トップ
>
恐々
>
こわごわ
ふりがな文庫
“
恐々
(
こわごわ
)” の例文
それは殺害された松川博士からきた手紙だ、死んだ者からきた手紙、——ぞっとした理学士、「…………」
恐々
(
こわごわ
)
後ろを振り向いた。
幽霊屋敷の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
桃井は、このとき初めて、なにか異常なものを彼女の眉に知って、つい、高氏への取次ぎを、
恐々
(
こわごわ
)
ながら引きうけて退がってしまった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少年 (泣くのをやめる)お姉様! (とすすり上げ、また胸を抑えて、
恐々
(
こわごわ
)
四方を見廻す。姉は密かに窓に行き、黒き布を窓に垂れる)
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
恐々
(
こわごわ
)
さしのぞいて、恐々探しましたが、丁度格子窓の出ッ張りの下に
平
(
ひら
)
みついているのですから、分る筈はないのです。
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
しばらくすると辺りはしーんとして、もう物音も何も聞こえないでしょう。あたし
恐々
(
こわごわ
)
起きて、電灯を点けて見たの。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
▼ もっと見る
国王これを聞いて召し出し
毎々
(
つねづね
)
この国を荒らし廻る二鬼を平らげしめるに縫工
恐々
(
こわごわ
)
往って見ると二鬼樹下に眠り居る
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
恐々
(
こわごわ
)
ながら
巌頭
(
がんとう
)
に四つん
這
(
ば
)
いになると、数十丈遥か下の滝壺は
紺碧
(
こんぺき
)
を
湛
(
たた
)
えて、白泡
物凄
(
ものすご
)
く
涌
(
わ
)
き返るさま、とてもチラチラして長く見ていることが出来ぬ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
「あれ、」とばかりで、考えたが、そッと襟を取って、
恐々
(
こわごわ
)
掻巻を上げて見ると、
牡丹
(
ぼたん
)
のように裏が返った、
敷蒲団
(
しきぶとん
)
との間には、紙一枚も無いのである。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
正
(
まさ
)
しく人も居ない死体室からなので、
慄然
(
ぞっ
)
としたが、
無稽無稽
(
ばかばか
)
しいと思って、
恐々
(
こわごわ
)
床
(
とこ
)
へ入るとまたしきりそれが鳴り出して、パタリと死体室の札が返るのだ。
死体室
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
それは、遠藤の声ではなくて、どうやら聞き覚えのある、
外
(
ほか
)
の人の声だったものですから、三郎はやっと逃げるのを踏み止まって、
恐々
(
こわごわ
)
ふり返って見ますと
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
急に片目になった佐柄木の貌は、何か勝手の異なった感じがし、尾田は、錯覚しているのではないかと自分を疑いつつ、
恐々
(
こわごわ
)
であったが注意して佐柄木を見た。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
しきりにすすめられるままに、私は今にも
崩
(
くず
)
れそうなその実の一つを
恐々
(
こわごわ
)
手のひらの上に
載
(
の
)
せてみた。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
恐々
(
こわごわ
)
ながら一枚の地図を案内として毎日見物のためもしくは
用達
(
ようたし
)
のため出あるかねばならなかった。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ぎょろりと二人を
睨
(
ね
)
めつけ、
恐々
(
こわごわ
)
といった顔つきでスープ鉢の蓋を取って、二人の皿に分けてやる。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
俺は、吉野君の総括的な
貶
(
けな
)
し方が、かなり気に入った。が、俺は「本当だ」とも相槌を打てなかった。実際俺はどの作品も感心していたのであるから、俺は
恐々
(
こわごわ
)
ながら
無名作家の日記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お杉は眠っている参木の身体のここかしこを、まるで処女のように
恐々
(
こわごわ
)
指頭
(
ゆびさき
)
で圧えていきながら、ああ、明日になって早く参木の顔をひと眼でも見たいものだと思った。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
私は
恐々
(
こわごわ
)
