じょう)” の例文
それにつれて、大床おおゆかの中ほどへすすみ出た観世清次は白の小袖に白地に銀摺ぎんずり大口袴おおぐち穿き太刀を横たえ、じょう仮面おもてをつけていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしはかつて弋陽よくようじょうを勤めていたことがあります。その土地には猿が多いので、わたしの家にも一匹を飼っていました。
だからその肉づけの感じは急死した人の顔面にきわめてよく似ている。特にじょううばの面は強く死相を思わせるものである。
面とペルソナ (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
すなわち家々には栄誉の極点、昔の語で言えば前途というものがあって、通例じょうという武官に任ぜられる事であります。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一人は男、一人は女、男は若々しい武士姿、女も若々しい女房姿、しかし二人ながら首から上は白髪と皺とに埋められた、醜いじょううばとであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貧乏は、桓武天皇以来であるが、祖先は、植村与一兵衛宗春じょう、という人からしか判っていない。
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)
頭がじょうのような白髪のお爺さんが、私の絵の好きなことを知って、度々極彩色の桜の絵を見せてくれました。この老人は、桜戸玉緒といって桜花の研究者だったのです。
老人は、それこそ、橋がかりへ出て来た高砂のじょうのようなおっとりしたしかたで小腰をかがめて
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
信長清須の主家織田氏をしのぐ勢であったので、城主織田彦五郎は、斯波しば義元を奉じて、同族松葉城主織田伊賀守、深田城主織田左衛門じょう等と通じて一挙に信長を滅そうとした。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ふとそのあたりにいやしい身なりをした一人のじょうが田を打っていますのを見て、これに聞いたら以前のことを知っているだろう、尋ねてみようと思いまして、もし、じょうどのよ
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
空蝉うつせみの身をかえてける、寝着ねまき衣紋えもん緩やかに、水色縮緬の扱帯しごきおび、座蒲団に褄浅う、火鉢は手許に引寄せたが、寝際に炭もがなければ、じょうになって寒そうな、銀の湯沸ゆわかしの五徳を外れて
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その声はじょううばとの声でもなく、寿老神が呼びかけたのでもない、あまりにあたりまえ過ぎる人間の声でありましたから、不意であったとはいえ、白雲を驚かすには足りないで、かえって
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
箪笥たんすをゆずってくれと言われ箪笥の奥から姉が嫁してきた時の『部屋見舞』(関西では色や形とりどりの大きい饅頭を作る)松竹梅や高砂のじょううば、日の出、鶴亀、鯛等で今でも布袋ほていが白餡で
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
大将の臨時の随身を、殿上にも勤める近衛このえじょうがするようなことは例の少ないことで、何かの晴れの行幸などばかりに許されることであったが、今日は蔵人くろうどを兼ねた右近衛うこんえの尉が源氏に従っていた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ここにも、庁の長官たる「別当」の下に、次官として「すけ」がおかれ、その下に「左衛門」「右衛門」「じょう」の三階級がある。
焚火の光にぼんやり照らされ、闇に浮き出た二人の顔は、源之丞でもなければ園女でもなく、百歳を過ごしたじょううばの、醜い恐ろしい相好そうごうであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
宋の紹興の初年、甫田ほでん林迪功りんちゅうこうという人は江西のじょうを勤めていたが、盗賊を捉えた功によって、満期の後は更に都の官吏にのぼせられることになっていた。
極込細工きめこみざいくじょううばや、西京さいきょう芥子けし人形、伏見人形、伊豆蔵いずくら人形などを二人のまわりへ綺麗に列べ、さま/″\の男女の姿をした首人形を二畳程の畳の目へ数知れず挿し込んで見せた。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あい浅く、さっと青に洗上げたのを、ころころと三つばかり、お町が取って、七輪へ載せ、じょうを払い、火箸であしらい、なまめかしい端折はしょりのまま、懐紙ふところがみあおぐのに、手巾ハンケチで軽く髪のつやかばったので
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
久政も此程遠藤が申すことを一度も用ひずして宜敷事よろしきこと無りしかば、此度ばかりは喜右衛門じょうが申す旨に同心ありて、然らば朝倉殿には織田と遠州勢と二手の内何方いずかたへ向はせ給ふべきかと申せしにより
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ないしは竹中半兵衛のじょうといったところでござんしょう
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところが、これが歴乎れっきたる武家の子飼いだった。小俣右衛門ノじょうの家来で、御所の門衛とれ合いでの仕業しわざとわかり、即日、首をはねられた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが県署にもきこえたので、県のじょうが早馬で駈け付けると右の始末である。何分にも夜中といい相手は多勢であるので、尉はまずいい加減にかれらをなだめた。
