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大巌
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おほいは
三
方は、
大巌夥しく
累つて、
陰惨冥々たる
樹立の
茂は、
根を
露呈に、
石の
天井を
蜿り
装ふ——こゝの
椅子は、
横倒れの
朽木であつた。
はや、
幻影は
消えつゝ、
園は
目の
前に、一
坐、
藤つゝじを
鏤めた、
大巌の
根に、
藍の
如き
水に
臨むで、
足は、めぐらした
柵を
越えたのを
見出した。
呆れ
果てゝ
眺めて
居ると、やがて
浅い
処で
腰の
辺、
深い
処は
乳の
上になる。
最も
激流矢を
流す。
川の七
分目へ
来た
処に、
大巌が一つ
水を
堰いて
龍虎を
躍らす。
背後へ
畝つて
切出したやうな
大巌が二ツ三ツ四ツと
並んで、
上の
方へ
層なつて
其の
背後へ
通じて
居るが、
私が
見当をつけて、
心組んだのは
此方ではないので
「あつぱれ、
其の
方、
水にせかるゝ
大巌を
流に
逆らひ
押転ばす、
凡そ
如何ばかりの
力があるな。」
真中に
先づ
鰐鮫が
口をあいたやうな
尖のとがつた
黒い
大巌が
突出て
居ると、
上から
流れて
来る
颯と
瀬の
早い
谷川が、
之に
当つて
両に
岐れて、
凡そ四
丈ばかりの
瀧になつて
哄と
落ちて
……
坊主の
法衣は、
大巌の
色の
乱れた
双六の
盤を
蔽ふて、
四辺は
墨よりも
蔭が
黒い。
それから
跣足になつて、
抱へられるやうにして
下つて、また、
老樹の
根、
大巌の
挟間を
左に五
段、
白樺の
巨木の
下に
南祖坊の
堂があつた。
右に三
段、
白樺の
巨木の
下に、一
龍神の
祠があつた。