ではあったけれど、前の日、暗誦させられた通り出来るだけ声を大きくして云った。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
けれども次第に
馴
(
な
)
れて来るとまだ見ぬ庭の木立の奥が何となく心を引くので、
恐々
(
こわごわ
)
ながらも幾年か
箒目
(
ほうきめ
)
も入らずに朽敗した落葉を踏んでは、未知の国土を探究する冒険家のように
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
見ると、私は急に死ぬのが怖くなりました。——ここでお由良の死骸が見付かると、私と幾松に疑いがかかると思ったので、
恐々
(
こわごわ
)
ながら、橋の欄干の間を
潜
(
くぐ
)
らせて、お由良の死骸を
銭形平次捕物控:122 お由良の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
貞之進も
恐々
(
こわごわ
)
末席へ就いたが、あとで思うとあまり末席過ぎて両隣りが明いて居るため、かえって誰の目にも附くようで我ながら
鈍
(
おぞ
)
ましい、これにしても
知己
(
しりびと
)
のひとりでも来ればと
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
男7 (左より。
恐々
(
こわごわ
)
探りを入れるように)
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
恐々
(
こわごわ
)
何枚かの銅貨を手にしてそっと仲間のコマと一しょに張ることも覚え、いつかぼくも機会があると人なみに顔の中へ顔を突っ込んでいた。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と肩がすくんで、
裳
(
もすそ
)
わなわな、
瞳
(
ひとみ
)
を据えて
恐々
(
こわごわ
)
仰ぐ、天井の高い事。前後左右は、どのくらいあるか分らず、
凄
(
すご
)
くて
眗
(
みまわ
)
すことさえならぬ、
蚊帳
(
かや
)
に寂しき寝乱れ姿。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白
(
せりふ
)
は勇ましいが慄え声で、
恐々
(
こわごわ
)
くぐりをあけながら、恐る恐る顔をのぞかしたところを、武道鍛錬の冴えをもってぎゅっとつかみ押えたのは言う迄もなく退屈男です。
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
恐々
(
こわごわ
)
雪子に当ってみた妙子は、それですっかり気が楽になったので、「あれ読んだんなら、何で注射せえへんの」とすすめたけれども、雪子はそう気が進まないらしく
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私は目をつむって、最後の一杯を
汲
(
く
)
み込むと、盥から眼をそらしたまま、部屋に逃げ込んだ。十分ばかりして、
恐々
(
こわごわ
)
行って見ると、鼠は網の中で、ふくれ上って浮いていた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
昼間こそ人々は
往
(
ゆ
)
き来したが、夜になるとほとんどだれも通らず、ただひたすら先を急いで迂回することをいとう人ばかりが、
恐々
(
こわごわ
)
ながらもこの
境地
(
とち
)
を、走るようにしてとおるばかりであった。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
若い小間使は困った
容子
(
ようす
)
であったが、東儀が誰であるか、どんな役目の者かは、知っているので、
恐々
(
こわごわ
)
、奥の客間に通して、茶を出しておいた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐々
(
こわごわ
)
やって来て恐々窓から表をのぞくと、きょろきょろあたりを見廻しながら呟きました。
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
命
(
いい
)
つけられて内儀は
恐々
(
こわごわ
)
手を
曳
(
ひ
)
いて導けば、怪しき婦人は逆らわず、素直に夫婦に従いて、さもその情を謝するがごとく秋波斜めに泰助を見返り見返り、
蹌踉
(
よろよろ
)
として出行きぬ。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
支配の勘介が
恐々
(
こわごわ
)
云う。
郷介法師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
往来まで、
恐々
(
こわごわ
)
と、様子を見に行ってもどって来た若い男は、町屋の裏へかけこんで、手つき物まねで、しゃべっていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(どうだ、お前ここにあるものを知ってるかい。)とお神さんは、その筵の上にあるものを、
指
(
ゆびさし
)
をして見せますので、私は
恐々
(
こわごわ
)
覗
(
のぞ
)
きますと、何だか
厭
(
いや
)
な匂のする、色々な
雑物
(
ぞうもつ
)
がございましたの。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
