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尉
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じょう
ふりがな文庫
“
尉
(
じょう
)” の例文
それにつれて、
大床
(
おおゆか
)
の中ほどへすすみ出た観世清次は白の小袖に白地に
銀摺
(
ぎんずり
)
の
大口袴
(
おおぐち
)
を
穿
(
は
)
き太刀を横たえ、
尉
(
じょう
)
の
仮面
(
おもて
)
をつけていた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わたしはかつて
弋陽
(
よくよう
)
の
尉
(
じょう
)
を勤めていたことがあります。その土地には猿が多いので、わたしの家にも一匹を飼っていました。
中国怪奇小説集:06 宣室志(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だからその肉づけの感じは急死した人の顔面にきわめてよく似ている。特に
尉
(
じょう
)
や
姥
(
うば
)
の面は強く死相を思わせるものである。
面とペルソナ
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
すなわち家々には栄誉の極点、昔の語で言えば前途というものがあって、通例
尉
(
じょう
)
という武官に任ぜられる事であります。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一人は男、一人は女、男は若々しい武士姿、女も若々しい女房姿、しかし二人ながら首から上は白髪と皺とに埋められた、醜い
尉
(
じょう
)
と
姥
(
うば
)
とであった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
貧乏は、桓武天皇以来であるが、祖先は、植村与一兵衛宗春
尉
(
じょう
)
、という人からしか判っていない。
死までを語る
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
頭が
尉
(
じょう
)
のような白髪のお爺さんが、私の絵の好きなことを知って、度々極彩色の桜の絵を見せてくれました。この老人は、桜戸玉緒といって桜花の研究者だったのです。
画筆に生きる五十年:――皇太后陛下御下命画に二十一年間の精進をこめて上納――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
老人は、それこそ、橋がかりへ出て来た高砂の
尉
(
じょう
)
のようなおっとりしたしかたで小腰をかがめて
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
信長清須の主家織田氏を
凌
(
しの
)
ぐ勢であったので、城主織田彦五郎は、
斯波
(
しば
)
義元を奉じて、同族松葉城主織田伊賀守、深田城主織田左衛門
尉
(
じょう
)
等と通じて一挙に信長を滅そうとした。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ふとそのあたりにいやしい身なりをした一人の
尉
(
じょう
)
が田を打っていますのを見て、これに聞いたら以前のことを知っているだろう、尋ねてみようと思いまして、もし、
尉
(
じょう
)
どのよ
三人法師
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
の身をかえてける、
寝着
(
ねまき
)
の
衣紋
(
えもん
)
緩やかに、水色縮緬の
扱帯
(
しごきおび
)
、座蒲団に褄浅う、火鉢は手許に引寄せたが、寝際に炭も
注
(
つ
)
がなければ、
尉
(
じょう
)
になって寒そうな、銀の
湯沸
(
ゆわかし
)
の五徳を外れて
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その声は
尉
(
じょう
)
と
姥
(
うば
)
との声でもなく、寿老神が呼びかけたのでもない、あまりにあたりまえ過ぎる人間の声でありましたから、不意であったとはいえ、白雲を驚かすには足りないで、かえって
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
箪笥
(
たんす
)
をゆずってくれと言われ箪笥の奥から姉が嫁してきた時の『部屋見舞』(関西では色や形とりどりの大きい饅頭を作る)松竹梅や高砂の
尉
(
じょう
)
と
姥
(
うば
)
、日の出、鶴亀、鯛等で今でも
布袋
(
ほてい
)
が白餡で
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
大将の臨時の随身を、殿上にも勤める
近衛
(
このえ
)
の
尉
(
じょう
)
がするようなことは例の少ないことで、何かの晴れの行幸などばかりに許されることであったが、今日は
蔵人
(
くろうど
)
を兼ねた
右近衛
(
うこんえ
)
の尉が源氏に従っていた。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ここにも、庁の長官たる「別当」の下に、次官として「
佐
(
すけ
)
」がおかれ、その下に「左衛門」「右衛門」「
尉
(
じょう
)
」の三階級がある。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
