)” の例文
蛙でさえも水田に鳴き、ともを求める時であった。梅の実の熟する時、鵜飼うかいの鵜さえがう時、「お手討ちの夫婦なりしを衣更ころもがえ」
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二人が話しているうちに、百合子は綺麗きれいに木皿をからにした。そうして木に竹をいだような調子で、二人の間に割り込んで来た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
弾いていた仲次郎が、むりな喧嘩けんかを売られたうえ、大事な右の腕をぶち折られた、骨はいだが撥は満足に動かねえ、岸沢を
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もともと木に竹をげると思つてゐられる程の馬鹿でなければ、芸術に指導原理だのといふことを云へるものではない。
芸術論覚え書 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
お八重は身體を捻つて背中合せに腰掛けた商人體の若い男と、頭を押けた儘、眠つたのか眠らぬのか、ぢつとしてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
京子は、村川の前でしみじみ懺悔ざんげをしようと思った。半分本当の懺悔をし、それにうその懺悔をぎたそうと思った。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
木に竹をいだようにして古事記は聖書と同じだなどと言うむきがありますが、古事記に聖書をはりつければ旧いものも新しいものも共に破れてしまう。
「枝ぶり悪き桜木は、切ってぎ木をいたさねば、太宰のいえが立ちませぬ。」と、定高はりんとした声で云い放つ。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
地方いなかへ行かない工夫はないの?」と忘れたように、肩にもたれて、胸へすがったお妙の手を、上へ頂くがごとくに取って、主税は思わず、唇を指環ゆびわけた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこでそのとき上手な植木屋に命じて、その一本の親木からぎ穂を採って用意せる砧木に接がせてみた。
寒桜の話 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
よく見ると縦半分たてはんぶんに切断した二人の身体を半分ずつぎ合わせてあった。右がレッドで、左がヤーロ。ちっとも足並が揃わず、二本の手は激しくつねり合っている。
一九五〇年の殺人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
政治家や耽美たんび家や社会学者がそれにぎ木されることは、おかしな変形だと思っていた。それでも彼は、この頑健がんけんな人が他人に地位を譲ったのが理解できなかった。
けっして竹に木をぎ、木に竹を接ぐような少しも成長しない価値のない生涯ではないと思います。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
天の神は心配して使をり、薬を飲ませて生き返らせ、稲の穂は再びニラの島に持参して元の穂にぎ、初穂の祭がすんで後に、改めて同じ種をい受けてさせた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかし、誰との逢いびきであろう。私が一つの事実と他の事実とをぎあわせたとき、あるおぼろげな観念は浮かんで来たけれども、その結論はやはりまとまらないのであった。
緬羊児を買いてその尾に山羊児の尾をいだというのがあって一層面白いという(ここ脱文ありと見え意義多少分らず)、アスクレピアデスは、牝鶏よく卵を生むと見せるため
きびすいで、峯入りをされるのだから、目の廻るほどのいそがしさを味わうのだ。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
色のくま揺り揺りひかる褞袍どてら夜釣すらしか榜ぎのけぶかさ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そんなにして据わっていて、にかわぎ合せて
木に竹をぐ問を起す。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
主人が「おい君、僕はさっきから、あの鼻について俳体詩はいたいしを考えているんだがね」と木に竹をいだような事を云う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「——とにかく日数のことなんか考えなさんな、折れた骨がつながるんだから、ぎ木をするんだっておまえさん、三十日や五十日じゃ済まないんだよ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と気を、その書物に取られたか、木に竹をいだような事を云うと、もっての外真面目まじめに受けて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いだときはどうなるのか。継ぎ目の皮には痕跡が残らないとしても、太い脚に細い脚をつければ当然そこのところが段になるではないか。そうなるとやっぱり醜くないことはないね
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ともぎ、大御船おほみふね御船出みふなで今ぞ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その札は磨いた竹と薄い象牙ぞうげとを背中合せにいだもので、その象牙の方にはいろいろの模様が彫刻してあった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おお可哀そうに痛かったかい、まあまあお召が砂だらけだ。どこも擦剥すりむきはしなかったの。え、てのひらを、どれお見せ、ほんとにねえ。」と何を持ちしか汚穢むさき手に、あたたき口をけて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この柿色の風船のように、半端な色花びらをわせたものはほかにない筈だ。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すぐ医者にもみせ、骨ぎにもかよわせて、いちおう治ったようにみえたのに、四十日ばかり経つと太腿の折れた部分がみだし、それがみるまに脱疽だっそというものになって、死んでしまったのである。
追いついた夢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ともぎ、大御船おほみふね御船出みふなで今ぞ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
針を海綿にかくして、ぐっと握らしめたる後、柔らかき手に膏薬こうやくって創口きずぐちを快よく慰めよ。出来得べくんばくちびるを血の出る局所にけて他意なきを示せ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さあ。もちろん塔の途中からいくつかに小さく折って持ってきて、こっちで、ぎあわすんだろうよ。そのままじゃ、とても船にもせられないし、陸へあげても列車にも積めないし、町を
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と崩るるごとく、片頬かたほを横にけんとしたが、きっ立退たちのいて、袖を合せた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ともぎ、大御船おほみふね御船出みふなで今ぞ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お延がどうしようかと迷っているうちに、お秀はまるで木に竹をいだように、突然話題を変化した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ともぎ、大御船おほみふね御船出みふなで今ぞ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
御神さんは余を二つあわせたように肥えている。それで病気だそうだ。始めはどこのものだか分らなかったが、御神さんと知って、調子の下女と違っているのに驚いた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
舳艫相ぐ九百余艘
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
もう一つほかの言葉で説明すると、事件が発展的に叙せられないで、読者を圧迫する程ひし/\と並んで寄せ掛るのである。あたかも金をぎ合せた様に寸分の隙間なく寄せてくる。
『煤煙』の序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「単純でいい女だ」とあとへ、持って来て、木に竹をいだようにつけた。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにもかかわらず、書いてる事が何処どことなく屠蘇とそを帯びているのは、正月を迎える想像力が豊富なためではない。何でもぎ合わせて物にしなければならない義務を心得た文学者だからである。
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)