恐々
(
こわごわ
)
と、すがる手を、郁次郎は自分の手へ
拯
(
すく
)
い取った。彼女のいじらしい恋は、爪のさきまで、桃いろに燃えていた。熱い、火のような手だった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とまた
俯向
(
うつむ
)
いたが
恐々
(
こわごわ
)
らしい。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
厠
(
かわや
)
の
出廂
(
でびさし
)
へ、足をのばし、
恐々
(
こわごわ
)
と、塀のみねを、猫づたいに渡って、家と家との間の、狭い路地へ飛び降りた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし余り動かないので
恐々
(
こわごわ
)
と近づいてみると、五体に
毛矢
(
けや
)
を負って、まるで毛虫のようになった典韋は、天を睨んで立ったまま、いつの間にか死んでいた。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてやがて、船にものせられた心地がする。——奇妙、不思議、いったい何処かと、
恐々
(
こわごわ
)
、縄を解かれて出てみれば、思いがけない、旧知の恩人が笑っている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といってもまだ、ふたりともに、公卿生活と女院の内のみやびから
恐々
(
こわごわ
)
ただよい出たばかりである。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうしたのだ、百姓の子でも、咬み殺したのか、おまえは……」心蓮は、
恐々
(
こわごわ
)
、寄って行った、黒犬の体は、狂いに狂っていたためであろう、自分の血でよごれていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、鄭重のうちにもどやどやして、やがて
蒔絵
(
まきえ
)
の
文筥
(
ふばこ
)
の房長なのを
恐々
(
こわごわ
)
持った近所の内儀が
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐々
(
こわごわ
)
、おふくろのヘソの穴から外を覗いてみると、家は大阪のゴミゴミした横丁で、おやじは古着屋らしく、無精ひげを生やして、ボロの山の中でゼニ勘定か何かしているし
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お父さん、いつ帰るの」或るとき、ぼくが
恐々
(
こわごわ
)
訊くと「もうじきお帰りになるけれど」と、母は口を濁した。その時も、父についてはそれ以上触れたがらない顔いろだった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
巧雲はまた
良人
(
おっと
)
の部屋へ
恐々
(
こわごわ
)
と入って行った。するとすぐ、彼女の悲鳴がヒーッともれた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
開け放されてある妻戸のひとつから入って、奥まった一間のうちへ、こう呼ぶと、うめきが聞え、そして、誰じゃ? ……と、
恐々
(
こわごわ
)
いう声がする。次の間あたりから、小次郎が
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いちどは小鳥の起つような
姿態
(
しな
)
をしめし、すぐ逃げ去ろうとしたかのようであった。——が、思い直したふうで、ふた足三足、近づいて来た。そして
恐々
(
こわごわ
)
身をすこしかがめて訊ねた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐々
(
こわごわ
)
と逃げッ尻を揃えて
李逵
(
りき
)
のいる一室を
窺
(
うかが
)
ってみると、なんと李逵はそこらにあった
革梱
(
かわごり
)
のふたを引っくり返して、
緑袍
(
りょくほう
)
の知事の官服を出してすっかり着込み、腰に
革帯
(
かくたい
)
佩剣
(
はいけん
)
を着け
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なんの、おめえ、傍の者にゃあ、何を見ているか、分る気づかいはねえ」と、眼で
強
(
し
)
いて、市十郎が、
恐々
(
こわごわ
)
、内ぶところから取出した物を、くるりと後ろ向きになって、入念に拡げて見ていた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐々
(
こわごわ
)
と、平次郎は、顔をもたげ、名号の文字をじっと見つめた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
於福は、
恐々
(
こわごわ
)
、日吉のそばへ寄って、彼の肩へ手をのせた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐
常用漢字
中学
部首:⼼
10画
々
3画
“恐”で始まる語句
恐
恐怖
恐懼
恐入
恐縮
恐慌
恐悦
恐喝
恐惶
恐多