“庭先(にはさき)” の例文
お品(しな)の姿(すがた)が庭(には)に見(み)えた時(とき)には西風(にしかぜ)は忘(わす)れたやうに止(や)んで居(ゐ)て、庭先(にはさき)の栗(くり)の木(き)にぶつ懸(か)けた大根(だいこ)の乾(から)びた葉(は)も動(うご)かなかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
足音(あしおと)は向ふへ遠退(とおの)いて行く。三四郎は庭先(にはさき)へ廻つて下駄を突掛(つゝか)けた儘孟宗藪の所から、一間余の土手を這ひ下りて、提燈のあとを追掛(おつか)けて行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
未(ま)だか未(ま)だかと正太(しようた)は門(かど)へ出(で)つ入(い)りつして、呼(よ)んで來(こ)い三五郎(らう)、お前(まへ)はまだ大黒屋(だいこくや)の寮(りよう)へ行(い)つた事(こと)があるまい、庭先(にはさき)から美登利(みどり)さんと言(い)へば聞(きこ)える筈(はづ)、早(はや)く、早(はや)くと言(い)ふに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お品(しな)は庭先(にはさき)の栗(くり)の木(き)から垂(た)れた大根(だいこ)が褐色(かつしよく)に干(ひ)て居(ゐ)るのを見(み)た。おつぎも勘次(かんじ)の横(よこ)へ筵(むしろ)を敷(し)いて又(また)大根(だいこ)を切(き)つて居(ゐ)る。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何時(いつ)の間(ま)にか、人(ひと)が絽(ろ)の羽織を着(き)て歩(ある)く様になつた。二三日、宅(うち)で調物(しらべもの)をして庭先(にはさき)より外(ほか)に眺(なが)めなかつた代助は、冬帽を被(かぶ)つて表(おもて)へ出て見(み)て、急に暑さを感じた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
厭(いや)やな正太(しようた)さんだと憎(に)くらしげに言(い)はれて、夫(そ)れならば歸(かへ)るよ、お邪魔(じやま)さまで御座(ござ)いましたとて、風呂塲(ふろば)に加减(かげん)見(み)る母親(はゝおや)には挨拶(あいさつ)もせず、ふいと立(た)つて正太(しようた)は庭先(にはさき)よりかけ出(いだ)しぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
庭先(にはさき)の栗(くり)の木(き)の枯葉(かれは)からも、枝(えだ)へ掛(か)けた大根(だいこ)の葉(は)からも霜(しも)が解(と)けて雫(しづく)がまだぽたり/\と垂(た)れて居(ゐ)る。庭(には)へ敷(し)いてある庭葢(にはぶた)の藁(わら)も只(たゞ)ぐつしりと濕(しめ)つて居(ゐ)る。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
椅子(いす)を下(お)りるとき、身體(からだ)が眞直(まつす)ぐになつたので、視線(しせん)の位置(ゐち)が天井(てんじやう)から不圖(ふと)庭先(にはさき)に移(うつ)つたら、其所(そこ)にあつた高(たか)さ五尺(しやく)もあらうと云(い)ふ大(おほ)きな鉢栽(はちうゑ)の松(まつ)が宗助(そうすけ)の眼(め)に這入(はい)つた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おゝ夫(それ)よりは彼(か)の人(ひと)の事(こと)彼(あ)の人(ひと)の事(こと)、藤本(ふぢもと)のならば宜(よ)き智惠(ちゑ)も貸(か)してくれんと、十八日(にち)の暮(くれ)れちかく、物(もの)いへば眼口(めくち)にうるさき蚊(か)を拂(はら)ひて竹村(たけむら)しげき龍華寺(りうげじ)の庭先(にはさき)から信如(しんによ)が部屋(へや)へのそりのそりと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)