたがね」
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
怪しい幽霊を映し出す機械——すなわち今日の幻灯をもって守衛どもを驚かせ、甘々うまうま部屋から誘惑おびきだし、鳳凰の間まで連れて来るや活をもって息吹き返させ、さらにオースチン師の催眠術をもって睡眠ねむりに入れられた白虎太郎は今や昏々こんこんと眠っている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蒼白あおじろかおにしてからが、爛酔の気分は充分だから、わざと生酔いの擬勢をして見せるのではなく、当人は昏々こんこんとして夢かうつつかの境にいるらしいが、それにしても、眼をつぶったきりで、こちらを眼中に置かないのが、やっぱりキザであり、しゃくであると村正さんも、きわどい間に始終それを気にしておりました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
念のために、食堂の隣りの洋風の居間——いつもそこで団らんの半夜を過ごす十畳ほどの部屋を覗いて見ると、いるいる、そこにはまん中の大テーブルを囲んで、植野誠一とひとりの書生とふたりの女中が、おとぎばなしの「眠り姫」の家来共のように、めいめいの姿態で、真に千年も眠りこけた姿で、昏々こんこんとして深い眠りにおちているのです。
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)