よどの遊君亀千代の繊手せんしゅを、爪のもとまで毛の生えている、熊のような手でグッと握り、奥へしょびいて行こうとするのを、同じ路からやって来たところの、狩野かの彦七郎左衛門ノじょう
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
炭は黒いが、今しがた継いだばかりで、じょうにもならず、火気の立ちぎわ。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こうノ武蔵守師直、吉良左兵衛さひょうえじょう、桃井修理亮しゅりのすけ大高たいこう伊予守、上杉伊豆、岩松の禅師頼有らいう、土岐弾正、おなじく道謙どうけん、佐竹義敦よしあつ、ほか三浦、石堂、仁木
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高砂のじょうの仮装をした、老人らしい人物を中にはさみ、その左には猩々に扮し、赤毛を背に垂れた人物が行き、その右には阿蘭陀オランダ風の、胴服を纒った人物が行き、その後から仕丁姿の
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「成程、じょう殿だね。」と祝儀する。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
を、彼らは、いくさ奉行長崎四郎左衛門しろうざえもんじょうを中心に、その日、悲壮なまでに、こらしあったに相違なかろう。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今はほとんど珊瑚さんごの楼といおうか、火になっている阿蘭陀風の屋敷の、すぐの近くに煙りに巻かれ、派手やかな女を横抱きにした、じょう姿の男が起きつ倒れつ、走りもならず喘いでいるのが見えた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いくさ奉行の長崎悪四郎ノじょう高真たかざねは、おもてにしゅをそそいで、どこかの使番つかいばんの武士へ、どなりつけていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早朝から正成は身浄みぎよめして自室にこもっていたが、やがて五位ごいじょうの衣冠をただし、供にも南江正忠、矢尾ノ常正など、いつにない列伍をただして出て行った。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はアて? ……。千早、金剛では、あの小勢で数万の寄手よせてをさえ、寄せつけなかった楠木兵衛ひょうえじょうが、今日はなんとしたことか。……いつもの正成ともおもわれぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おっ。……それでは、やはり後宇多法皇の院御所に、北面ほくめん(院ノ武者)としておいで遊ばした左兵衛さひょうえじょう兼好かねよしさまでございましたか。……まあ、なんたるお変りよう」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六衛府の長官は、中納言で、衛門督えもんのかみであり、その下に、金吾、大夫、じょう帯刀たちはきなどの諸官がいる。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうでない。戦場に立つ覚悟は覚悟、新嫁を迎えた祝事は祝事。友白髪しらがまでも、じょううばのようにまで、長寿ながいきもしようと心がけるのが、かえってまことの武士というものぞ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてまた、中原親秀や左衛門ノじょう資直らが技師となって、その広大な地域さだめの縄取りとなった当日には、尊氏は、みずから臨んで、設計に立ち会い、夢窓国師の原案を練った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仙洞せんとう御気色みけしきへつらい、武功に誇り、頼朝にも計らわず、五位のじょうに昇るなど、身のほどを忘れた振舞、肉親とて、捨ておいては、覇業のさわりになる。今のうちに、九郎冠者めを討って取れ」
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿蘇あそノ大宮司惟時これとき、出雲の宇佐うさ兵衛ノじょう助景の手の者が、まっさきに来て、ご警固に付き、新田の諸侍しょざむらい、千葉、宇都宮、そのほか戦線から脱落していた軍兵なども、北白川から志賀越えへかけては
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまにして思えば、楠木左衛門ノじょう正成にも恥じられまする。で今日、龍駕りゅうがをお送り申しあげたうえは、なおここにふみとどまり、義貞一族も世に恥じぬ思うざまな最期をとげたいものとぞんじます。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「鎌倉どのの侍大将、長崎四郎左衛門ながさきしろうざえもんじょう麾下きかの者だが」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへたった今、探題の郎党小串おぐし兵衛ひょうえじょうが来て
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甘利あまり左衛門じょう——小山田備中——馬場信春のぶはる——小畑おばた山城守——真田弾正一徳斎——小笠原若狭守——諸角豊後守もろずみぶんごのかみ——一条信秀——相木市兵衛——蘆田下野守あしだしもつけのかみ——などそれぞれの陣旗がへんぽんと風に鳴りはためいて
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう、兵衛ひょうえじょうか」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、兵衛ひょうえじょう
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)