焚火の光にぼんやり照らされ、闇に浮き出た二人の顔は、源之丞でもなければ園女でもなく、百歳を過ごした
尉
(
じょう
)
と
姥
(
うば
)
の、醜い恐ろしい
相好
(
そうごう
)
であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
宋の紹興の初年、
甫田
(
ほでん
)
の
林迪功
(
りんちゅうこう
)
という人は江西の
尉
(
じょう
)
を勤めていたが、盗賊を捉えた功によって、満期の後は更に都の官吏にのぼせられることになっていた。
中国怪奇小説集:10 夷堅志(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
極込細工
(
きめこみざいく
)
の
尉
(
じょう
)
と
姥
(
うば
)
や、
西京
(
さいきょう
)
の
芥子
(
けし
)
人形、伏見人形、
伊豆蔵
(
いずくら
)
人形などを二人のまわりへ綺麗に列べ、さま/″\の男女の姿をした首人形を二畳程の畳の目へ数知れず挿し込んで見せた。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
藍
(
あい
)
浅く、
颯
(
さっ
)
と青に洗上げたのを、ころころと三つばかり、お町が取って、七輪へ載せ、
尉
(
じょう
)
を払い、火箸であしらい、
媚
(
なまめ
)
かしい
端折
(
はしょり
)
のまま、
懐紙
(
ふところがみ
)
で
煽
(
あお
)
ぐのに、
手巾
(
ハンケチ
)
で軽く髪の
艶
(
つや
)
を
庇
(
かば
)
ったので
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
久政も此程遠藤が申すことを一度も用ひずして
宜敷事
(
よろしきこと
)
無りしかば、此度
許
(
ばか
)
りは喜右衛門
尉
(
じょう
)
が申す旨に同心ありて、然らば朝倉殿には織田と遠州勢と二手の内
何方
(
いずかた
)
へ向はせ給ふべきかと申せしにより
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ないしは竹中半兵衛の
尉
(
じょう
)
といったところでござんしょう
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところが、これが
歴乎
(
れっき
)
たる武家の子飼いだった。小俣右衛門ノ
尉
(
じょう
)
の家来で、御所の門衛と
狎
(
な
)
れ合いでの
仕業
(
しわざ
)
とわかり、即日、首をはねられた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが県署にもきこえたので、県の
尉
(
じょう
)
が早馬で駈け付けると右の始末である。何分にも夜中といい相手は多勢であるので、尉はまずいい加減にかれらをなだめた。
中国怪奇小説集:10 夷堅志(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
淀
(
よど
)
の遊君亀千代の
繊手
(
せんしゅ
)
を、爪のもとまで毛の生えている、熊のような手でグッと握り、奥へしょびいて行こうとするのを、同じ路からやって来たところの、
狩野
(
かの
)
彦七郎左衛門ノ
尉
(
じょう
)
が
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
炭は黒いが、今しがた継いだばかりで、
尉
(
じょう
)
にもならず、火気の立ちぎわ。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
高
(
こう
)
ノ武蔵守師直、吉良
左兵衛
(
さひょうえ
)
ノ
尉
(
じょう
)
、桃井
修理亮
(
しゅりのすけ
)
、
大高
(
たいこう
)
伊予守、上杉伊豆、岩松の禅師
頼有
(
らいう
)
、土岐弾正、おなじく
道謙
(
どうけん
)
、佐竹
義敦
(
よしあつ
)
、ほか三浦、石堂、仁木
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
高砂の
尉
(
じょう
)
の仮装をした、老人らしい人物を中にはさみ、その左には猩々に扮し、赤毛を背に垂れた人物が行き、その右には
阿蘭陀
(
オランダ
)
風の、胴服を纒った人物が行き、その後から仕丁姿の
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「成程、
尉
(
じょう
)
殿だね。」と祝儀する。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
を、彼らは、いくさ奉行長崎
四郎左衛門
(
しろうざえもん
)
ノ
尉
(
じょう
)
を中心に、その日、悲壮なまでに、こらしあったに相違なかろう。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今はほとんど
珊瑚
(
さんご
)
の楼といおうか、火になっている阿蘭陀風の屋敷の、すぐの近くに煙りに巻かれ、派手やかな女を横抱きにした、
尉
(
じょう
)
姿の男が起きつ倒れつ、走りもならず喘いでいるのが見えた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いくさ奉行の長崎悪四郎ノ
尉
(
じょう
)
高真
(
