御尤ごもつとも)” の例文
「御立腹の段は誠に御尤ごもつともで、わたくしに於ても一々御同感で御座りまする、が、だ何分にも篠田が青年等の中心になつて居りまするので」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
御尤ごもつともです——いや、それではいづれ後刻御目に懸つて、御礼を申上げるといふことにしませう。何卒どうか皆さんへも宜敷よろしく仰つて下さい。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何故なぜそうきふしたかとのきみ質問しつもん御尤ごもつともである。ぼく不幸ふかうにしてこれきみ白状はくじやうしてしまはなければならぬことに立到たちいたつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「大きに御尤ごもつともだ。だが下婢げぢよ下婢げぢよさいさいさ。下婢げぢよで用が足りる位なら、世間の男は誰だツてうるさいさいなんか持ちはしない。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
御尤ごもつともです……あんなに丹精たんせいをなさいましたから……でも、お引越ひつこしなすつたあとでは、水道すゐだうめたから、遣水やりみづれました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「成程、御尤ごもつともで……」と市島氏は型のやうに一寸頭を下げた。そしてその次ぎの瞬間には文求堂の店で見た古い唐本たうほんの値段の事を考へてゐた。
こればかりは余りおほやけに御自慢は出来ん事で御座いますもの、秘密に遊ばしますのは実に御尤ごもつともで御座います。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
若い教授は坊主と辯論がしたくない。多分セルギウスを少し足りないやうに思つてゐるらしい。そこでなんでもセルギウスの言ふことを御尤ごもつともだとばかり云つてゐる。
両親はそばにゐても、万事御無理御尤ごもつともにしてゐる。鷹雄はそれをいゝ事にして、両親の前でもわざと秋子に口をかずにゐるやうな事をする。娘にとつてこれが何よりも辛い。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
大屋様地主様いづれの御無理も御尤ごもつともと受けるたちなれば、長吉と喧嘩してこれこれの乱暴にひましたと訴へればとて、それはどうも仕方が無い大屋さんの息子さんでは無いか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御尤ごもつともです。そこで兎に角鍛冶屋町を尼さん達が大勢通るのです。朝も昼も晩も通るのです。それが皆フランスを話します。どれもどれもまづさ加減の競争をしてゐるやうなフランスですね。
(新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
吾人が折々西行芭蕉の名を引出すを怪しみたるは御尤ごもつともなり、然れども、いかにせん吾人は真正の意味に於て、日本の詩人(過去の、即ち仏教的日本の)としては先づ指を彼等に屈する者なり。
賤事業弁 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「親分さん、お疑ひは御尤ごもつともですが、私はなんにも存じません」
御尤ごもつとも至極しごく、であればこそ、松島大明神とく随喜渇仰致すではわせんか——ドウしたのか、花吉、ベラ棒に手間が取れる」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
御主意ごしゆい御尤ごもつともさふらふ唱歌しやうかおもまりさふらふあさましいかな教室けうしつさふらふしたがつてこゝろよりもかたちをしへたく相成あひなかたむ有之これあり以後いご御注意ごちゆうい願上候ねがひあげさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
御尤ごもつともです。私のやうな者でもそんなに言つて下さると思へば、決して嬉くない事はありません。ですから、その御深切に対してつつまず自分の考量かんがへをお話し申します。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大屋樣おほやさま地主樣ぢぬしさまいづれの御無理ごむり御尤ごもつともけるたちなれば、長吉ちようきち喧嘩けんくわしてこれこれの亂暴らんぼうひましたとうつたへればとて、それはうも仕方しかた大屋おほやさんの息子むすこさんではいか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御尤ごもつともです。只今のやうな校長先生の御意見を伺つて見ますと、私共が斯様こんな御相談に参るといふことからして、恥入る次第です。成程なるほど、学問の上には階級の差別も御座ございますまい。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と言つたやうなもので、どれもこれも御尤ごもつともの事づくめだ。
御尤ごもつともです、新聞には大抵、小米と申すのが、賤業せんげふおちいらぬ以前、何か兼吉と醜行でもあつた様にありますが、其れは多分小米と申すの実母はゝから出た誤聞であります
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
然し、お話の上で到底私如きの力には及ばず、成程活きてをられんのは御尤ごもつともだ、他人のわたしでさへ外に道は無い、と考へられるやうなそれが事情でありましたら、私は決しておとどめ申さん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此家このやうち一人ひとりもなし老婆ばあさまも眉毛まゆげよまれるなと憎々にく/\しくはなつて見返みかへりもせずそれは御尤ごもつとも御立腹ごりつぷくながられまでのことつゆばかりもわたくしりてのことはなしおにくしみはさることなれど申譯まをしわけ一通ひととほりおあそばしてむかしとほりに思召おぼしめしてよと詫入わびいことばきもへずなんといふぞ父親てゝおやつみれは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)