堅氣かたぎ)” の例文
新字:堅気
すると染吉は、近頃いろ/\考へた末、危い商賣とフツツリ縁を切つて、本當に堅氣かたぎになるつもりだから安心してくれと申します。
笑ひながら店先へ腰を掛けたのは四十二三の痩せぎすの男で、縞の着物に縞の羽織を着て、だれの眼にも生地きぢ堅氣かたぎとみえる町人風であつた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
したりしと空頼そらだのみに心をなぐさめ終に娘お文が孝心を立る事に兩親ふたおやとも得心なせばお文はよろこび一まづ安堵あんどはしたものゝ元より堅氣かたぎぺんの十兵衞なれば子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こゝまたきいちやんととなへて、もと、其處そこうち内藝妓うちげいしやをしてたのがある。いま堅氣かたぎで、手傳てつだひにる。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頭腦あたまなか此樣こんことにこしらへて一けんごとの格子かうし烟草たばこ無理むりどり鼻紙はながみ無心むしんちつたれつれを一ほまれ心得こゝろゑれば、堅氣かたぎいゑ相續息子そうぞくむすこ地廻ぢまわりと改名かいめいして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
堅氣かたぎの町人の家へ、店暖簾みせのれんをくゞつて入るのは、とむらひのゴタゴタの時だけに、岡つ引には岡つ引の遠慮があつたのです。
知たる三五郎のことゆゑいやともいはれず早速さつそく五十兩の金子を取出して返濟へんさいには及ばずと渡し先々まづ/\ゆるりと滯留たうりう致されよ我等も此家の入夫に這入はひりしより以來このかた堅氣かたぎなりしが其前幸手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
衣服きものおびめて、やがてしり端折はしをらうところ、ふとはしうへると、堅氣かたぎおほいが、賣女屋ばいぢよやのあるちひさな宿やどなんとなく自墮落じだらくふうまるとえて、宿中しゆくぢういづれも朝寢あさねらしい。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まだゑんづかぬいもとどもが不憫ふびんあね良人おつとかほにもかゝる、此山村このやまむら代〻だい/\堅氣かたぎぱう正直しようじき律義りちぎ眞向まつかうにして、風説うわさてられたことはづを、天魔てんまうまれがはりか貴樣きさまといふ惡者わる出來でき
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
八五郎は呆氣あつけに取られました。堅氣かたぎの家の下女にしては、年齡にも柄にも似ぬ媚態コケテイツシユなところがあります。
わたしんならきことありともかならず辛抱しんぼうしとげて一人前にんまへをとこになり、とゝさんをもおまへをもいまらくをばおまをします、うぞれまでなんなりと堅氣かたぎことをして一人ひとり世渡よわたりをしてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
殺したるはまこと大罪だいざいなり因て始終は其身かたなくずに懸らん貴殿おまへ堅氣かたぎ商人あきうどなられし上は此後必ず惡事を給ふことなかれと云ながら金を受取歸りしが是を無心の始めとして其後度々來りては無心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
堅氣かたぎの商人に育てさせ、蔭乍かげながらその生長を見張つて居りましたが、父彌十郎が十年前に刑死して、姉のお幾も若過ぎて妹を救ふ手が及ばず、お袖は見す/\藝子に賣られましたが
「文左衞門といふ百姓で、私の元の亭主に似ず堅氣かたぎな男で御座います」