たかざね
)
は、おもてに
朱
(
しゅ
)
をそそいで、どこかの
使番
(
つかいばん
)
の武士へ、どなりつけていた。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
早朝から正成は
身浄
(
みぎよ
)
めして自室にこもっていたが、やがて
五位
(
ごい
)
ノ
尉
(
じょう
)
の衣冠をただし、供にも南江正忠、矢尾ノ常正など、いつにない列伍をただして出て行った。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はアて? ……。千早、金剛では、あの小勢で数万の
寄手
(
よせて
)
をさえ、寄せつけなかった楠木
兵衛
(
ひょうえ
)
ノ
尉
(
じょう
)
が、今日はなんとしたことか。……いつもの正成ともおもわれぬ」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おっ。……それでは、やはり後宇多法皇の院御所に、
北面
(
ほくめん
)
(院ノ武者)としておいで遊ばした
左兵衛
(
さひょうえ
)
ノ
尉
(
じょう
)
兼好
(
かねよし
)
さまでございましたか。……まあ、なんたるお変りよう」
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
六衛府の長官は、中納言で、
衛門督
(
えもんのかみ
)
であり、その下に、金吾、大夫、
尉
(
じょう
)
、
帯刀
(
たちはき
)
などの諸官がいる。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そうでない。戦場に立つ覚悟は覚悟、新嫁を迎えた祝事は祝事。友
白髪
(
しらが
)
までも、
尉
(
じょう
)
と
姥
(
うば
)
のようにまで、
長寿
(
ながいき
)
もしようと心がけるのが、かえって
真
(
まこと
)
の武士というものぞ」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてまた、中原親秀や左衛門ノ
尉
(
じょう
)
資直らが技師となって、その広大な地域さだめの縄取りとなった当日には、尊氏は、みずから臨んで、設計に立ち会い、夢窓国師の原案を練った。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
仙洞
(
せんとう
)
の
御気色
(
みけしき
)
に
諂
(
へつら
)
い、武功に誇り、頼朝にも計らわず、五位の
尉
(
じょう
)
に昇るなど、身のほどを忘れた振舞、肉親とて、捨ておいては、覇業の
障
(
さわ
)
りになる。今のうちに、九郎冠者めを討って取れ」
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
阿蘇
(
あそ
)
ノ大宮司
惟時
(
これとき
)
、出雲の
宇佐
(
うさ
)
兵衛ノ
尉
(
じょう
)
助景の手の者が、まっさきに来て、ご警固に付き、新田の
諸侍
(
しょざむらい
)
、千葉、宇都宮、そのほか戦線から脱落していた軍兵なども、北白川から志賀越えへかけては
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いまにして思えば、楠木左衛門ノ
尉
(
じょう
)
正成にも恥じられまする。で今日、
龍駕
(
りゅうが
)
をお送り申しあげたうえは、なおここにふみとどまり、義貞一族も世に恥じぬ思うざまな最期をとげたいものとぞんじます。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「鎌倉どのの侍大将、
長崎四郎左衛門
(
ながさきしろうざえもん
)
ノ
尉
(
じょう
)
の
麾下
(
きか
)
の者だが」
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこへたった今、探題の郎党
小串
(
おぐし
)
兵衛
(
ひょうえ
)
ノ
尉
(
じょう
)
が来て
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甘利
(
あまり
)
左衛門
尉
(
じょう
)
——小山田備中——馬場
信春
(
のぶはる
)
——
小畑
(
おばた
)
山城守——真田弾正一徳斎——小笠原若狭守——
諸角豊後守
(
もろずみぶんごのかみ
)
——一条信秀——相木市兵衛——
蘆田下野守
(
あしだしもつけのかみ
)
——などそれぞれの陣旗がへんぽんと風に鳴りはためいて
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おう、
兵衛
(
ひょうえ
)
ノ
尉
(
じょう
)
か」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、
兵衛
(
ひょうえ
)
ノ
尉
(
じょう
)
」
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“尉”の意味
《名詞》
(じょう)律令制において衛門府など軍事組織における四等官中第三位の官位。
(出典:Wiktionary)
尉
常用漢字
中学
部首:⼨
11画
“尉”を含む語句
大尉
少尉
丹左衛門尉基康
左衛門尉
酒井左衞門尉
校尉
中尉
右兵衛尉
遠山左衛門尉
騎都尉
都尉
兵衛尉
廷尉
黒尉
右衛門尉
邵大尉
県尉
悪尉
長水校尉
司隷校尉
...